第51回群像新人文学賞の最終候補となりました
そういえば私、評論文「『生政治』と破滅(カタストロフィー)」にて、講談社の文芸誌「群像」が主催する、第51回群像新人文学賞評論部門の最終候補となっておりました。
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今回は残念ながら受賞を逸してはおりますが、現在発売中の「群像」6月号に、選考委員の諸先生方による選評が掲載されております。
作品が載らず選評のみということで、スタニスワフ・レムの『完全な真空』(架空の本に関する書評集)状態となっておりますが(汗)、機会がありましたらご覧になって下さい。
しかしせっかくですので、簡単に内容のさわりを紹介させていただきましょう。
拙稿では、SFと純文学の境界線上に位置する作家で、長らく「無冠の帝王」として名高かったトマス・ディッシュの傑作小説『キャンプ収容』(『キャンプ・コンセントレーション』)を考察の中心に据えつつ、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの『収容所群島』など、強制収容所体験に代表される、極限的な状況を主題とした小説や思想を概観していくことで、広義のフィクションが懐胎しうる形式的な可能性(美学、労働、政治など)について、考えを進めるという内容になっております。
- 作者: トマス・M.ディッシュ,野口幸夫
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- 作者: ソルジェニーツィン,木村浩
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いざフィクションに触れる際、どのようなジャンルであっても避けて通ることのできない本質的な問題について、なるべく犀利に斬り込むことを志向しました。過度に時流におもねず、それでいてアクチュアルであろうと心を砕きました。そうして、想像力なるものの根幹を問い直し、フィクションが本来有していたダイナミズム(文学的な強度)をまったく新しい地平から恢復したいと考えていたのです。
残念ながらあと一歩力は及びませんでしたが、今回考えた問題についてこれで終わりにするつもりはありません。より増補発展・拡充させたうえで、どこかで公開できるようにしたいと思っています。
それと同時に、新しい問題系についても考えを進めていく所存です。
文学的・歴史的・哲学的な勉強を進めながら「Speculative Japan」をはじめとしたフィクションの最先端を探る仕事にできるだけ共鳴し、フィクションの未来を考えたいというのももちろんですが、今まで以上に、RPG・SF・ファンタジー・神話や幻想文学畑での翻訳・ライティングの仕事も活発に行なっていくつもりです。
とりわけRPGが懐胎している形式的な可能性は、より多くの人たちに知ってもらって損はないと感じています。そうして、RPGを始めとした優れたフィクションの可能性を、一歩でも推し進めていくような仕事をしていきたいと思うのです(現に、アラン・ロブ=グリエの『幻影都市のトポロジー』など、優れた現代小説は、同時に優れたゲーム小説にもなっていたりすることですし)。
幻影都市のトポロジー (1979年) (新潮・現代世界の文学)
- 作者: アラン・ロブ=グリエ,江中直紀
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経験が浅く至らない身ではありますが、皆さまに関しましては、暖かく見守っていただければ幸いです。才覚の欠落を日々痛感しておりますが、勉強する気はありますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。