M・ジョン・ハリスン『ヴィリコニウム パステル都市の物語』(大和田始訳、アトリエサード)が出ます

 現代イギリスを代表する「もっともいまの日本で再評価されるべき作家」M・ジョン・ハリスンの作品集『ヴィリコニウム パステル都市の物語』(アトリエサード)が出ます。

 ノンジャンルであり、ジャンルの祖型でもある。表題のヴィリコニウムとは、シリーズ名、都市の名前なのですが、作品によって千変万化する無何有郷でもあります。『ユートピア』以来の文学史の伝統、とも言えるけど、ケルトの黄昏、産業革命以来の文明批判、全部入ってます。声高に叫ぶのではなく、寓喩に落とし込まれていて、しみじみおもしろい。

 ムアコックへの応答たる反ヒロイック・ファンタジーからケルトの黄昏、寓喩きらめく20世紀小説の真髄へようこそ!

 「ナイトランド・クォータリー」Vol.18-21で連続掲載された短編に、サンリオSF文庫で出た長編を収め、全面改訳。私は「ナイトランド・クォータリー」編集部として編集に参画、大和田始さんの訳者あとがきの露払いを担当しました。

 以下、版元サイトからの引用です。

発行:アトリエサード/発売:書苑新社
ISBN:978-4-88375-460-1
四六判・カヴァー装・320頁・税別2500円――――――――――――――――――

〈錆の砂漠〉と、滅亡の美。
レトロな戦闘機械と、騎士たち。
黄昏の陰翳、プリズムのように煌めく寓喩――

スチームパンクの祖型とも評され、広範な影響を及ぼしてきた、
イギリスを代表する作家M・ジョン・ハリスンの傑作ダークファンタジーが、
全面改訳版で登場!
読むほどに味わい深まる魅惑の連作群です!

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いまもっとも再評価されるべき作家が、M・ジョン・ハリスンだ。

レトロスペクティヴに機械文明のあり方が問い直されるという意味で、
パステル都市』はキース・ロバーツの『パヴァーヌ』と並んで
スチームパンクの祖型にも準えられる。

また、宮崎駿風の谷のナウシカ〉の系譜に連なるSF・幻想文学の先行作として、
私が知る限り20年以上前から、フランク・ハーバートの〈デューン〉シリーズや
ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』と並んで、
パステル都市』の名が挙げられるのは珍しくなかったのだ。
――岡和田晃
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◎目次
ヴィリコニウムの騎士
ラミアとクロミス卿
奇妙な大罪
混乱の祭主たち
パステル都市

解説 もっとも再評価されるべき作家、M・ジョン・ハリスン/岡和田晃
訳者あとがき/大和田始

カバー/山村俊雄

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★M・ジョン・ハリスン M. John Harrison
現代イギリスを代表する作家。1945年、イギリス・ウォーリックシャー生まれ。1968年、イギリスSFの〈新しい波〉の牙城であった「ニュー・ワールズ」誌で、短篇と評論の同時掲載でデビュー。1970年代から80年代にかけて『パステル都市』『翼の嵐』などのダークファンタジー〈ヴィリコニウム〉連作で人気を博する。90年代には『登山家たち』『心の行方』『人生の徴』などのノンジャンル小説を書きつつ、イギリスの若い作家たちの新しい作風に「ニュー・ウィアード」と命名して論争を起こした。2000年代には「ニュー・スペースオペラ」への応答でもある『ライト』(小野田和子訳、国書刊行会)に始まる3部作を発表。近作『沈んだ土地がまた隆起する』は、ウィリアム・バロウズヴァージニア・ウルフのミッシング・リングを埋めるとも評される。

★大和田 始 (おおわだ はじめ)
翻訳家・評論家、「SF Prologue Wave」編集委員。1949年宮崎県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。1972年、ロバート・シルヴァーバーグ「太陽踊り」(「SFマガジン」1月号)の翻訳で翻訳家として、「遊侠山野浩一外伝」(「NW-SF」No.5)で評論家としてデビュー。翻訳にブライアン・アッシュ『SF百科図鑑』(共訳、サンリオ)、J・G・バラード『コンクリートの島(コンクリート・アイランド)』(共訳、NW-SF社/太田出版)、ブライアン・オールディス『世界Aの報告書』(サンリオSF文庫)、カイラ・リー・ウォード「そして彼女の眼の中で、都市は水没し」(「ナイトランド・クォータリー」vol.19)、リサ・L・ハネット「戴冠試合」(同vol.26)など。詩人・フランス文学者の父・服部伸六、翻訳家の叔父・神戸政郎の顕彰活動でも知られる。
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 書店用POPはこちらから。

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「図書新聞」2022年1月1日号に、「〈世界内戦〉下の文芸時評 第八二回 ホモソーシャルな「内輪ノリ」とは異なる理路での文学の再生を!」が掲載

 発売中の「図書新聞」2022年1月1日号に、「〈世界内戦〉下の文芸時評 第八二回 ホモソーシャルな「内輪ノリ」とは異なる理路での文学の再生を!」が掲載されています。今号は「絶版本」の読まず語りを喧伝する侮辱と歴史修正主義の近似性を指摘しつつ、主に以下の作品を取り上げています。

・武井彩香『歴史修正主義――ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで』(中公新書
・内田正敏『靖国神社と聖戦史観――A級戦犯こそ靖國にふさわしい』(藤田印刷エクセレントブックス)
・ユルゲン・ハーバーマス「道徳性と人倫の関係についていまいちど」(三島憲一訳、「思想」二〇二一年一一月号)
宮内勝典『二千億の果実』(河出書房新社
・トーマス・ベルンハルト『推敲』(飯島雄太郎訳、河出書房新社
国書刊行会スタニスワフ・レム・コレクション〉第Ⅱ期
・「現代詩手帖」二〇二一年一一月号の特集「ミャンマー詩は抵抗する」
・マデリン・ミラー『キルケ』(野沢佳織訳、作品社)
シェリイ・カメイ「鶴の女たち」(勝山海百合訳、「すばる」)
横田創「帰りたくないひと」(「しししし」4)
・太田靖久「ししし」(「しししし」4)
・笛宮ヱリ子「だ」(ことばと新人賞)
須藤薫子「ヌマンド」(二〇二一年下半期同人雑誌優秀作、「文學界」)
・小正路淑泰「全国水平社青年同盟・高橋貞樹の写真」(「革」)
・渡辺健一郎「演劇教育の思想」(群像新人評論賞受賞作)

 また、スタニスワフ・レム『泰平ヨンの現場検証』(『現場検証』)、トーマス・ベルンハルト『ヴィトゲンシュタインの甥』等にも触れています。

 

 一点補足。レムの故・深見弾

とあるところは、
 レムの訳者の故・深見弾 です。

 

 図書新聞は次週、次の次の週は休刊のため、本号は書店に3週間あまり並びます。
 年末年始を挟んでいるので、コンビニからダウンロードできるのは時間がかかるかもしれません。書店や図書館に赴けない方は、電子版をご利用ください。

「SF Prologue Wave」に「八杉将司さんを悼んで」と著作リストを掲載

 

 八杉将司さんが亡くなり、言葉もありません。

 急遽、追悼文を書き下ろし、「SF Prologue Wave」のサイトに掲載いただきました。

https://prologuewave.club/archives/9000

prologuewave.club

 

 公開されていた自筆の著作リストを増補する形で、「SF Prologue Wave」編集委員が作成した八杉将司氏の著作リストを公開いたしました。作品に触れるご参考になさっていただければ幸いです。

prologuewave.club

 

「FT新聞」に「ゾルのモンスター迷宮」リプレイ&ゲームポエム「檸檬」が掲載

 

 2021年11月28日の「FT新聞」No.3231で、 細谷正光賞受賞・「ミステリマガジン」「ミステリが読みたい!」で高順位、破竹の勢いの羽生(齊藤)飛鳥さんによる拙訳「ゾルのモンスター迷宮」(「GMウォーロック」2号)リプレイが配信されています!

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  2021年12月2日配信の「FT新聞」No.3235にて、オリジナル・ゲームポエム『檸檬』が無料配信されました。梶井基次郎の短編小説をもとにしており、東海大学文芸創作学科のゲームデザイン論の受講生・あるかすさんの作品を、中村俊也先生のご助言のもと私が改訂したものです。

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「FT新聞」に「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」Vol.17&18を寄稿

 

 2021年11月18日配信の「FT新聞」No.3221に、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう! Vol.17」が掲載されています。今回は、英語の資料を使い、〈ウォーハンマー〉シリーズのあゆみを確認しています。

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 2021年12月16日配信の「FT新聞」No.3249で、「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」Vol.18が配信されました。前回の記した『ウォーハンマー』シリーズの歴史の補遺と、1983年に出た最初のルールブックをRPGクリエイター目線で紹介していきます。

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「Role&Roll」vol.206に、『エクリプス・フェイズ』のシナリオ「火星の新選隊 あるいは、デューン 砂漠の記憶」が、掲載

発売中の「Role&Roll」vol.206に、『エクリプス・フェイズ』のシナリオ「火星の新選隊 あるいは、デューン 砂漠の記憶」が、掲載されています。話題の映画をイメージ・ベースとしつつ、好評発売中の『サンワード』で扱われる火星はヴァレス新上海にて、センティネルよ戦闘ドラッグの謎を追え!

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「Role&Roll」Vol.205に、中世ヨーロッパ社会史入門「戦鎚傭兵団の中世"非”幻想事典」の第65回「使い魔にして愛の使者――中世の冒険に彩りを添える鳥類」が掲載

発売中の「Role&Roll」Vol.205に、中世ヨーロッパ社会史入門「戦鎚傭兵団の中世"非”幻想事典」の第65回「使い魔にして愛の使者――中世の冒険に彩りを添える鳥類」が掲載されています。14世紀末のフランス文学、RPGにおける使い魔の起源、異界とのつながりの示唆、といった多様なトピックを扱います。