「Lead&Read Vol.5」に『D&D』リプレイが掲載されます。

 来たる3月28日に、RPGリプレイ専門誌「Role&Roll Extra Lead&Read Vol.5」が発売されます。
 朱鷺田祐介さんの『深淵 第二版』、小林正親さんの『大江戸RPG アヤカシ』といった、僕の大好きなRPGシステムのリプレイが掲載されます。
 そのなかに混じって、
 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のエベロン世界を舞台にしたリプレイ・シリーズの第3部を掲載いただくことができました。タイトルは、ヒロイック・ファンタジーらしく、
 「CHAMPIONS BEYOND THE PLANES」


 表紙は『大江戸RPG アヤカシ』のものですね。

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.5

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.5

 これで、「Lead&Read Vol.1」掲載の第1部「SECERT STRUGGLES IN SHARN」、「Lead&Read Vol.3」掲載の第2部「IN SEARCH OF THE DRACONIC PROCHECY」と続いてきた、エベロン世界を舞台にした『D&D』のリプレイシリーズも、ひとまず完結の運びとなる次第です。


 もちろんイラストは今まで通り吉井徹さんになります!
 ゲラを見ましたが、素晴らしい! あの●●●●や●●●●●(クリーチャー)のイラストがあっ(歓喜)!


 開拓時代のアメリカのようなコーヴェア大陸を飛び出した一行は、未開時代のアフリカやマヤ・アステカを思わせるゼンドリック大陸、さらには神秘のサーロナ大陸へと、冒険の規模は一気にエベロン世界そのものを揺るがすレベルにまで広がります。
 「Secret Struggles in Sharn」では、「塔の街」シャーンでのシティ・アドベンチャーにダンジョン・ハック、「In Search of the Draconic Prophecy」では、「五つ国」を股にかけたワイルダネス・アドベンチャー、さらにはオリエント急行ならぬ「ライトニング・レイル内殺人事件」など、毎回冒険の趣向を変えてきました。
 そして今回の冒険は、物質界のみならず、他の次元界をも巻き込んだレベルに話は発展します。その中核にあるものは、エベロン世界の精髄ともいうべき、そう、ドラゴンと魔法工学です。ドラゴンと魔法工学という二本の柱を中心にしながら、エベロンという世界の〈広さ〉を伝えられるべく努力しました。

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.1

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.1

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.3

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.3

 多元宇宙。
 この世界は、物質界だけではなく、夢の世界、妖精の世界、機械の世界、元素の世界など、別な次元(プレーン)と併存しているという世界観。
 フレドリック・ブラウン『発狂した宇宙』やフィリップ・K・ディック『火星のタイムスリップ』、ジョー・ホールドマンヘミングウェイごっこ』などのSFではお馴染みの設定であり、近年においては哲学のひとつである可能世界論と関わりによって現代思想や批評の文脈でも言及されることが多いこうした概念は、やや形を変えながらも、ファンタジーにおいて確かに存在しています。


 ファンタジー文学における多元宇宙的な世界観は、それこそ『エレコーゼ・サーガ』など、マイクル・ムアコックの「エターナル・チャンピオン」(永遠の戦士)シリーズから続くヒロイック・ファンタジーの伝統に連なるものであるのですが、それをうまく換骨奪胎し、RPGの論理に組み替えることでさらなる奥行きを持たせた多元宇宙としてのワールドセッティングは、実に『D&D』の魂とも言うべき設定です。

黒曜石のなかの不死鳥―永遠の戦士エレコーゼ〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

黒曜石のなかの不死鳥―永遠の戦士エレコーゼ〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

剣のなかの竜―永遠の戦士エレコーゼ〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)

剣のなかの竜―永遠の戦士エレコーゼ〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)

 そうした設定を活かしつつ、今回は、いままであまりリプレイとして活字にされる機会のなかった高レベル帯の冒険に焦点を当てることで、エベロン世界の、そして『D&D』そのもののヒロイックファンタジーの伝統を引き継いだ面白さ、それこそキース・ベイカーがエベロン小説『夜の門』で描いたような次元界の面白さを、なんとかリプレイという媒体で表現できないかと力を尽くしました。
D&Dノベル 夜の門 (ドリーミング・ダーク第三部 完結編) (HJ文庫G)

D&Dノベル 夜の門 (ドリーミング・ダーク第三部 完結編) (HJ文庫G)


 なお使用システムはダンジョンズ&ドラゴンズ』の第3.5版となっています。
 第4版の怒濤の出版ラッシュが始まっているなか、なぜ第3.5版のリプレイなのか、一言説明を添えておきましょう。
 まず、まったく新規に第4版を始めようとする人はたくさんいます。第4版にそのまま移行しているグループも多いでしょう。
 ですが、それは今まで第3.5版をプレイしてきたり現行で第3.5版のキャンペーンを遊んでいたり、第3.5版でやりたかったことをやり尽くしてから、第4版に手を出そうと考えている人たちも多いと思うからですね。もちろん、第3.75版とも言うべき“Pathfinder RPG”を遊ぼうという人もいる人もいるのは事実です。

 
 こうした現状を鑑みると、僕らが第3.5版できりのよいところまで冒険してその記録を残すことで、「3.5版ではこんな遊び方ができたのだよ」と伝えられるような、第3.5版と第4版の架け橋になれたらよいなと願ってこのような措置とした次第です(やや大げさな表現をすれば)。


 僕なりに第3.5版への、そして『D&D』への愛を詰め込んだつもりです。
 プレイヤーの方々も、その想いに答えてくれたように思います。みんな、ありがとう。
 細かなチェック協力をいただきました、冴塚悠さん、DM-SKMさん、ふぇるでぃんさん、Lapinさんには、リプレイをより面白くするためのアドバイスを色々といただきました。
 編集の方にはものすごくご迷惑をおかけしてしまいました。
 しかしそれだけに、充実したリプレイになったことと思います。
 ぜひカーコロが、トルーパーが、ゼヴァリアンが、ヨナが、カナタシュが、アルヴィルダが、いかなる脅威を経てどのような決断を下したのか。そうした冒険の到達点を見ていただければと思います!


 駆け出しのライターにすぎない僕が、雑誌の三分の一を書かせていただくというこの大きな仕事をここまで続けてこられたのは、ひとえに応援いただいた皆さんのおかげだと思っております。
 今後とも『D&D』をはじめとしたRPGの仕事に携わっていきたいと考えておりますので、ご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。