キース・ベイカー『砕かれた大地』


 『勇者大全』とにらめっこしている間に、キース・ベイカー『砕かれた大地』(上)(下)が届きました。

 これは、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のエベロン世界を舞台にした小説シリーズの第2部です。
 実は、第1部の『シャーンの群塔』は、近年読んだヒロイック・ファンタジーのなかでも、自分のなかで思いっきり上位にくる快作でした。
 それは、ヒロイック・ファンタジーサイエンス・ファンタジーという半ば壊滅したジャンルを、設定をどこまでも掘り下げられるRPGというジャンルをいちど経由することで、復権させているからなのですね。


 エベロン世界は非常にユニークなワールドですが、正直、ここまでゲームシステムの理屈と世界設定の理屈が噛み合った世界観、見たことなかったです。 その意味で、ゲームならではの斬新さがあるように感じています。
 このあたりについては、かつてWebに色々書きました。世界観の特徴については、 「SF者のためのエベロン・ガイド」(シャーン篇) ゲームの理屈と世界観の連動性については、「魔法工学」 にそれぞれ、書いてあります。


 思い返してみれば、ヒロイック・ファンタジーしか持ち得ないセンス・オヴ・ワンダーというものは、案外語られる機会が少ないように思います。
 小谷真理『ファンタジーの冒険』というとんでもない労作(バイブル)や、かつてアトリエOTCAから出ていた『幻想文学』という雑誌別巻のヒロイック・ファンタジー特集などはありますが、まだまだ日本において、きちんとヒロイック・ファンタジーを正面から語る土壌は貧しいように思えます。
 もっと『D&D』小説ならではの面白さが文芸的な側面から言葉にされるべきではないかと、思わずにはいられません。

D&Dノベル 砕かれた大地 上 [ドリーミング・ダーク第2部] (HJ文庫G)

D&Dノベル 砕かれた大地 上 [ドリーミング・ダーク第2部] (HJ文庫G)

D&Dノベル 砕かれた大地 下 [ドリーミングダーク第2部] (HJ文庫G)

D&Dノベル 砕かれた大地 下 [ドリーミングダーク第2部] (HJ文庫G)

ファンタジーの冒険 (ちくま新書)

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