共著『21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊』が出版されます。

 『しずおかSF 異次元への扉』が先月末に出たばかりですが、今月末には共著、批評家集団「限界研」の4冊目の評論集『21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊』が南雲堂から刊行されます。こちらに「現代「伝記ミステリ」論――『火刑法廷』から〈刀城言耶〉シリーズまで――」を掲載いただきました。
 20世紀初頭から、現代に至る「伝奇ミステリ」を通史的に追い、その変遷をたどる長篇評論です。見どころは『薔薇の名前』の位置づけでしょうか。すなわち日本のローカルな「伝奇ミステリ」の文脈を『薔薇の名前』を中心に挟むことで、できるだけ「開かれた」ものとすることを志向しております。また、巻末のブックガイドでも『金田一少年の事件簿』、『鉄鼠の檻』、『人狼城の恐怖』を担当させていただきました。
 この本は、なかなか衝撃的な題名になっておりますが、前提となる状況論と問題意識は、飯田一史さんによる序論をお読みいただくのが早いでしょう。南雲堂の公式サイト(http://www.nanun-do.co.jp/mystery/book01-3-2.html)から読めます。

21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊

21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊

序論 新本格ミステリの衰退期になすべきこと(飯田一史)
第一部 21世紀的生とミステリ
 ・二一世紀探偵小説と分岐する世界(笠井潔
 ・「変わってしまった世界」と二一世紀探偵神話―清涼院流水舞城王太郎論(飯田一史)
 ・ビンボー・ミステリの現在形―「二一世紀的な貧困」のミステリ的表現を巡って(藤田直哉
第二部 形式性の追求とミステリ
 ・推理小説の形式化のふたつの道(蔓葉信博
 ・検索型ミステリの現在(渡邉大輔)
 ・21世紀本格2―二〇〇〇年代以降の島田荘司スクールに対する考察から(飯田一史)
第三部 ミステリ諸派の検討
 ・「新本格ガイドライン、あるいは現代ミステリの方程式(蔓葉信博
 ・叙述トリック派を中心にみた現代ミステリの動向と変貌(小森健太朗
 ・終わりなき「日常の謎」 米澤穂信の空気を読む推理的ゾンビ(海老原豊
 ・現代「伝奇ミステリ」論―『火刑法廷』から〈刀城言耶〉シリーズまで―(岡和田晃
 ・「謎解きゲーム空間」と〈マン=マシン的推理〉―デジタルゲームにおける本格ミステリの試み(藤田直哉
結語 本論集の使用例(飯田一史)
ポスト新本格のためのブックガイド50選