「SFマガジン」2014年2月号に上田早夕里『深紅の碑文』論を書きました。

 すでに発売されている「SFマガジン」2014年2月号に、あの『華竜の宮』の姉妹編たる上田早夕里の新刊『深紅の碑文』を論じた「空間秩序と『深紅の碑文』――悪夢を想像する力」を掲載いただきました。
 『深紅の碑文』は、圧倒的なスケールと、それを空虚な伽藍に終わらせない描写の密度が、みごとに融合している大傑作です。あまりの上手さに舌を巻きました。拙稿ではその射程を、カール・シュミット『海と陸と』、およびピーター・パーラ『無血戦争』を用いて、つまり地政学と戦略論の知見を活かしながら、できるだけ厳密に考えるよう努めました。
 『深紅の碑文』は素晴らしい傑作ですが、それを先行作である『華竜の宮』のみならず、「魚舟、獣舟」、「完全なる脳髄」、「リリエンタールの末裔」という《オーシャン・クロニクルズ》シリーズも踏まえた総合的なパースペクティヴから論じております。
 なお、今回の「SFマガジン」では、長山靖生さんに拙著『「世界内戦」とわずかな希望』を書評欄で取り上げていただきました。「SFと現代・現実との関わりに一石を投じる一冊」との見出し。好意的に読んでいただき、感謝します。

深紅の碑文 (上) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

深紅の碑文 (上) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)