『ドラゴン・マガジン年鑑』あれこれ。

 『ドラゴン・マガジン年鑑』が日本語で出た喜びを噛みしめております。
 自分が協力した本が出た喜びだけではなく、英語圏にこういう雑誌があり、これで成立しえている。そうした文化の熱さをパッケージングして日本に紹介できたことが、たまらなく嬉しいのです。
 『ドラゴン・マガジン年鑑』プレビューの紹介をこのブログでさせていただいたことがあります。
http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20100521

ドラゴン・マガジン年鑑 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版サプリメント)

ドラゴン・マガジン年鑑 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版サプリメント)

 これがどういう本かというと、アメリカで出ている『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の専門誌「Dragon」の年鑑ベスト選というわけです。いわばSFのアンソロジーみたいに、D&Dの記事のベストが編まれているということですね。

「Dragon」は、ずうっと紙媒体で発売されてきた雑誌で、主にルールや設定面のサポートがなされてきた雑誌でした。「Dragon」でしか書かれてこなかった話題も多いんです。痒いところに手が届くサポート記事、知られざる神々の設定、オーバーパワーで驚いてしまう追加ルールの数々など。


 日本ではじめて「Dragon」が訳されたのは、たぶん「オフィシャルD&Dマガジン」創刊号(1988)じゃないかと思います。「Dragon」80号の記事ですね。「成功への五つのカギ 楽しくマスタリングするために」という記事が訳載されました。*1


 「オフィシャルD&Dマガジン」が1991(厳密には92)年に休刊になってから、長らく「Dragon」の記事が日本語で紹介されることはなかったわけです。かつて、AD&Dのゲーマーからは、「Dragon」を購読してこそ真のゲーマーだ、と言われたこともあります(笑)
 それくらい深い内容。


 で、およそ20年のインターバルを経て、ようやく「Dragon」のサポート記事が、日本にお目見えするということなのです。初っぱなのイーグノフは、AD&D時代からの由緒あるノールのデーモン・プリンスですが、その沿革なども語られて興味深いことしきり。


 ただ、最初に紹介された記事が「楽しくマスタリングするために」という記事であるように、「Dragon」のコンセプトは、D&Dというタイトルをお好みのスタイルで愉しむためのさまざまなメニューを取り揃えつつ、他の人がどうやっているのかを見せてくれるすぐれた案でもありました。


 現在の「Dragon」も、たぶんその精神を受け継いでいて、いろいろ面白い試みをやっています。特に、各記事には「舞台裏」として、一種のデザイナーズ・ノートがついています。これがなかなか、おもしろい。先達の成果を、現世代のデザイナーがどうやって活かそうとしているかがわかります。


 『ドラゴン・マガジン年鑑』には、プレビューでもイーノグフ(ノールのデーモン・プリンス)の情報が載っています。ここからどう想像力を膨らませるか。そうした頭の使い方は、実は各あるメディアの中で、RPGがいちばん相性がいいと思います。もちろん敵を置き換えるだけでもいいんです。
 『ウォーハンマー・コンパニオン』の紹介の時に書いた「インデクシングを促す」という要素は、そのまま『ドラゴン・マガジン年鑑』にも当て嵌まります。加えて、同書にはすぐに遊べるシナリオもついてますよ。
http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20081121/p2


 なお、『ドラゴン・マガジン年鑑』については吉井徹さんのコミックが最良の紹介かもしれません。余裕があれば、国内Dragon誌紹介総覧つくりたいところですね。
 http://bit.ly/bGgPal

*1:厳密には、エイプリルフールのジョーク・ドラゴンが、「ドラゴン・マガジン」1号に紹介されたことがありますが、訳載ではありませんね。