日本SF作家クラブ公認ネットマガジン「SF Prologu Wave」にて、片理誠さんの「Swing the sun」が連載開始となりました。これは『エクリプス・フェイズ』小説ですが、抜群の安定感。これがプロの作家の仕事、という貫禄! オススメです。
・片理誠「Swing the sun」(「SF Prologue Wave」)
http://www.prologuewave.com/archives/3521
「これからSF Prologue Waveの『エクリプス・フェイズ』小説を読もうと思うのですが、どの作品から始めたらいいでしょうか?」
――イベントなどで、このような質問を受けることがある。
SF Prologue Waveは「SFマガジン」の「てれぽーと」欄に毎号、紹介文が掲載されている。なかでも、この『エクリプス・フェイズ』企画は、ゲーム雑誌「Role&Roll」でも毎号、紹介されている。
これまでSFに興味があっても、なかなか手を出せずにきた人たちがいる。
それが『エクリプス・フェイズ』をきっかけとして、SFの世界を覗いてみようと考えてくれているわけだ。
あるいはその逆。
SF作家クラブ50周年記念のブックフェアやイベントを通して、SFの魅力を再発見してくれた人たちがいる。
今は、前代未聞のSF短篇アンソロジー・ブームが到来しているが、実のところ、昔ながらの宇宙冒険SFの割合いはそんなに高くないように思われる。
ブルース・スターリング『スキズマトリックス』やアレステア・レナルズ『啓示空間』の系譜に連なる、ポストヒューマンな宇宙冒険SFはないものだろうか?
そういう方々が、『エクリプス・フェイズ』に興味をもってくれている。
むろん、これまで紹介してきた『エクリプス・フェイズ』小説は、いずれも世界の魅力を存分に引き出しつつ、個々の作家の個性が遺憾なく発揮されたものだ。
いずれも甲乙つけ難い完成度にある。つまり、どの作品から読んでいっても大丈夫。
そう、太鼓判を押すことができるだろう。
だが、仮に涙を呑んで一作に絞るならば、今回から連載される片理誠(現SF Prologue Wave編集長)の新作「Swing the sun」が、入門にぴったりな逸品ではないか。
なぜ「Swing the sun」がオススメなのか?
ひとことで言えば、抜群の安定感。そして圧倒的なリーダビリティ。
丁寧な筆致は『エクリプス・フェイズ』世界を理解する格好の教材にもなるだろう。
いま、SF界で最も熱いテーマとも言われる“ポストヒューマン”を正面から扱いながらも、どこか懐かしさを感じさせるレトロフューチャーな雰囲気。
アウトローを描きながら、どこかあたたかみを感じさせる筆致。
野田昌宏編のアンソロジー『太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊』、収録作のなかでは、エドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』のようなスペース・オペラの名作にも通じるだろうか。
そしてアクション、怒濤のアクション!
“日本SFの夏”を代表する作品だとすら思うが、さすがに言葉が過ぎるだろうか。
けれども、片理誠は、この「Swing the sun」に一つの勝負をかけている。
その気迫を、君も体感してほしい。
毎号、多量のSF小説を読みこなす気鋭のイラストレーター・小珠泰之介の手になる、美麗なイラストが付記されるのも見どころだ。
なお、宇宙船にまつわる各種設定、ならびに“ダイソン・リング”の設定には、著者が想像を膨らませた部分がある。
「Swing the sun」に興味をもっていただいた方は、続いて、ジョニィ・スパイス船長が活躍する「黄泉の縁を巡る」に進んでみてほしい。(岡和田晃)
・片理誠「Swing the sun」
http://www.prologuewave.com/archives/3521
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