「エンパイアのオウガ」が公開されました。


 エンパイア生まれのオウガの秘密が今、明かされる!
 〈読み書き〉を取得しなくても次のキャリアにつけるのはなぜか?
 ハーフリングとオウガは、なぜ意外にも仲がよいのか?


 というわけで、以前紹介した「エンパイアのオウガ」が、『ウォーハンマーRPG』日本語版公式ウェブサイトでDL開始しましたよ! 無料なので、ガンガンダウンロードしてやって下さいまし!


・「エンパイアのオウガ」
http://www.hobbyjapan.co.jp/wh/support.html


 私はチェックを担当させていただきました。同じくチェック担当の阿李濱秀明さん、そして全体の翻訳を担当された鈴木康次郎さん、どうもお疲れさまでした。


 そうそう、日本語化に向けて、デザイナーのアンドリュー・ロー氏が全面的にイラストを書き換えて下さいましたので、英語版をお持ちの方でも、どうぞご覧下さい。
 アンドリュー・ロー氏は『救済の書:トゥーム・オヴ・サルヴェイション』の共著者の一人でもいらっしゃるのですが、このあたり、『ウォーハンマーRPG』のデザイナーは熱心な方が多いですね。


 そういえば『救済の書』の翻訳の際には、日本在住のRPGデザイナー、デイヴィッド・チャート氏に色々と質問に答えて頂きました。チャート氏のブログを読めば、氏がいかに博学な方かがよくわかると思います。なお、氏はあの“Ars Magica”のデザイナーでもあります。


・チャート・デイヴィッドのブログ
http://www.davidchart.com/nihongo/

救済の書:トゥーム・オヴ・サルヴェイション (ウォーハンマーRPG サプリメント) (ウォーハンマーRPGサプリメント)

救済の書:トゥーム・オヴ・サルヴェイション (ウォーハンマーRPG サプリメント) (ウォーハンマーRPGサプリメント)

 また、「エンパイアのオウガ」については、康次郎さんがブログで運用例を紹介されています。どうぞ、こちらもご参照下さい。あ、ちなみにスケイブン・セッションで敵として出したのは、「エンパイアのオウガ」内の「ナット隊長」だったりします。ご参考まで。

 こちらは、エンパイア生まれのオウガをPCと使用するルールです。ルールだけではなくて、キャリア毎の解説などイメージを膨らませ易い設定も充実しています。



 ただ、PCとしてオウガを導入するのには、バランス面からも、シナリオのベクトル面からも難しいかと思います。割りきって全員オウガのパーティーで戦闘メインのセッションを行なうというのが一番簡単かもしれません。トラブルメーカー及び荒事担当として、既存種族のパーティーに入れるのも面白いかもしれませんが、プレイヤー全員の同意が不可欠でしょうね。




 もっと簡単な使用例として、GMNPCに活用するというものです。データと設定から、黒魔導師の護衛役などの強力なNPCが簡単に作れます。

 初期キャリアのPC3〜4名に対して、同じ程度の経験値をもったオウガは、単体のラスボスと出すのにちょうどよいくらいの強さだと個人的に思っています。



 例えば、以下のNPCなどいかがでしょうか?



名前:“でかぶつ”ヨハン

種族:オウガ 性別:男 年齢:26歳 キャリア:鉱夫

【武技】37【射技】24【筋】46【頑】50【敏】22【知】19【志】39【協】24

【攻】3【耐】20【筋+】4【頑+】5【移】6【魔】0【狂】2【運】0

技能:〈威圧〉、〈大酒飲み〉、〈崖登り〉、〈言語:グランバース語〉、〈言語:ライクシュピール〉、〈察知〉、〈常識:オウガ〉、〈職能:鉱夫〉、〈姿隠し〉、〈動物の世話〉、〈方角案内〉、〈野外生存術〉

異能:《威圧感》、《恐れ知らず》、《強靭》、《剛力》、《ケンカ慣れ》、《特殊武器:両手用》、《方向感知》

鎧:なし

アーマー・ポイント:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0

所持品:グレート・ウェポン(両手用つるはし)、つるはし、すき、覆い付きランタン、灯油

屠殺容易度:困難



 経験値200点で作成したオウガのNPCです。NPCなので【運命点】は0にしており、オウガサイズの鎧なんて珍しい物は入手していないことにしています。

 経験値200点程度で成長させたPC3〜4名用のシナリオ・フックとしては、以下のような感じでもよいかもしれません。ヨハンが働いている鉱山で金脈が発掘され、この欲深なオウガが独り占めを試みており、彼以外の鉱夫は逆らって殺され食料にされるか、もっと金脈を掘るように脅迫されています。鉱山の近くの町に立ち寄った無頼漢たちであるPCは、有力者から「“でかぶつ”ヨハンという乱暴者の鉱夫が、いざこざを起こして鉱山に立て篭もっている。仲間を殺害すらしているらしい。君たちが彼を成敗してくれ」など依頼されます。ヨハンに関しては、あだ名のとおり巨漢の若造であると、オウガであるという事実を隠すのも楽しいかもしれません。

 グレート・ウェポンを振るう【攻撃回数】3のオウガには、PCたちはまったく歯が立たないと考える方もいるかもしれませんが、案外なんとかなると思います。PCがオウガを3名以上で囲んで攻撃した場合、全員攻撃テストに+20%のボーナスを得ます。【武技】31でも、「照準」と「通常攻撃」を行なえば、命中率は61%までアップします。1ラウンドに3〜4名が攻撃すれば2発以上は命中する計算になります。ダメージ値3としても、期待値で9ダメージ。オウガは1発の命中で4点程度の【耐久力】を失います。つまり、3ラウンド目くらいでクリティカル・ヒット表をロールできる可能性が高いのです。一方、オウガは【攻撃回数】3とはいえ、1ラウンドには1発程度しか命中しないでしょう。PC全員が盾をもっていれば、この攻撃は50%程度(【武技】31に盾の+10%、「鈍重」の+10%)で無力化されます。【幸運点】による振り直しも考えれば3ラウンドに1発程度しか実ダメージを与えることができないかもしれません。また、命中したとしても1撃程度ならPCが倒れない可能性も高いです(ハーフリング以外なら……)。このように、事故は起こりうるでしょうが、結構緊迫したバランスの戦闘になるはずです。また、PCのアイディアによって狭い坑道におびき寄せて戦うなどした場合は、オウガが両手用つるはしで戦おうとする場合は−20〜30%のペナルティを与えてもよいかもしれません。もちろん、このうすのろオウガを口八丁で丸めこむのもスマートですね。

 実経験から言えば、ラスト戦闘は敵を多く出すよりも、このような強敵1体を倒す方が盛り上がりますね。PCが敵に囲まれて複数回命中を受けるよりも、PCが1体の強敵を囲んで、その重たい一発に恐怖しながらも、数の暴力で押し切る方がカタルシスは大きいようです。



 単発セッションではなくキャンペーンにするのなら、「鉱山で掘り当てたのは謎の彫像だった」とか、「ヨハンを倒すと太鼓腹の中から謎の装飾品が見つかる。それは、何故かオウガの胃液ですら消化されていない」などを、次セッションの引きにしてもよいですね。


http://d.hatena.ne.jp/Yasujirou/20090812