大西赤人責任編集の文芸誌「季刊メタポゾン」8号に「『棄民』とは、『想定外』の産物なのか?――米田綱路『脱ニッポン記』を読む」という書評記事を寄稿させていただきました。
(画像は公式サイトより)
〈メタポゾン〉は、作家の大西赤人さんが責任編集をつとめる雑誌で、文学と状況へ等しく眼差しを向ける、イマドキ珍しい雑誌です。拡散を辿る言葉に抗し、あえて「紙の雑誌」という形でオルタナティヴを志向する骨太のコンセプトの雑誌で、今回の8号で刊行2周年になります。
この8号から新しく「連作評論」という連載が始まります。日本SF評論賞受賞者たちの仕事を、定期的に掲載いただけることになったのです。
今号は宮野由梨香さんが「人類は、季節繁殖の夢を見るか?」、石和義之さんが「空気と実存」と題し、論考を寄稿しています。前者は萩尾望都『銀の三角』、後者は宮内悠介『盤上の夜』に絡めた批評です。
私は書評枠を担当、『脱ニッポン記』という素晴らしいノンフィクションについて論じました。同書の下記サイトから「まえがき」が読めます。この本が採用する「人文的ジャーナリズム」の可能性は、もっと注目されてしかるべきです。
http://www.gaifu.co.jp/books/3701/maegaki.html
- 作者: 米田綱路
- 出版社/メーカー: 凱風社
- 発売日: 2012/09/30
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ところで「メタポゾン」8号、荻上チキさんのエッセイが素晴らしい。マスコミ報道がルーティン化していて「裏取り」の不足を改善するのが難しい状況があるなか、それを叩く2ちゃんまとめサイト等はさらにひどく、倫理的な意識がまるでなく、まるでオルタナティヴたりえていないと指摘しています。勇気ある発言でしょう。2ちゃんまとめサイトを批判するという行為が、なぜ勇気あるものかというと、これらが「炎上」を煽るものとして 使われた事実を指摘しているから。顕名と匿名をうまく使って「炎上」させれば、特定の人物の評判を下げることは難しくありません。そこに「根拠」は不要なのです。だから、ネット上にはびこる匿名の言説を、絶対に鵜呑みにしてはいけません。「裏を取る」手間こそが受け手の「倫理」だと思ってください。インターネットの特性上、デマを「多数派」の言葉と見せかけたり、根拠のない個人攻撃をすることは、まこと容易なのです。