川上亮さんの新刊『人狼ゲーム BEAST SIDE』(竹書房文庫)の解説を担当させていただきました。映画化・漫画化もされた前作『人狼ゲーム』の続篇です。
- 作者: 川上亮
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2014/04/17
- メディア: 文庫
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ところが、ここだけの話、色々と読んでいるとなかにはゲーム部分が物足りないように思われる作品もないではなく、早くにJ・H・ブレナン『モンスター・ホラーショウ』に収められた「ドゥームベインの人狼」で〈人狼〉の考え方を知っていた昔ながらのアナログゲーム・ファンとしては残念に思っていたところ……Role&Roll Stationで購入した川上さんの『人狼ゲーム』に唸らされた次第です。
つまり、著者が秋口ぎぐる名義で『キャット&チョコレート』や『エムブリオマシンRPG』等のゲームデザインで高い評価を得ている、その膂力が『人狼ゲーム』では存分に活かされていたのです。〈人狼〉のルール・システム部分を小説へ丁寧に落とし込む手つきが素晴らしく、加えてゲームならではのドライブ感が存分に表現されています。
前作『人狼ゲーム』(私が確認した時点で6刷!)は「村人」側の視点で、入門編も兼ねた作りになっていましたが、続篇にあたる本作は「人狼」側。いちど〈人狼〉を遊んでみればわかりますが、概して「人狼」側のほうがプレイ難易度は高く、小手先ではとても小説に落とし込めません。しかし、『人狼ゲーム BEAST SIDE』では、予想をはるかに上回る完成度で、ゲームの模様が技巧的かつスリリングに描かれており、リプレイ小説として圧倒的。ゲーム・リプレイを長らく関心分野とし、自分でも書いてきた身としても、多くを学ぶことができました。わずかでもこの分野に関心のある方、読んで損はありません。
私が寄せた解説「新たな時代の〈ロゴスコード〉を求めて」では、ゲームライターとして現場でゲームに関わっていながら、文芸批評やミステリ評論も手がけているという*2、独特の立場ならではのメリットを活かしたつもりです。川上さんに、本文にとらわれず自由に書いてよいと言っていただいたので、ゲームとミステリを架橋することを目指しました。
論理的なパズルとしてのミステリと、双方向的なゲームという分野は、原理的には相性が悪いはずなのに*3、「人狼のゲーム小説としての完成度を高めること」が、「実は、ミステリとしての完成度が高まることにもなる」のはなぜだろうか。そうした疑問を、識者への取材成果を交えつつ、できるだけ理論的に考えてみました。
加えて、〈人狼〉は欧米の伝統ゲームなのですが、過去、その起源が掘り下げて語られた痕跡があまりないことに気づいたので、この機会に踏み込んで調べ、考察してみた次第です。その結果、文学とゲームは歴史的に共通した背景をもっているのではないかという仮説に行き着きました。ゆえに遊戯史的な観点から、そして文学史(ミステリ史)的関心からも読めるようになっていると思います。
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*1:「『マーダーゲーム』デザイナーズノート」もよろしくね
*2:その方がよいなら、逆と見ていただいてもかまいません
*3:ゲーム評論では、ゲームとパズルを分けて考えることが、重要な出発点になっています