3月8日発売予定のアナログゲーム総合情報誌『Role&Roll』vol.42に、第2特集「オリジナルシナリオを創ろう!」を書かせていただきました。
http://www.arclight.co.jp/r_r/intro/intro42.html
ポイントとしては、「シナリオを作ろう!」ではなく、「創ろう!」としたところですね。
最近、コンベンションで色々な人と話していると、TRPGのシナリオを「創る」ではなく「組む」と言う人が増えてきた気がします。 これはきっと、「創る」という言葉の響きが、ちょっと大げさで、恥ずかしく聞こえるからではないかと思われるのですが、「組む」というと、既存のキットをあれこれ組み合わせる(ちょうどレゴブロックみたいな)イメージがあります。
ただ、実際にTRPGのシナリオを考えるということは「組む」というよりももっと骨が折れる行為であるわけで(笑) いや、形を作ったうえで、「魂」となる部分や「思想」というか「思い入れ」を吹き入れなければならないわけで、じゃないと、画竜点睛を欠いてしまいます。ランダムシナリオジェネレータやシナリオクラフトを使っても、最後はマスターが独自の「味付け」をしなければならないことには変わりがありません。
となると、きちんと「創造的な行為だ」と、多少恥ずかしくても主張してしまってよいのではないかと思うのですよね。
ざっくりと言ってしまうと、コンピュータゲームのハード(マシン)だけ与えられて、ソフトを自作するような行為に近いところがあると思うのですよ、TRPGのシナリオ創作という行為は。で、その「自作」こそが楽しい、といった部分が必ず存在するはずです。
もっとTRPG的に表現すると、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で、「呪文完成型」の魔法のアイテムというものがあります。例えば巻物。これは最後の1行が空白になっていて、使い手が最後の1行を埋めてやって「完成」させることで、はじめて発動が可能になるというもの。TRPGは、こうした「呪文完成型」の魔法のアイテムに近いところがあると思うのです。もちろん、シナリオ創作は巻物のように1行では済まないのだけれども、考え方としては似通ったところがあると思います。
まず、そういう前提があったうえで、基本的に、どのようなシステムにも応用可能な、〈外郭の部分をかっちり決めたうえでTRPGのシナリオを構造的に見ることのできるような広い視野〉を養成することを目論んでおります。こうした構造を理解できる目さえあれば、あとはやりたいコンセプトに合わせて、ふさわしいシステムを選択し、システムのスタイルにあったシナリオを創るなど、いくらでも応用を利かせることができるようになるはずですから。
……この「汎用的な記事」というところが非常に難しかったのですが、きちんと外郭を決めたうえで、シナリオを創作するヒントを、紙幅の許す限りちりばめてみたつもりです。もちろん、シナリオの実例もついています。過去、何度もコンベンションで卓にかけたシナリオの原型となる、最も重要な部分を提示してみました。
初心者の方もベテランの方も、いちどご覧になっていただけましたら幸いでございます。
ちなみに、今回の『Role&Roll』Vol.42では、奇しくも、小林正親さんの『ナイトメアハンター=ディープ』のサポート記事においても、シナリオの創り方が示されています。 まだ見本誌が届いていないので未見ですが、おそらく、こちらの記事は必見でありましょう。
なぜならば、シナリオ創作法におそらく王道はなく、個々のゲームマスターが経験と試行錯誤によって、考えて行くほかはないからです。
ですから、同じ雑誌のうえで、シナリオの創り方が多様な観点から示されるということは、それだけで(私を含む)読み手にとっては刺激的な体験となるに違いありません。
実際のところ、システムだけとってみても、『ナイトメアハンター=ディープ』には面白いところがありまして、それは、探索・人間ドラマ・戦闘といったRPGにおける重大な要素が、「夢」という切り口からバランスよくまとめられているということです。いわば、TRPGというジャンルの特性を俯瞰できるシステムになっているというわけです。
ドイツのボードゲームの特徴として、それまでのシミュレーションゲームなどのゲーム性のおいしい部分をピックアップした、いわゆる「ダウンサイジングした」ということが指摘されますが、『ナイトメアハンター=ディープ』の設計思想にも、似たような良い意味での「ダウンサイジング志向」を感じます。
それゆえ、私は小林さんに同時期にシナリオ創作法を書いていただいたということで、援護射撃をしていただいたような気持ちになっているというわけです。
ダウンサイジングとは違いますが、『Role&Roll』vol.41に掲載された、岡田篤宏さんの『ウォーハンマーRPG』のシナリオメイキングガイドも必読ですね。『ウォーハンマーRPG』は、「ダークファンタジー」という一点から、汎用的にシナリオの題材を咀嚼することが出来るシステムになっております。『ナイトメアハンター=ディープ』とは設計思想が異なりますが、同様に重要なシステムではありましょう。
……と、このTRPGが極度に多様化している時代、汎用記事が難しくなっている時代に、『Role&Roll』にて1年がかりで、「やってみよう、ゲームマスター!」(『Role&Roll』Vol.30)、「うまいプレイヤーになりたい!」(『Role&Roll』Vol.38)、「オリジナルシナリオを創ろう」(『Role&Roll』Vol.42)という三大汎用記事を書かせていただくことができたというわけで、ありがたく思うとともに、ほっとひと安心しております。
これに甘んじず、RPG界の発展のため、さらに尽くしていきたいと思っております。
ご意見やご要望などがありましたら、どうぞアンケート葉書でお寄せ下さい。
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