『ブラウン神父の無心』をご恵贈いただきました。

 ちくま文庫さまより、チェスタトンの新訳『ブラウン神父の無心』をご恵投いただきました。南條訳は『木曜日だった男』も読んでいたので、『ブラウン神父』ものの新訳を心待ちにしておりましたが、期待をまったく裏切らない出来でした。解像度が段違いに思えるのです。重ねて言えば、『木曜日だった男』よりも『ブラウン神父の無心』のほうが新訳の切れ味が上がっている気すらしてくるのだから不思議なものです。カー、クイーンと古典ミステリの新訳が相次いでいますが、実は今回のチェスタトンの新訳が一番出た意義が大きいと思う次第。諧謔に満ちた原文の難しさが相当なもので、かつ20世紀の病理を予見的に描いていたものでもあり、一文一文の文意が明瞭に見えるようになって快哉を叫びたくなります。これをプロデュースした編集Sさんのセンスに脱帽。チェスタトンの破壊力は凄いものです。

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)