「図書新聞」2019年12月21日号は19年下半期読書アンケート号です。
私は、トーマス・ベルンハルト『アムラス』(初見基・飯島雄太郎訳、河出書房新社)ジェラルディン・マコックラン『世界のはての少年』(杉田七重訳、東京創元社)、成田英敏『アコㇿコタン』(双葉社)、北大ACMプロジェクト編『北海道大学もうひとつのキャンパスマップ––––隠された風景を見る、消された声を聞く』(寿郎社)を取り上げました。
今回も、時評や書評で取り上げてこられなかった作品から選びました。コメントは紙面の方をご覧下さい。
「現代詩手帖」2019年12月号に現代詩「これはプロレタリア詩だ!」と、評論「現代詩よ、大いに遊べ!」が掲載
「現代詩手帖」2019年12月号は年鑑の号で、作品では『掠れた曙光』より「これはプロレタリア詩だ!」の抄録と、評論「現代詩よ、大いに遊べ!」が掲載されています。批評は、あえて2019年の日本の詩集・詩誌(not翻訳)に絞り、閉塞を回避する道筋を模索するもの。
『掠れた曙光』は、現在の詩壇で支配的なスタイル(大雑把に言うと、フレンチ・セオリーの変奏のような書き方)とは異なる書法を、あれこれ追究しました。とりわけ「これはプロレタリア詩だ!」は、KY全開とも言うべき作品です。なのにアンケートで言及して下さる方々もいて、ありがたく存じます。
そうそう、もう1つは新自由主義的ライトヴァースと「抒情」の拒否、です。わざわざ「抒情」と「韻律」への「憎しみ」を表明しているから、そこはおわかりですよね。
なお、「これはプロレタリア詩だ!」の抄録は、初版とも二版とも、文面が微妙に異なる形となっております。抄録ゆえに「その後の続き」を意識したヴァージョンになりました。ご興味ある方は、ぜひとも読み比べてみてください。
「図書新聞」の2019年12月14日号に「〈世界内戦〉下の文芸時評 第五八回 「呪われた詩人たち」の時空を超えた緩やかな連帯」を寄稿
発売中の「図書新聞」の2019年12月14日号に、「〈世界内戦〉下の文芸時評 第五八回 「呪われた詩人たち」の時空を超えた緩やかな連帯」を寄稿しました。
今回は、サイバーパンク以降のジャンル横断を貫徹した翻訳家の小川隆の急逝を悼み、その偉業を振り返りつつ、以下の作品を取り上げました。
・「SFマガジン」のテッド・チャン『息吹』の刊行記念特集、および「オムファロス」(大森望訳)
・ブルース・スターリング「巣」(小川隆訳、「SFマガジン」)および「SFマガジン」の小川隆追悼特集。
・山野辺太郎「孤島の飛来人」(「文藝」)
・宇佐美りん「かか」(文藝賞受賞作)
・遠野遥「改良」(文藝賞受賞作)
・李琴峰「星月夜」(「すばる」)
・三国美千子「青いポポの果実」(「新潮」)
・高原英理「正四面体の華」(「群像」)
・ポール・ヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』(倉方健作訳、幻戯書房)
・奏夕美/藤原月彦『夕月譜』(ふらんす堂)および『藤原月彦全句集』(六花書院)
・「ぎぎよしらむ」0号より、冨所亮介「ブリコラージュ」
・蓮實重彦「ジョン・フォード論」(「文學界」)
・崎浜慎「ピクニックの音色」(「三田文學」)
・添田馨「必=急」(「Nemesis」)
・山城むつみ「連続する問題 第九回 グレタとマルクス」(「すばる」)
・マルク=アラン・ウアクニン「だからひとは蜻蛉を愛する……」(高山花子訳、「午前四時のブルー」)
また、ケリー・リンク、ラヴィ・ティドハー、アリエット・ドボダール、山野辺太郎「いつか深い穴に落ちるまで」、ジュール・ヴェルヌ『地底旅行』、『八十日間世界一周』、小縞山いう『リリ毛』、三国美千子「いかれころ」、夏目漱石、アルチュール・ランボー、小林秀雄、添田馨『非=戦(非族)』、大城立裕「カクテル・パーティー」、エルンスト・ユンガー等にも言及しています。