花崎皋平詩集『アイヌモシリの風に吹かれて』増補版の帯文を執筆

 花崎皋平さんの詩集『アイヌモシリの風に吹かれて』(株)クルーズ 予価1800+税 A5版 160p 2022年1月刊行予定の帯文を書きました。

 1枚目は竹内渉さんにSNS用に加工していただいた帯写真。3枚目は柴田望さん、長屋のり子さんのお心遣いで頂戴した復刻前のオリジナル版(2009)。

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2021年の仕事

■2021年の仕事
 今年は例年にも増して、全速力で駆け抜けた年という印象です。抜けがあるかもしれませんが、備忘のために主だったものをまとめてみました。


○編集・小説創作・翻訳
『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード、9月)


○翻訳
ジョエル・マーラー&キース・A・アボット『怪奇の国のアリス+怪奇の国!』(グループSNE/書苑新社、2月)
ケン・セント・アンドレゾルのモンスター迷宮」(「GMウォーロック」Vol.2、7月)
ラース・ブルーメンシュタイン&ロブ・ボイルほか『エクリプス・フェイズ ソースブック サンワード』(共訳、新紀元社、8月)
アンディ・ローほか『ウォーハンマーRPG スターターセット』(共訳、ホビージャパン、10月)
アンディ・ローほか『ライクランドの建築』(共訳、ホビージャパン、10月)
アンディ・ローほか『ライクランドに冒険あり!』(共訳、ホビージャパン、10月)


○共著・解説等
藤元登四郎祇園「よし屋」の女医者 』(解説を担当、小学館文庫、1月)
『新・日本現代詩文庫154 清水博司詩集』(解説を担当、土曜美術社出版販売、7月)
巽孝之ほか『脱領域・脱構築・脱半球』(スピヴァク論を担当、小鳥遊書房、10月)


○編集参加
コナン・ドイル『妖精の到来』(井村君江訳、アトリエサード、5月)
M・ジョン・ハリスン『ヴィリコニウム パステル都市の物語』(大和田始訳、アトリエサード、12月)
『鳩沢佐美夫の仕事 第一巻』(藤田印刷エクセレントブックス、12月)


RPGシナリオ・ソロアドベンチャー
トロールの国のアリス」(「ウォーロック・マガジン」Vol.9、1月)
「“ほうき拳”をめぐる冒険(アヴァンチュール)」「ヴァンパイア・ロードと対峙せよ!」「もつれた国のアリス」(「GMウォーロック」創刊号、4月)
「哀しみのオルガスマシン」(「Role&Roll」Vol.200、6月)
「金星応答あり」(「Role&Roll」Vol.203、9月)


○ナイトランド・クォータリー(編集長、定期購読者用ペーパー編集・執筆参加)
・「ナイトランド・クォータリー」Vol.24(アトリエサード、3月)
「クロエ・ジャオ監督『ノマドランド』と再帰的なトライブの誕生――ヘルズ・エンジェルズ的想像力の系譜から」&和爾桃子インタビュー&ロバート・L・アスプリン「盗賊世界へのいざない」訳ほか
・「ナイトランド・クォータリー」Vol.25(アトリエサード、6月)
「死の舞踊」と恐怖をめぐる解釈学――ペトラルカから「ウィアード・テールズ」、T・Fポウイス藤枝静男の照応まで」&大和田始インタビュー&T・F・ポウイス「鍋と布巾」訳ほか
・「ナイトランド・クォータリー」増刊号(アトリエサード、7月)
「怪奇幻想文学としてのコティングリー妖精事件」&パトリシア・A・マキリップ「ウンディーネ」訳ほか
・「ナイトランド・クォータリー」Vol.26(アトリエサード、10月)
「怪奇幻想文学としての「異教」と秘密結社、そしてカルト――他者性の位置を問い直すために」&健部伸明インタビューほか
・「ナイトランド・クォータリー」Vol.27(アトリエサード、12月)
「「蟄居文学」というグランド・ツアー」&あだちひろしインタビュー&山田和子インタビュー&C・J・チェリイ「最後の塔」訳ほか


○連載
「〈世界内戦〉の文芸時評」(図書新聞、12回)
「戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典」(「Role&Roll」、3回)
山野浩一とその時代」(「TH」、4回))
「『エクリプス・フェイズ』情報」(SF Prologue Wave、多数)
「ナイトランド・クォータリー」紹介、八杉将司遺稿採録(SF Prologue Wave)
「現代北海道文学研究」(「フラジャイル」、3回)
「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」(「FT新聞」、19回)
ハヤカワ文庫JA総解説」(「SFマガジン」、3回)
「北海道文学集中ゼミ第3期」(シミルボン、2回)
リプレイ小説の連載(「FT新聞」)
ソロアドベンチャー・シナリオ・ゲームポエムの学生優秀作の改訂(「FT新聞」)


○批評
「「肉体植民地」から『盲人書簡』へ〜寺山修司への敬意と、唐十郎ジャガーの眼』」(「TH」No.85、1月)
「『ネクロスの要塞』から『メタモスの魔城』へ〜オマケシールと「ローカル・サロン」の再生」(「TH」No.86、4月)
「〈風〉に溶け込み、「惑星思考(プラネタリティ)」へ向かうこと――清水博司論」(「潮流詩派」265号、4月)
小熊秀雄研究の一世紀」(「詩と思想」7月号)
「『肉体と死と悪魔』と『生の館』が赤裸々に語る〜マリオ・プラーツ小論」(「TH」87、7月)
「東村岳史『近現代北海道とアイヌ民族―和人関係の諸相』(三元社)書評 多角的に表出される「同化主義」の制度と歴史を撃つために 微に入り細を穿つ雑誌の博捜により初めて可能な研究史の進展がある」(「図書新聞」2021年8月14日号)
「「中立を守る」ことの危うさ 分断の打破に不可欠なレイシズム・ポリシー批判」(「読書人」9月3日号)
「過激・巧妙化するアイヌ差別 和人の加害性 歴史忘れず」(「北海道新聞」10月23日)
高原英理少年愛文学選」書評」(「TH」No.88、10月)
「T&T情報コーナー」(「GMウォーロック」3号、10月)
「来るべき民主主義の位置を手繰り寄せる――真壁仁編『詩のなかに目覚める日本』論』(「B面の岩波新書」、10月)
「「簒奪された「社会派」への信頼、歴史感覚を取り戻すために――村田正夫論」(「潮流詩派」267号、11月)
「加害の淵源たる家父長制と植民地主義をともに転覆させる――林美脉子『レゴリス/北緯四十三度』」(「現代詩手帖」2021年12月号)
新渡戸稲造の植民政策論—アイヌを不可視化させた言説—」(「本郷」157号、12月)


○現代詩
ウィーン体制に一矢報いて」(「壘」7号、1月)
「プロレタリア詩の逆襲」(「潮流詩派」264号、1月)
「宿便」(「現代詩手帖」2021年2月号)
「乱立する高塔の逆螺子の」(「白亜紀」159号、3月)
「鳥葬にされた抒情」(「壘」8号、4月)
「反抒情」(「潮流詩派」265号、4月)
「崩れた微光」(「白亜紀」160号、5月)
「非常勤の淫売——薔薇十字に刻まれた、めくるめく加藤郁乎への戯論の註釈の序文」(「壘」9号、7月)
「わたしたちがまだ手放さずにいたもの」(「ナイトランド・クォータリー」増刊号、7月)
「四つの四重葬」(「壘」10号、10月)
「勾配と火藥――桜井勝美『ボタンについて』に」(「潮流詩派」266号、7月)
「ゴミ」(「潮流詩派」266号、7月)
「ご臨終――風刺詩人・村田正夫に」(「潮流詩派」267号、10月)
「最後のシュルレアリスト」(「白亜紀」161号、10月)
「みずからを凍結させて仄暗く──エミリー・ディキンスンに」(「ナイトランド・クォータリー」Vol.27、12月)


○監修
メイン担当以外の回の『エクリプス・フェイズ』関係記事(「Role&Roll」、隔月)
メイン担当以外の回の「戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典」関係記事(「Role&Roll」、隔月)
T・S・ルイカートほか『ウォーハンマーRPG ゲームマスター・スクリーン』(ホビージャパン、9月)
パドレイグ・マーフィー『比類なく有益なスラサーラの呪文集』(ホビージャパン、10月)
「TH」各号、岡和田査読作
「ナイトランド・クォータリー」各号
「SF Prologue Wave」各号


○講義・イベント出演
東海大学文芸創作学科(ゲームデザイン論、幻想文学論)(春学期、秋学期)
TRPGフェスオンライン、ゲームマスター出演(春、秋)
日本近代文学会春期大会「「未来学」批判としての〈未来記〉――山野浩一「死滅世代」からフェミニズムディストピアまで」(5月)
緑一色の漫画「スピタのコピタの!」出演(「Role&Roll」Vol.203、9月)
TRPGサークル幻界堂でトークイベント(10月)
武蔵大学「イギリスの文学」ゲストスピーカー(北村紗衣先生)(11月)


○アンケート回答・短文
『SFが読みたい!』(2月)
蔵原大遺稿補遺(5月)
図書新聞」(6月、12月)
「植民地文化研究」(10月)
現代詩手帖」(12月)


○追補
リチャード・シドル『アイヌ通史』(マーク・ウィンチェスター訳、岩波書店)お手伝い(7月)

『鳩沢佐美夫の仕事 第一巻』(藤田印刷エクセレントブックス)刊行

 『鳩沢佐美夫の仕事 第一巻』(藤田印刷エクセレントブックス、2021年12月28日発行)の見本が届きました。「思想としての〈人間(アイヌ )〉。作家・鳩沢佐美夫(1935〜71)。没後50年の節目、いっそう切実に響く多様な文業の全貌を伝える新校訂版、刊行開始」。「仏と人間」や「休耕」を含む7篇。

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「Role&Roll」Vol.207に、戦鎚傭兵団の中世“ 非”幻想事典」第六十六回、「娯楽と名誉の狭間で――決闘の成立と「対等さ」」が掲載

 発売されたての「Role&Roll」Vol.207に、戦鎚傭兵団の中世“ 非”幻想事典」第六十六回、「娯楽と名誉の狭間で――決闘の成立と「対等さ」」が掲載。古代の剣闘士のあり方が中世にどう変化したか、教会との関わり、男女間のハンディをいかに確保したか等を解説しています。見田航介さんのイラストも必見!

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 主要参考文献にある本のほか、マルタン・モネスティエ『図説 決闘全書』(大塚宏子訳、原書房)などを参照しています。

 

 

 

吉川弘文館の雑誌「本郷」NO.157(2022.1)に「新渡戸稲造の植民政策論—アイヌを不可視化させた言説—」が掲載

 吉川弘文館の雑誌「本郷」NO.157(2022.1)に、「新渡戸稲造の植民政策論—アイヌを不可視化させた言説—」が掲載されました。国木田独歩空知川の岸辺」の背景を探り、そこから新渡戸稲造らが確立した国家イデオロギーとしての「植民学」が、アイヌを見落とすのではなく不可視にさせたと論じています。

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 このテーマは、2020年の6月に、阿部賢一さんの大学講義のゲストスピーカーとして話した内容の冒頭部を、裏を取り直しまとめ直した内容となっています。「空知川の岸辺」自体は、私が開催していた北海道文学集中ゼミでも取り扱ったことがあります。

 新渡戸稲造のカットは三谷靱彦さん。ゲラのときは入っていなかったので、つけていただいたのを見本誌で見つけて、にっこり。重いテーマを扱っているので、せめてもの清涼剤になればと思います。

 

八杉将司遺稿「宇宙の選択」「やり直す」が、「SF Prologue Wave」に掲載

 生前の八杉将司さんにお預かりしていた小説2作「宇宙の選択」「やり直す」が、ご遺族の許諾を得たうえで、「SF Prologue Wave」にて掲載になりました。いずれも対になるがごとき巧緻な作品で、広く読まれることが作家へのいちばんの追悼になります。

t.co

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『いかに終わるか 山野浩一発掘小説集』(岡和田晃編、小鳥遊書房)が発売予定

 『いかに終わるか 山野浩一発掘小説集』(岡和田晃編、小鳥遊書房)が発売予定です。装画は中野正一さん。

 単行本未収録の小説・未発表の作品をベースに構成、「死滅世代」「都市は滅亡せず」「嫌悪の公式」はじめ、反−未来思考、戦後文学史の結節点となる一冊のお目見えです。出し惜しみなしの貴重な作品ばかり。

 作品で描かれているのは「未来」ではなく現在なのです。安易な救済を拒絶する作品群の強度たるや。

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 「死滅世代」「都市は滅亡せず」「嫌悪の公式」はじめ、思弁小説(スペキュラティヴ・フィクション)を提唱し、普及させた第一人者による反−未来思考!

【収録作品】

1 「死滅世代」と一九七〇年代の単行本未収録作

死滅世代/都市は滅亡せず/自殺の翌日/数学SF夢は全たくひらかない/丘の上の白い大きな家/グッドモーニング!/宇宙を飛んでいる/子供の頃ぼくは狼をみていた/廃線

2 一九六〇年代の単行本未収録作

ブルー・トレイン/麦畑のみえるハイウェイ/ギターと宇宙船/箱の中のX 四百字のX-1/X塔 四百字のX-2/同窓会X 四百字のX-3/

3 21世紀の画家M・C・エッシャーのふしぎ世界

階段の檻/端のない河/鳩に飼われた日/箱の訪問者/船室での進化論の実験/不毛の恋/氷のビルディング/戦場からの電話/など全21編

4 未発表小説、および「地獄八景」

嫌悪の公式/地獄八景

解説=岡和田晃

 

山野浩一(やまの・こういち)

1939年大阪生まれ。関西学院大学在学中の1960年に映画『△デルタ』を監督。1964年に寺山修司の勧めで書いた戯曲「受付の靴下」と小説「X電車で行こう」で作家デビュー。「日本読書新聞」や「読書人」のSF時評をはじめ、ジャンルの垣根を超えた犀利な批評活動で戦後文化を牽引した。1970年に「NW―SF」誌を立ち上げ、日本にニューウェーヴSFを本格的に紹介。1978年からサンリオSF文庫の監修をつとめ、SFと世界文学を融合させた。血統主義の競馬評論家、『戦え、オスパー!』原作者としても著名。著書に『X電車で行こう』(新書館)、『鳥はいまどこを飛ぶか』(早川書房)、『殺人者の空』(仮面社)、『ザ・クライム』(冬樹社)、『花と機械とゲシタルト』、『レヴォリューション』(以上、NW―SF社)、『山野浩一傑作選』(全2巻、創元SF文庫)ほか。2017年逝去。没後、第38回日本SF大賞功績賞を受けた。

 

岡和田晃(おかわだ・あきら)

1981年北海道生まれ。文芸評論家、ゲームデザイナー、現代詩作家。「ナイトランド・クォータリー」編集長、「SF Prologue Wave」編集委員東海大学講師。著書に『「世界内戦」とわずかな希望 伊藤計劃・SF・現代文学』、『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷 SF・幻想文学・ゲーム論集』、『再着装の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(編著)(以上、アトリエサード)、『反ヘイト・反新自由主義の批評精神 いま読まれるべき〈文学〉とは何か』(寿郎社)、『脱領域・脱構築・脱半球 二一世紀人文学のために』(共著、小鳥遊書房)、『山野浩一全時評(仮題)』(編著、東京創元社近刊)ほか著訳書多数。「TH(トーキング・ヘッズ叢書)」で「山野浩一とその時代」を連載中。第5回日本SF評論賞優秀賞、第50回北海道新聞文学賞創作・評論部門佳作、2019年度茨城文学賞詩部門受賞、2021年度潮流詩派年間最優秀評論賞受賞。