12月6日発売の「ナイトランド・クォータリー」Vol.19、特集は「架空幻想都市」

 12月6日発売の「ナイトランド・クォータリー」Vol.19、特集は「架空幻想都市」です。M・ジョン・ハリスン「ヴィリコニウムの騎士」、ロード・ダンセイニカルカッソンヌ」、リン・カーターの〈シムラナ・サイクル〉の初紹介、ブラム・ストーカー賞候補作家カイラ・リー・ウォード他、翻訳は8編!
 翻訳はその他、ウィリアム・フォークナーカルカッソンヌ」、フランク・オーウェン(約30年ぶり紹介)、マーク・サミュエルズ(初紹介)、ウィリアム・ミークルのロック小説。
 日本人作家は、朝松健、図子慧、石神茉莉の書き下ろし。
 梵寿鋼、垂野創一郎のロングインタビュー、各種ガイドや批評も充実!
批評については、磯達雄、深泰勉、私。連載コラムは、安田均友成純一。松島梨恵の展覧会レポートもあります。
 翻訳家は、和爾桃子、大和田始、渡辺健一郎、待兼音二郎、徳岡正肇、それに私が参加しています。
(以上、敬称略)

 補足すると、〈シムラナ・サイクル〉というのはリン・カーターがダンセイニへリスペクトを捧げて書いた架空神話体系。フォークナーの「カルカッソンヌ」はヨクナパトーファ・サーガとは別系列の幻想譚、いずれも傑作。
 図子慧の新作は、もう一つ別の小説「ルート12」が、今週末の文学フリマに出る『妖ファンタスティカ2』にも載ります。

 ご存知ない方もいらっしゃるようですが、例えば私は編集長、岩田恵さんはプロダクトマネージャー、松島梨恵さんは編集、待兼音二郎さんは翻訳チェック……などなど(まだスタッフはおりますが)という体制でこの雑誌を製作しております。
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Night Land Quarterly vol.19

A5判・並製・160頁・税別1700円
ISBN 978-4-88375-383-3
発行=アトリエサード/発売=書苑新社(しょえんしんしゃ)
http://athird.cart.fc2.com/ca8/282/p-r8-s/

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4883753832/

幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌《ナイトランド・クォータリー》。

vol.19の特集は、「架空幻想都市」。
失われた栄光、あるいは、ありえたかもしれない世界……
「架空幻想都市」をキーワードに、都市を夢見る物語などに思索をめぐらします。

今号も、小説やインタビュー、レビュー、エッセイなど満載。

パステル都市』のM・ジョン・ハリスン、ロード・ダンセイニ、リン・カーターなど翻訳8編、日本作家は朝松健、図子慧、石神茉莉

この他、梵寿綱インタビュー、垂野創一郎インタビューなど、読み応えたっぷりです。

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■主な内容
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ロード・ダンセイニカルカッソンヌ」/訳:和爾桃子
ウィリアム・フォークナーカルカッソンヌ」/訳:岡和田晃
■M・ジョン・ハリスン「ヴィリコニウムの騎士」/訳:大和田始
■フランク・オーウェン「青碧の都」/訳:渡辺健一郎
■リン・カーター「いかにしてアドラズーンの都は審判の日を迎えたのか」/訳:岡和田晃
■マーク・サミュエルズ「暗夜庭苑」/訳:徳岡正肇
■ウィリアム・ミークル「罅穴と夜想曲」/訳:待兼音二郎
■カイラ・リー・ウォード「そして彼女の眼の中で、都市は水没し」/訳:大和田始
■朝松健「〈一休どくろ譚〉月都」
■図子慧「残像の女」
石神茉莉「I am Lost」

【Interview】/聞き手=岡和田晃 構成=松島梨恵
■梵寿綱インタビュー「都市なき国で思索するために」
垂野創一郎インタビュー「ゾッキ本と研究者旧蔵書から、新たな翻訳とアンソロジーを生み出す」

【Exhibition】
■建築から身体まで、私たちが選んでゆく未来の可能性──森美術館・未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか/松島梨恵

【Essay】
■架空幻想都市への扉/いわためぐみ
■建築家による都市のビジョン/磯達雄
ジャカルタ都心部を走り抜ける幽霊列車/友成純一

【Movie】
■幻想の都市を歩き、地下都市の幻想を巡る/深泰勉

【Game】
カルカソンヌ ――初心者からプロまで、中世から宇宙まで/徳岡正肇

【Serial】
■〈アンソロジーに花束を〉第二回 革命的なオリジナル/安田均

【Extra note】
■化石の時間、異界の論理――石神茉莉の小説世界/深泰勉

【Book guide】/岡和田晃
垂野創一郎が訳した幻想都市を逍遙する
■架空幻想都市への案内状

■表紙(写真提供)/梵寿綱

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ナイトランド・クォータリーvol.19 架空幻想都市

ナイトランド・クォータリーvol.19 架空幻想都市

 

 

妖(あやかし)ファンタスティカ2〜書下し伝奇ルネサンス・アンソロジー (ナイトランド・クォータリー (別冊))

妖(あやかし)ファンタスティカ2〜書下し伝奇ルネサンス・アンソロジー (ナイトランド・クォータリー (別冊))

 

 

「図書新聞」2019年11月30日号に、J・G・バラード『太陽の帝国』(山田和子訳、創元SF文庫)の書評を寄稿

 発売されたばかりの「図書新聞」2019年11月30日号に、J・G・バラード太陽の帝国』(山田和子訳、創元SF文庫)の書評「あらゆるオブセッションに輪郭を与えた一九四一年の上海 バラードの出世作をまったくの新作のように読ませる驚異の新訳」を寄稿いたしました。商業でのバラード論は久しぶりです。

 

 隣は内藤千珠子さんの馳平啓樹『かがやき』評でした。ジェンダー理論を駆使した実にあざやかな論述で、感服することしきり。‬
 ‪本日からコンビニのマルチコピー機でダウンロード購入できます。

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「はじめての海外文学」第5回にヘレン・マクロイ『牧神の影(渕上痩平訳、ちくま文庫)を推薦

 翻訳者が読者に向けてオススメ本を紹介する、毎年恒例の「はじめての海外文学」。  第5回は、ヘレン・マクロイ『牧神の影(渕上痩平訳、ちくま文庫)を推薦しました。フェアをやっている書店で、私の推薦コメントが見られます。

牧神の影 (ちくま文庫)

牧神の影 (ちくま文庫)

 

『掠れた曙光』が双子のライオン堂でも買えるようになりました。

 東京・赤坂にある双子のライオン堂書店においても、『掠れた曙光』が購入可能になりました。双子のライオン堂の通販でも買うことができます。

岡和田晃第一詩集『掠れた曙光』増刷版がAmazon&全国書店で予約開始

 岡和田晃の第一詩集『掠れた曙光』(幻視社)の増刷版、Amazonに情報が出ました。2019年11月22日発売、定価は1000円+税です。

ISBN-10: 4883753778

ISBN-13: 978-4883753772

 で、全国の書店からの注文(客注)も可能です。流通は書苑新社となります。

 幻視社別冊という扱いになりますが、内容は、誤字脱字を修正したほかは初版と同じです。

掠れた曙光

掠れた曙光

 

内容紹介
 解きほぐし難い冷たさ、麻痺したばかりの重り……文芸評論家・岡和田晃の第一詩集。
 19世紀ロマン主義文学に随伴する長短の形而上詩、イマジズムとしてのSF(スペキュレイティヴ・フィクション)詩、現代詩や前衛短歌・俳句への応答、北園克衛の詩誌「VOU」へのオマージュ、アイヌ民族否定論へのカウンターデモの現場を「報道」するプロレタリア詩など、長短13編の詩を収める。
 

 もとは東條慎生氏のプライヴェート・レーベル幻視社より限定80部のみ刊行されたが、2019年度の茨城文学賞詩部門を受賞したほか多方面から好評を得たため、誤字脱字を修正したうえ、書苑新社から再発売されることとなった。

 

「さまざまな語り口で現代詩の新分野を切り開いた」
――茨城文学賞審査評(「茨城新聞」2019年10月27日)

「われわれは19世紀の貴族ブルジョワではないから、この貧しく無残な現状から遊離して夢見ることはできないしそうすることは欺瞞である。だがわれわれの意識は何かの形而上への憧れを捨てることはできない。この詩集はそこを誠実に示している。今、憧れることとは怒ることでもあるのだ」
――高原英理氏(書評、2019年8月31日)

「狼煙であり、的確な連射の弾(バレット)であり、定型に抗い言葉を砕く疾走であり、Zack de la Rochaの革命であり、イェイツの黄金の暁を背に、北限の、極の一角獣のごとく戦ってくれている。」
――柴田望氏(書評、2019年8月29日)

「引喩の名手ともいうべき若い岡和田晃の批評性フル回転の詩集も見逃せまい。なかでも、ただ今のジャパンの首都における恐るべき憎悪言説情況に全力で突っ込む自称「プロレタリア詩」の肉声は、今後の展望となる根源だ! 」
――工藤正廣氏(「北海道新聞」2019年10月30日)

 

Amazonの売れ筋ランキング、「現代詩集」で3位です。

 

 北海道の読者の方から、『掠れた曙光』の茨城文学賞受賞につき、サプライズでお花をいただきました。驚きましたが光栄です!

「図書新聞」2019年11月16日号に、「〈世界内戦〉下の文芸時評 第五七回 主体性なきショーアップという惰性へ抗うためのシミュレーション」が掲載

 発売中の「図書新聞」2019年11月16日号に、「〈世界内戦〉下の文芸時評 第五七回 主体性なきショーアップという惰性へ抗うためのシミュレーション」が掲載されています。
 今号は、台風19号の被災地の「棄民」を実質的な「生け贄」として遂行された「即位礼正殿の儀」を批判しつつ、以下の作品を取り上げています。

・田中里尚『リクルートスーツの社会史』(青土社
宮内勝典『南風』(新装版、石風社
宗近真一郎柄谷行人 〈世界同時革命〉のエチカ』(論創社
岸田将幸『詩の地面 詩の空』(五柳書院)
・木村友祐「幼な子の聖戦」(「すばる」)
・高原到「テロリストが、生まれる――「セヴンティーン」「政治少年死す」」試論(「群像」)
・中西智佐乃「尾を喰う蛇」(新潮新人賞受賞作)

第40回日本SF大賞推薦文

 岡和田晃日本SF作家クラブ会員として、次の5作品を第40回日本SF大賞にエントリーしました。以下推薦文となります。こちらにも内容を記しておきます。

 


図子慧『愛は、こぼれるqの音色』

 図子慧の『アンドロギュヌスの皮膚』以来6年ぶりの単著である。ポスト・サイバーパンクSFと本格ミステリの論理をそれぞれ融合させ、性愛と音楽という、文章では直接的に表現しづらい題材をきわめて技巧的に伝えている。惹句を踏襲するわけではないが、とかくSF界は図子慧へ的確な評価を与えることができずにいたのは間違いないだろう。例えばSF大賞で評価軸として求められる「新しさ」を、一見したところの新規性と短絡的に解釈することで――本作が体現するような――綾なされる襞の部分を取り逃してきたのではないか。過去の受賞作に比して、水準的にも何ら見劣りしないものと確信する。

 

仁木稔「ガーヤト・アルハキーム」

 仁木稔、『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』以来5年ぶりの新作小説となる。本来であれば、『ミカイールの階梯』で日本SF大賞どころか世界幻想文学大賞をとっていても決して驚かない。本作は著者の未来史〈HISTORIA〉シリーズとは独立した短編であるが、長編並みの密度がある。イスラーム神秘主義をめぐる錬金術ファンタジーという体裁をとっている。だからといって、史実に従属するわけでも、歴史修正主義とも異なる。むしろ史実の捉え方、パラダイムそのものを刷新しようという野心があるのだ。仁木稔のブログで記された作家自註を参照すれば、私が何ら「話を盛って」いないとわかるだろう。

 

松本寛大「ケルトの馬」
 リバイバル・ブームが続く『クトゥルフ神話TRPG』の日本語版スタッフとして知られる著者の久方の新作小説は、同シリーズの『クトゥルフカルト・ナウ』の設定とも一部リンクする幻想短編だ。作家の『玻璃の家』、『妖精の墓標』は、島田荘司流の認知科学とミステリの融合のアップデートがSF史的に見てもユニークだったが、そこで語られた現実と幻想の断層が、「ケルトの馬」ではブレグジットテロリズムという現代の状況に噛み合わされ、多角的な解釈を可能にしている。作家はミステリ評論も精力的に発表しているが、そこで培われた批評性が表出されている。SF大賞はもっと幻想短編を顕彰すべきとの提言を込めて、ここに推薦する次第だ。

 

シャドウラン 5th Edition』(ゲーム)、ジェイソン・M・ハーディー著、朱鷺田祐介シャドウランナーズ訳

 現代SFのあり方を論じるにおいて、ゲームで培われた豊穣な文脈を無視することはできない。1989年の初版以来、『シャドウラン』はミラーシェード・グループが培ったサイバーパンクの原風景を、ゴシックファンタジーと融合させることで、ゲームの世界観をそのまま、現代のレイシズムへの批判とする離れ業を見せている。かのケン・リュウが愛好したというのも頷ける話だ。最新第5版は、フルカラー・ルールブックに収められた旧版のイラストギャラリーが示すように、集大成といった趣がある。だが、圧倒的なボリュームにもかかわらず、プレイアビリティはグンと向上している。旧版がSF大賞の候補にすら上がっていなかったのが不思議だが、改めて日本のSF文壇が『シャドウラン』を「発見」することを強く期待する。

 

『幻想と怪奇の英文学III 転覆の文学編』(評論)ローズマリー・ジャクスン著、下楠昌哉

 ナンバリングタイトルだが独立した一個の評論書。英語圏ではフィクションの幻想性を研究するうえでの基本書として定着している本作が、ようやく全訳された。ジャクスンは本書で、リアリズムの覇権を打ち砕き、破壊し去るために、複眼的な混乱こそを重視し、その際に含まれる政治性に着目する。例えば『フィーメール・マン』のジョアナ・ラスを引くことで、あるべき仮定的な現実をも否定の形で提示するジャクスンの視点は、今のSFがもっとも欠いているものだ。近年、残念なことに少なからぬSF関係者が反フェミニズムの帰結としての「女叩き」の旗を振り、惨憺たる政治的現実を追認し強化しようとしている。そうした残念な文脈とはまったく異なる、ゴシックでパンクな道筋を示した礎として重要だ。

 

※過去、受賞歴のある作家については外しました。 

 

 また、渡邊利道さんが『掠れた曙光』を、吉里川べおさんが『傭兵剣士』を、それぞれ推薦してくださいました。ありがとうございます。