『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版コンベンション in 東京』の締め切り間近です。

 明日12月5日、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版のプレイヤーズハンドブックがようやく日本語でお目見えします! けっこう感無量や。

ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)

ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)

 しかも12月26日には『フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド』も出る!
フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版サプリメント)

フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版サプリメント)

  • 作者: ロブハインソー,ローガンボナー,エリック・L.ボイド,ロバート・J.シュワルブ,グレッグビルスランド,Rob Heinsoo,Eric L. Boyd,Robert J. Schwalb,Logan Bonner,Greg Bilsland,鶴田慶之,D&D日本語版翻訳チーム
  • 出版社/メーカー: ホビージャパン
  • 発売日: 2008/12/26
  • メディア: 大型本
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 『D&D』第4版の特徴は、とにかくキャッチーで、簡単に憶えられて、かつダイナミックに冒険ができることです。特に1回遊んでみると、簡潔な記述でも練りに練られたルール構成に驚くことしきり。
 だからといってヌルいとかそういうことはまったくなくて、自然とパーティの連携が促され、波乱万丈の展開になる。詳しくは「D&D GAME DAY 2008」のプレイリポートを書き足しておきましたので、こちらをご覧下さい(注:シナリオ「シャドウハントの霊廟」のネタバレあり)。


 ということで、12月21日には早くも『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版コンベンション in 東京』が、ホビージャパンの主導のもとに開催されます。こちらは12月10日が締め切りとなります。
 僕も僭越ながらダンジョンマスターとして参加させていただきます。
 新しい『D&D』の楽しさを、ぜひとも体験してみて下さい!



 以下、旧版を知っている方、あるいは理論畑の方向きの記述です。


 「ロールプレイングゲーム」は「役割」を演じるゲームだと言われています。この「役割」について、上田明さんのブログの説明が非常に的を射ていたので、引用させていただきます。

RPG正統進化


 D&D第4版は、今回のバージョン・アップでロールプレイを楽しませる方向に進化した。


 そもそもテーブルトークRPGは、D&Dによって成立したジャンルだ。D&Dは、『指輪物語』に見られる、剣と魔法の冒険譚が繰り広げられる中世ヨーロッパ風の社会の中で、探険や冒険を生業とする架空の人物1名を、実際のプレイヤー1名が担当して遊ぶ。その人物が負う役割、つまり戦士、魔法使い、僧侶、エルフ、ドワーフ、ハーフリングなどは、それぞれ能力の特徴と出来ることが異なるため、『指輪物語』のようにチーム、RPG的用語で言えば「パーティー」を組み、各々の長所、得意を生かしてパーティー全体で苦難を越えていこうとする。


 そのプレイは、プレイヤーの実際の個性や冒険への考え方、ダイスによる乱数による揺らぎ、ダンジョン・マスターが用意するシナリオなどがかけ合わさって、無数の物語が発生するともいえるほどフレキシブルで、一回性で、そしてパーティーの一体感を楽しむことができる。まさにチームワークが問われるわけで、それが“ハマ”った時の連帯感の心地よさと楽しさは、基本的にプレイヤー同士が敵対する他のテーブルゲームの比ではない。それも、その楽しさは物語を伴い、それもダイスの出目により大抵の場合にはドラマティックなものになっているものだ。


 このように、D&Dがジャンルを確立した点においての“ロールプレイ”とは、プレイヤーが担当するキャラクターの、パーティー内での「役割を演じる」ことである。これは、上位バージョンである『アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ』でも同様で、元の発売元のTSRが、The Wizards of the Coast に買収され、第3版が発表され、第3.5版にマイナー・チェンジされても揺らいでいない。*1


・ルールが促す役割とチームワーク


 この役割分担の理解については、人によってアメリカン・フットボール、バスケットボール、サッカーなどの「全員が同時に行動し、全員が各々独自の持ち場・役割を持ち、各々の役割を果たして勝つ」スポーツ*2や、映画「メンフィス・ベル」を薦める人もいるし、西欧系の人たちの自己責任と自立観に基づくと言う人もいる。


 さて、このパーティー内のロールプレイが最も発揮されるのは、パーティーが危機に直面した場合である。最も端的なのは言うまでもない戦闘だ。ゆえに、2版、3版、3.5版、そして第4版と見てきたとき、最も変化しているのは戦闘ルールだ。それはアドバンスドではないD&Dを「クラシック」として過去のものとした中で、「クラシック」からの進化系としてもあるために、チームワークを引き出すことと、遊びやすくすることを目的としてチューニングされてきた。そして第4版では、その点で高い次元の完成度に至った。それは、ファンタジーRPGであることをルールが体現しているほどだ*3。つまりプレイヤー・キャラクターがコボルト程度の敵しか相手に出来ない存在であっても、そのルールに則ってダンジョンの危険を発見し対処し謎を解き、立ちはだかる敵に剣と魔法を駆使して立ち向かうことで、種族と職業による個性が集まったパーティー・プレイ=ロールプレイが引き出されるのである。そこに世界観や、はたまた世界の危機、プレイヤー・キャラクターの人外化や燃え尽きの危険、キャラクターの性格や癖や人間関係の設定がなくても。


 D&D第4版では、私の見た限りの範囲でだが、けっこう高いレベルに至っても、キャラクターのクラス(職業)による区別は、線引きがかなり明確になっている印象を受ける。



・プラスα「位置の操作」の快感


 さらにD&Dでは、ダンジョンマップとミニチュアによって「位置」を示し、その「位置」に関する操作もプレイの一環としている。他のTRPGは、多くの行動や判定について、タイミングとしての「時」は問うが、D&Dのような「時と位置」ではない。D&Dは「位置」という要素を極めて具体的に設けていることで、工夫する奥深さが備わり、その工夫が上手く機能したときの快感を引き出す。そして第4版では、それがさらに増幅される仕組みがルールとしてパワーアップしている。例を挙げるならば、それはファイターやパラディンが持つ「マーク」能力*4による“防御役”であり、(ファイターではなく)ローグとレンジャーが“撃破役”であり、ウィザード(制御役)とウォーロック(撃破役)の区別であったりする。クレリック、ウォーロードも“指揮役”と呼称されるが、戦闘中の忙しさはいままでにないほどだ。この辺りのダイナミックさ、戦闘の面白さに引き込むギミック等は、プレイしてぜひ体感してほしい。



D&Dで演じるのは「役割」、「性格」は参加者の自由


 一方で和製RPGを遊ぶ層の中には、このようなTRPGのオリジンな意味とは違う方面を「ロールプレイ」している*5文化がある*6。このような点についてD&Dは、ルール的な縛りは設けていない。初期の「クラシック」D&Dにおいても、ファイターらしい物言いや行動、クレリックらしい物言いや行動、といった「らしく振舞う」という指針はあったが、キャラクターの性格や振る舞いについては、アライメントを含め「材料」を提供するだけで、ルールによる定義・規則化はない。繰り広げられる冒険のフレキシブルさと平行して、それらはプレイヤー自身の性格や行動の自由に託されているとも言えるだろう。


 それは、D&Dでの「ロールプレイ」の指すところが、直訳どおりの「役割を演じる」ということで、舞台のお芝居ような「性格を演じる」という重荷を、この遊びに負わせないためだと、私は捉えている*7。



・「性格」は属性や世界を背景に自由に


 とはいえD&D第4版が「性格を演じる」を禁じているかというとそうではない。前述した「らしく振舞う」ことは推奨されている。同時に、D&D第4版では「Forgotten Realms」「Eberron 」という雰囲気が異なる人気2大ファンタジー世界をサポートし、その世界におけるプレイヤー・キャラクターの社会的関係性の中での立ち位置や、行動指針を支える情報が、潮が満ちるように今後提供されていくだろう。性格俳優を目指すプレイヤーでも、その材料には事欠かないのである。


 D&D第4版を遊んだときの印象は、ルールの処理のスマート化に伴って第3.5版と異なったものとなるかもしれないが、実はD&D第4版は、テーブルトークRPGというジャンルを打ち立てた「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の血脈に連なる王道として、まさに「元祖にして最新」を体現しているのだ。


http://d.hatena.ne.jp/Akira_u/20081125#1227630289



注1:ただし3系では、マルチクラスの仕組みのため、ある程度のレベルを越えてマルチクラスすると、それ以下のキャラクターから見た場合には万能に見えるし、多量のサプリメントのために、かなり単体でも戦い抜くキャラクターを作れてしまうという、良くない意味での“煮詰まり感”もある。


注2:日本では、これらのスポーツでは選手全員がボールを追いかけてしまったり、逆に全員が攻めずに防御にまわったりして、勝てないシーンがプロでさえ往々にして見られる。


注3:第3.5版も、この点では完成度が高かったが、第2版の影響は強く、複雑だし煩雑であることを否定できない。


注4:正確には、ファイターのマークは「ファイターのクラス特徴」の「ファイターの標的」により、パラディンのはクラス特徴の「ディヴァイン・チャレンジ」による同名のパワーの行使による。


注5:これはこれで、演劇気質に抵抗がなければ、別の面で楽しく遊ぶことができる。


注6:これらの多くは、TRPGタイトルの良し悪しよりも、プレイする人たちがどれだけ楽しむ能力に富んでいるかが問われる。当然、中の人が面白ければ、なんでも楽しそうなプレイになる。そして多くの場合、商売として「中の人による面白さ」を「商品の面白さ」として見せている。


注7:あえてルール化しようとすれば、ガープスという例がすでにあったが、D&D第4版ではそうしていない。

 もちろん、僕はリプレイを書くぐらい第3.5版が好きだったのですが、同時に第4版の方向性も支持したい。
 パーティ内の役割分担をはっきりさせることで、逆に、演技という意味でのロールプレイが、かなり自由に出てくるのが第4版のスタイルだと思うんですよ。
 上田さんは『クラシックD&D』を例に出して説明されていましたが、『クラシックD&D』は基本的に戦闘のルールがあって、その先にワイルダネス(荒野)の冒険や領地経営のルールなどへ広がっていきました。
 そこには基本的に、キャラクターの内面のルールを規定する法則は一切ありません。にもかかわらず、自然と数字の塊だったキャラクターが、血の通った人間のようにリアルな存在に思えてくるような魔力がありました。その魔力を、『D&D』第4版も引き継いでいるように思えます。
 むしろ、古株の方、「赤箱」を知っているけれどもその後『D&D』から離れて、という方にこそ、この機会に新しい『D&D』に触れていただきたいと思います。