からくりさんのプレイリポート(〈トロールの脳漿〉亭、第4回)


トロールの脳漿〉帝キャンペーンの続きです。第4回! 今回もからくりさんの筆になるプレイリポートをご紹介いたします。いつもありがとう! からくりさん!



・第1回
http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20080717/p2


・第2回
http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20081007/p2


・第3回
http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20090620/p2


GM:Thornさん
●“赤ら顔の”ダムロム(見田航介さん), Dwarf, 傭兵(Mercenary)/軍曹(Sergeant)
●オットー・ヘンゲルマン(wilさん), Human, 賞金稼ぎ(Bounty Hunter)/吸血鬼狩人(Vampire Hunter)
●ハリー・ポタリー(トゥルカナじいさん), Human, 見習い魔術師(Apprentice Wizard)/中堅魔術師(Journeyman Wizard)
●マロン・レーム(からくり), Halfling, 家内工業人(Tradesman)/野辺巡視員(Fieldwarden)/賞金稼ぎ(Bounty Hunter)/射手(Targeteer)


(前回までのあらすじ)


ミドンヘイムで進行していた混沌勢力の企みを阻止した我々は、その功績が認められてか厄介払いなのか、連絡が途絶した東征中のボリス・トッドブリンガー伯爵の行方を追う依頼を受けて街を出ることになった。


レギウス、ラルフェリアン、グスタフ、シングリムは別働隊として動くため(ぶっちゃけお休みなので)、ダムロム、ハリー、マロンはすぐさま街道を南下することになったのだが、そこに伯爵の一人娘カタリーナ(16才)が同行するという。彼女は、ミドンヘイム貴族にして隠れスラーネシュ信徒つまり真性の変態、エーリヒ・コーデルに軟禁されていたところ、吸血鬼狩人オットーに救出されて難を逃れたものだ。もはや街に留まるのは危険と、我らと共に偉大なる父親に庇護を求める旅に出るといった次第。



●どこもかしこもキチガイばかり


さて、医者がいなければ話にならないと募集をかけたところ、カール・レオポルドという18回成長の野戦医師がみつかる。


その風体は「愛と誠」の岩清水君といった趣。


「マロンちゃんのためなら死ねる!」と、なにやら我こそは“マロンちゃんファンクラブ”会員ナンバー001との覚悟完了を胸に秘めつつPartyに参加してくる。恐るべしHalflingの世間話!(違


とりあえず負傷治療してくれるなら、頭の螺子が数本ゆるんでいても問題ないので、一緒に行動することに。


結局旅に出る面子は、軍曹ダムロム、魔術師ハリー、射手マロン、医師カール、お嬢様カタリーナ、お嬢様付護衛で吸血鬼狩人のオットーである。




ここでGMがカタリーナのキャラ立てのためにNPC特徴表を振ってみようとの提案…というか強制してくる。


だいたいWarHammerの決定表はろくでもないというのが相場だ。


結果、“不潔の”カタリーナというありがたくない特徴が付随する。変態エーリヒの手のものにみつかるのを恐れて、わざと不潔にしているのだとフォローを入れるものの、いささか苦しい。というか風呂に入れて身綺麗にすると特徴が消えてしまうから、特徴表を再度振りなおしするとのGMの判断だ。


“鼻ほじり”だの“淫乱”だのよりは“不潔”のままでいた方がマシなので、ヒロインの立ち位置にも関わらず最後まで“不潔の”カタリーナで通すことに。誰もがいくら美少女という設定でも不潔なのはやはり駄目だろうとの思いを胸に、そんな悲しみから視線をそらしつつ旅立つのであった。




混沌勢力の侵攻によって荒廃した街道を進んでいき、最初の拠点となるショッペンドルフに到着する一行。


さっさと通り過ぎようとしたものの、人口が激減した(84人!)町というか村で衛兵に呼び止められたのが運の尽き。


この地を預かる男爵と悶着になりそうだったが、カタリーナの礼儀作法で我々がミドンヘイムからの特使であることを理解していただき切り抜ける。


ただし伝染病の噂とシャリア司祭一行の話を聞いたため、毒食らわば皿までと司祭に会う段取りをつける。


村での情報収集で明らかになったところでは、一週間前に旅人を受け入れたら実はナーグルの信徒で疫病が蔓延といった流れらしい。


その後シャリアの司祭一行が訪れて病人の手当てをしているのだとか。


念のためハリーに病封じの魔法をかけてもらったランタンを携えてシャリアの司祭に会いに行くものの、なにやらおかしな雰囲気を感じ取る。


後で分かったことだが、Tome of Salvation日本語版発売決定記念でシャリアの狂信者(不戦の誓いを破っているので魔法が使えない。でも自らはシャリアの御心を体現していると思っているので、不都合はすべては試練に置き換えられる。また彼女たちの行動原理に従わないものはすべてナーグルの手のものだとして憚らない)を導入してみました…ということらしい。


Party一行は仲良くなった村の子供に病封じの蝋燭を授けて宿屋に戻り、その日は宿屋バジリスク亭に逗留する。


すると夜中に火事が起きる。子供たちが火の取り扱いに失敗したのか? と思ったのだが、実はシャリアの司祭たちが疫病蔓延を防ぐために村の各所に放火してまわっていたのだ。


ある意味正しい行いではあるが、そんなことは知ったこっちゃないParty面子である。


「放火魔!」


「ナーグルの信徒め!」


と互いに譲らず、狂信者は元から絶たないと駄目なわけで戦闘になる。


彼女たちはなぜかシグマーの異端過激派が使う炎のフレイル(打撃部に油を仕込むギミックがあり、これに火をつけることで命中時に炎ダメージを追加できる)を装備していて、ヤル気に満ち満ちている。こんなシャリアの司祭は嫌だ。


戦闘はParty有利に進むものの、途中で燃える家から命からがら脱出してきた子供たちを引率しなければならず、消火活動もせねばならず、大変であった。


ハリーはこの戦闘で2回もティーンチの呪い(小顕現)を引き起こし、乳白色の目になったり鳥肌がたったり。なかなかに忙しい。


すべての司祭を倒したものの「我らを手当てしてくれたシャリアの司祭さまに何てことを…」とえらく村人の評判を落とす。いや放火魔だったんだって。さらに翌日子供たちを森に連れて行きTreemanに託すに及んでは、「子供たちをどこにやった」とばかりに詰め寄られ、追い立てられるように村を逃げ出す始末。


だってこんなとこに保護者もなく置いておくわけにはいかんだろうさ。まるで「泣いた赤鬼」の青鬼ごとく、Partyはすべての悪事を引き受けて先を急ぐのでした。




GMがこの騒動で何人死んだかを2d10で決めたところ、14人も死亡したということに。村はかくしてますます過疎化が進むことに。


なお、司祭の装備をしっかりかっぱいだので、カタリーナはレザージャックを装備。


ここらであまりに不潔にしているので水恐怖症という属性が付与される。水が恐くて身体を清潔にすることもできないのだ。ますますヒロインとは程遠い存在に追いやられる。護衛役のオットーからして「君には失望した」との台詞が。




●ハリーの処世術


二週間ほど前にトッドブリンガー伯爵も街道を南下したようで、タラブヘイムまではこのまま街道沿いに進んでいけばよいということであった。


次の拠点ヘルギフ?とかいう町で、ハリーはお仲間の光の魔術師ショーペンハウエルと出会う。彼はいわゆる同期の桜、共に学んだ仲であった。


マロンがみるに鼻持ちならない守銭奴のように見受けられたものの、ハリーは徹頭徹尾ショーペンハウエルに低姿勢
を貫き、いらぬトラブルを招かないように気をつけてるようであった。


「なんか…性格変わってないか?」とまで言われる始末。まあ、今まで経てきた泥臭い冒険を思い起こせば性格くらい変わるというか歪もうというもの。


ともあれここではマロンが代書人の技能を発揮して、わけのわからぬ文書にサインさせられるような羽目には陥らず、逆にミドンヘイムの変態貴族エーリヒ・コーデルを告発する文書を作成して伝令を立てることに成功する。




●タラブヘイムでのすったもんだ


そして無事タラブヘイムに到着したParty一行。


タラブヘイムはその昔の巨大爆発跡地に作られた街で、クレーター内部に市街が広がっている。


ざっくりとした噂を聞き込んで、Halflingのおばさんが経営している宿に投宿する。


やれやれ今日はベッドで休めると一息ついていると、マロンは宿の女将さんに呼び出しを受ける。とくに深く考えずに出かけていくと、なにやら密室でHalflingが集って密談といった趣である。


「私たちはタラブヘイムのハーフリング地位向上委員会のもの」


「えっ、そうなの!? 今までマロン一人だけだと思っていたのに」


マロンが仲間とともに頑張ってるのは、Partyが活躍して有名になればその中にいる自分も有名になり、偉業達成の影にHalfling在り…という印象を人々に与えられるであろうという都合のいい考えもあったのだ。決しておいしいパイが食べられるからだけの理由で動いているわけではないのだ(たぶん。


それはともかく両者は互いに理解者を得た、と思った。


だが、あらゆる思想団体は常にウチゲバによって崩壊するものである。


「同志マロンよ。我々は志を同じくするもの。ついては委員会への会費を納めてほしい」


「ええっ!?」


「ハーフリングであれば当然だよね〜」「だよね〜」「ですよね〜」…おまえらは女子学生のイジメグループか。


マロンには今まで孤軍奮闘、他種族の中たった一人で戦ってきた矜持がある。とてもそうは見えないけど、そうなのである。


だから、会費を払えと言われてそう簡単に頷くわけにはいかなかった。そもそもタラブヘイムでハーフリングの地位がちょっぴり向上したからといって何になるのだ。自分はこれからキスレヴ方面に旅するのだ。ここでお金払ったら、支払い損じゃないか!(爆


「やだ!」


「へ?」


「やだったら、やだ!」


「さては貴様、転向者だな。ハーフリングにも関わらず体制に屈した犬め!」「裏切り者!」「転向者!」「リンチだ、リンチ!」「総括だ!*1」「ポアだ!*2」


「うわぁ〜ん(泣」


傷心のマロンは仲間のもとに戻ると「こんなケッタイな宿には泊まってられない。とにかく出発よ!」と、日も暮れ始めた市街に再び飛び出るのだった。




そして市街をうろついているとスラム街でBlack Lantern亭という、イカニモな宿屋をみつけるのだった。


宿屋の門を叩いて「泊めてくれ!」と声をかける。中からスラムにお似合いの信用がおけそうもない主が出てきて、覗き窓から不審の目を向けてくる。


せいぜいカモネギに見えるように愛想の良い笑い顔を浮かべていると、閂を開けてちょっとだけ扉を開けてくれた。


このとき危険を察知したPartyの何人かは、物陰からスケイブンがゴミタメ砲でこちらに狙いをつけてるのに気づく。慌てて建物の中に飛び込むのであった。




あてがわれた部屋に向かおうとすると階段の途中で“美少女”と出会う。


無論この世界でそういった類のものが普通に出てくるはずもなく、吸血鬼の登場だ。個人的には第二のヒロイン候補としてちょっと期待する。


まあエヴァを例に取るなら、綾波が駄目そうなのでアスカの登場に沸き立つものの、物語だか世界だかの要請でどちらもヒロインとは言えないナニモノカに変じてしまう展開だと、そこまで読むのは達観し過ぎか。


Partyの吸血鬼狩人オットーを見やるものの、この世界の吸血鬼は4種類あり、中でもカーンシュタイン・ヴァンパイア(いわゆるゴシックな吸血鬼)を宿敵としていて、ラミア・ヴァンパイア(エロティックな方面担当?)には興味がないらしい。それでも彼女、小説で有名なジュヌヴィエーヴ嬢(当年とって614歳)はオットーに因縁をつけてくる。


「あなた、私の友人をよくも殺してくれたわね」


「あー、正直すまんかった。でも経緯がどうあれ死んだものは返らんさ」と達観した受け答え。


「…」


幾分気勢をそがれたのか、彼女はPartyに自分の事情を話して協力を得る方向に切り替えた模様。


彼女の話によれば、カーンシュタイン・ヴァンパイアのとある勢力から狙われているらしい。それはブレトニアの聖杯という御宝を盗み出したからなのだそうだが、タラブヘイムの緑原騎士団を率いるホーエンローエ卿はこの地における隠れ吸血鬼の首領(当然のごとくカーンシュタイン・ヴァンパイア)ということで騎士団にも狙われて動きがとれず、街からの脱出を画策しているところとか。嫌だといったもこちらとつるむ気満々な美少女吸血鬼相手にどうしろと。


「街から一緒に脱出するのはいいが、俺たちはトッドブリンガー伯爵を追って川沿いに東に向かう。船の手配をしてくれよ」


「わかったわ。あ、これがホーエンローエ卿の正体を記した証拠書類。渡しておくわ」


翌日、せめて緑原騎士団を足止めすべく、別の騎士団(“有徳の槍”だったか“星明かりの盾”騎士団)に赴いてホーエンローエ卿が吸血鬼だという証拠書類を提出して何とかしてくれるようにお願いしたものの、どうやら騎士団同士の勢力争いに利用されるのではないかといった雲行き。そこに話を持って行く前にウルリック神殿に行ってマロンが事の次第を話したところ、こちらはバーバリアン的思考でもって「野郎、吸血鬼だってよ!」「はっはぁ! そいつぁいいや。この斧のサビにしてくれる」と出入りの準備にかかる始末。さっさと街を出ないとどちらにしても大混乱に陥ることは想像に難くない。その火付け役が北からやってきたParty一行であることは明らかで、すべての責任をひっかぶせて葬るのに適当な人材であることもまた確か。


トンズラするのが吉であった。


だが、宿屋に再集合したときに、宿屋の主人は見知らぬ男相手に「やつらの食事に薬を混ぜて…」などと話している。


Partyで相談した結果、敵の奸計にはまったように見せかけて、宿屋の部屋で敵を迎撃することに。


そしてやってきたのは、なんと完全武装の緑原騎士団8名に指揮官(隠れ吸血鬼)であった。


Playerとして言わせてもらえば、敵全員がAP9というのは如何なものか? GMの正気を疑うラインナップである。(GM註:正気です)


マロンのSlingがd10+4なので、命中しても50%の確率でダメージが通らないのだ。阿呆か。


しかも完全武装ゆえ近接攻撃には盾で受け流しまでやってくる。酷いにも程がある。


戦闘はParty側の初期配置のマズさから、騎士たちが怒濤の勢いで部屋の中まで入ってきて、本来後衛なはずのハリーやマロン、雇われMedicのカールにまで肉薄される駄目展開になる。


とくにマロンは騎士の一撃がウルリックの憤怒となり危うく昇天しかける。


最初美少女NPCとして猫をかぶっていたジュヌヴィエーヴも、騎士団相手に苦戦するPartyに舌打ちしつつ、本性をむき出しにして参戦するのだった。


かなりグダグダの戦闘で、雇われMedicのカールは戦場から離脱しそうになるもマロンの「わたしのために頑張って!」の言葉に「君のためなら死ねる!」と何とかとどまったり、ジュヌヴィエーヴが倒した敵の指揮官をゾンビとして蘇らせて使役したり、騎士にボコボコに殴られてCritical Hit Chartで服が細切れになるサービスシーンを展開してみたり。


一番酷かったのは、ダメージにたまらず窓から逃げ出したジュヌヴィエーヴがJump Checkに失敗して路上で気絶するあたり。


こんなのヒロインじゃねー(本音。美少女吸血鬼の設定を返上すべきだ(本音。他の美少女吸血鬼やってるヒロインに泣いて謝れ(本音。あちこちから駄目だしの声が上がり、まったく小説の記述に顔向けできない不名誉さにヒロイン失格の烙印を押されるのであった。


まるで好きな娘に幻滅した男子中学生のように皆、醒めた目でジュヌヴィエーヴを眺めるのだった。しかも路上の物陰からスケイブンが彼女を下水道に連れ去ろうとはい出してくる。


さすがに不憫に思ったマロンの活躍で彼女がM.I.Aとなるのは押しとどめたものの、正気に返ったら「やっぱり私は凄いわね。あの窮地から運良く脱するなんて」などと戯けたことを抜かすので、殺意が芽生えるのであった。バカは死ななきゃ治らない。というか次は絶対にスケイブンの餌にしてやると誓うのであった。


結局、緑原騎士二人が撤退して戦闘は終了するのだった。




これだけ苦労したのだからもらうものはもらわないとやってられない。


倒した騎士たちの武装をすべて剥ぎ取り、宿屋の荷馬車を徴発して装備を乗っけて、そのまま街を抜けて川沿いの定期船発着所を目指すのであった。


約束通りジュヌヴィエーヴが船の手配をして、共に行動するのはここまでと別れを告げる。


「感謝の印にこれあげるわ。大事にすることね」


そう言って渡されたのは、Magic Dagger, Necrotic Powderという代物。どちらも扱いやすいものではない。


正直、現金の方がありがたい。


「またね」


いやもうあいたくないです。設定だけの美少女吸血鬼なんて願い下げです。


かくしてParty一行はタラブヘイムから東へ向かうのであった。


[追記]


ここまで狂気の展開を繰り広げたため、堕ちたヒロイン・カタリーナは何らかの狂気を獲得しているだろうという話になった。


酷い話である。


しかもオットーがダイスを振ったところ、基本ルールブックではなく堕落の書の狂気を適用することに。


結果、愚かな強迫観念ということで、ボサボサの髪を編んでみたりほどいてみたりを繰り返す特徴が付与されたのだ。


設定上どんな魅力的なヒロインであっても、わずかセッション一回で見る影もなく変わり果てる…それが恐るべきウォーハンマーの世界なのだ。


マロン「だから、私がヒロインなんだってば」


君は生き延びることができるか?(ヒロインとして)


註1:赤軍派ではこう言うらしい。

註2:言わずと知れたオウム真理教での表現。


http://d.hatena.ne.jp/karakuriShino/20090328より