「伊藤計劃以後」とは何か

※本稿は2013年10月5日に開かれたトークイベント「限界研【編】『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』刊行記念 未来を産出(デリヴァリ)するために 〜新しい人間、新しいSF〜」の来場者に配布された資料の再掲です。イベント自体は満席で追加の席も用意されたほどの盛況でした。前掲書および『「世界内戦」とわずかな希望』に収められた岡和田の論考「「伊藤計劃以後」と「継承」の問題」の文脈を理解するための資料としてご利用下さい。

伊藤計劃以後」とは何か  岡和田晃 (2013年10月5日)


●最初に使われたのは……。


SFマガジン」2011年7月号の「特集:伊藤計劃以後」

S-Fマガジン 2011年 07月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2011年 07月号 [雑誌]

 →「伊藤計劃以後」の明確な定義はなされず。
かわって批評の重視、ゲーム・映像メディア・演劇等、トランスメディア性の重視。あるいは日本SF新人賞・小松左京受賞者たちの再評価。


伊藤計劃を読み直す


→短篇の重要性

「The Indiffernece Engine」、「From The Nothing, With Love

The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)

The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)

●先行世代の読解


神林長平(1953年生)「いま集合的無意識を、」→伊藤計劃の「痛み」の誤読。


山野浩一(1939年生)「地獄八景」(『NOVA10』所収)→「伊藤計劃以後」に触発され、死の先を描く。

●「伊藤計劃以後」を成立させる重要な条件


→「メタポゾン」7号で岡和田が論じた「想像力」の脱政治化への批評性

季刊メタポゾン 第7号(2012年 孟秋)

季刊メタポゾン 第7号(2012年 孟秋)

1:世界史的な視野をもって、紛争に代表される「例外状態」と現在を繋ぐこと。
2:世代間の格差を(過去の作品を参照するなどして)批評的に埋めようとすること。
3:サイバーパンク以後の、テクノロジーや情報環境への批判意識。


●「伊藤計劃以後」の作家たち


円城塔が完成させた『屍者の帝国』(2012)

宮内悠介『盤上の夜』(2012)、『ヨハネスブルグの天使たち』(2013)

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

飛浩隆「自生の夢」(2009)

八杉将司『Delivery』(2012)、「私から見た世界」(2013)

伊野隆之『樹環惑星 ―ダイビング・オパリア―』(2010)、「ザイオン・イン・アン・オクトモーフ」(2012)

上田早夕里『華竜の宮』(2010)

樺山三英『ゴースト・オブ・ユートピア』(2012)、「無政府主義者の帰還」(2013)

片理誠『エンドレス・ガーデン』(2010)、「決闘狂」(2013)

佐藤哲也『下りの船』(2009)、「ノベル氏」(2011)、「テラシティ」(2011)

酉島伝法『皆勤の徒』(2013)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

長谷敏司『あなたのための物語』(2009)、『BEATLESS』(2012)

藤井太洋「コラボレーション」(2012)、『Gene Mapper 完全版』(2013)

仁木稔『ミカイールの階梯』(2009)、「はじまりと終わりの世界樹」(2012)

松本寛大『妖精の墓標』(2013)

山口優『シンギュラリティ・コンクエスト』(2010)、『アルヴ・レズル』(2013)

吉川良太郎吉川良太郎「黒猫ラ・モールの歴史観と意見」(2013)


※Web掲載にあたって、一部の誤記を修正した。


ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF

ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF

「世界内戦」とわずかな希望〜伊藤計劃・SF・現代文学 (TH Series ADVANCED)

「世界内戦」とわずかな希望〜伊藤計劃・SF・現代文学 (TH Series ADVANCED)