伏見健二さん、SF Prologue Waveに登場。

 『エクリプス・フェイズ』シェアード・ワールドプロジェクト、順調に展開中です。
 伏見健二さんの10年ぶりの新作小説は、『エクリプス・フェイズ』のシェアードワールド小説「プロティノス=ラヴ」! 直撃世代としては感慨深い。日本SF作家クラブ公認ネットマガジンにて、無料で読むことができます。


 ・「プロティノス=ラヴ」
http://prologuewave.com/archives/2498


 伏見健二さんのセンスは図抜けていて、今はゲームデザインがメインの仕事なのですが、デザインされるゲームは非常に先鋭的です。伏見健二さんがデザイン中の東洋風ファンタジーRPGブルーフォレスト物語』第3版という作品が目指すものは、「近代文学」に対して笙野頼子向井豊昭が行なった闘争とパラレルに見えます。
 『ブルーフォレスト通信3』には、プレイアブル・テスト版が発表されていますので、アクセス可能なのですが、ここには基本となるルールやサンプル・キャラクターが付属し、すぐにキャンペーン・シナリオを遊べるようになっています。一言で言えば、『ワンダー・ローズ・トゥ・ロード』の系譜に連なる、RPGを根底から革新しうるRPGになっています。デザイン・コンセプト、『クラシックD&D』のイモータル以後とも照応しうる亜神をプレイヤーキャラクターとする設定、現代文学とも共鳴する「権現」、交渉クライマックス。どれも非常に斬新です。
 特に、主人公である「亜神」が「権現」として人間界に登場する、その過程をゲーム・プレイヤーが想像力をもって「演じる」というのが重要なモチーフになっているところは重要です。この「権現」の位置づけが面白くて、「権現」が間にあることにより、アニミズム的な「亜神」は知覚・コミュニケーション可能な一種のポストヒューマンとして立ち現れてくるのです*1
 ポストヒューマンという概念は、その出発点から一種の「近代批判」の性格を強く有するものですし、そもそもゲームという枠組みは近代西洋の合理主義的な精神性を強く持つので、批評意識の高いクリエイターは、自然、現代文学と共振することになるのでしょう。詳しくは「向井豊昭の闘争10 『近代文学の終り』を越えて」をご参照ください。

ブルーフォレスト通信3

ブルーフォレスト通信3

*1:この文脈ではこちらのまとめも参考になるかも(http://t.co/hfsQGzBj