『ドラッケンフェルズ』復刊!

 うぉおお、SFマガジンの今月の1冊が『トラストDE』ですよ、『トラストDE』!
 しっかし、『雪どけ』の作者がこんなものを書いてしまうとはねぇ。と、いつも思う作品ですよ。



 それはそれとしまして、売れているという噂はよく聞くのにもかかわらず、世間様では冷遇されている印象が拭えなかった『ウォーハンマーRPG』ですが、ついにあの『ウォーハンマーRPG』謹製傑作ノベル『ドラッケンフェルズ』が復刊の模様です。
 しかも続編の予定もあるってよ!


 『ウォーハンマーRPG』のノベライズは、『インターゾーン』というイギリスの先鋭的なSF誌の編集者デイヴィッド・プリングルが手がけていたということで、小説作品としてレベルの高いものが多い。
 とくにこの『ドラッケンフェルズ』は絶品です。
 著者のジャック・ヨーヴィルは、キム・ニューマンの筆名で、ウンベルト・エーコ的な怪作『ドラキュラ紀元』シリーズにて有名なお方ですが、そのテクニックを駆使して、濃密な香りはそのままに、うまく既存のファンタジーの枠組みをずらしてくれております。
 例えばバルザックドストエフスキーに代表される19世紀小説の形や執筆テクニックは、現在、山のように生み出されている娯楽小説の雛形となっており、当然、20世紀後半に登場したRPGという娯楽も、そのような形をトレースしているわけですが、しかし、RPGには確固たる背景世界というものがあり、そしてキャラクターの自律性というものが、他のエンターテインメントよりもはるかに重要なものとなってきます。
 この穴をどう埋めるのか? その答えのひとつが、『ドラッケンフェルズ』には秘められている。
 そう、私は思うのです。
 


 http://www.trpg.net/news/2007/06/30.html


 調べてみたところ、ほか、『ウォーハンマーRPG』(含む40K)のノベライズ陣には、


イアン・ワトスン(『エンベディング』『スロー・バード』)
・ブライアン・ステーブルフォード(『ホームズと不死の創造者』)
・ジョン・ブラナー(『ノーバディ・アクスト・ユー』)
バリントン・J・ベイリー(『カエアンの聖衣』『永劫回帰』)
・ストーム・コンスタンティン(「テクノゴシック」を作ったお方)
・チャールズ・プラット(『フリーゾーン大混線』)
・ポール・J・マコーリィ(『フェアリィ・ランド』)


といった錚々たる面子が参加しておられるようだ。


 ブライアン・ステーブルフォードに関しては、『吟遊詩人オルフィーオ三部作』がかつて社会思想社より紹介されたようだが、他の作家、とくにアンソロジーものを読んでみたいものだ。

追記;その後、「インターゾーン」とキム・ニューマンについては、「ナイトランド・クォータリー」Vol.11の「キム・ニューマンドラキュラ紀元』と新歴史主義(ニューヒストリシズム)」に詳述しました。