児童文学・ミステリ作家の齊藤飛鳥さんによる「廃都コッロールのトークティパス」リプレイ

 児童文学・ミステリ作家の齊藤飛鳥さんによる『コッロールの恐怖』関連リプレイですが、続いて掲載するのは「廃都コッロールのトークティパス」(「Role&Roll」Vol.183収録)、つまり『コッロールの恐怖』のスピンオフ(前日譚)です。

 「Role&Roll」Vol177の「魔法の酒樽を取り返せ!」とも連続させてプレイできる作品ですので(齊藤飛鳥さんのプレイリポートはこちら)、共通したキャラクターが使われています。

『屈強なる翠蓮とシックスパックの魔都コッロールのトークティパス』
~『魔都コッロールのトークティパス』リプレイ~

著:齊藤飛鳥 

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Role&Roll Vol.183

Role&Roll Vol.183

  • 発売日: 2019/12/17
  • メディア: 大型本
 

 
0:屈強なる導入

あたしの名は〈屈強なる〉翠蓮。
黒髪色白黒目ロリ体型がチャームポイントの人間の戦士ネ。
数々の冒険を乗り越え、気がつけば耐久度が30で体力度が15のレベル3になったから、ますますの二つ名どおりヨ。
知性度は、あいかわらず9と低めのままだけど、気にしないネ。
武器は、前の冒険で手に入れた〈モンゴーの歪みの剣〉。
うっかり自分を攻撃する危険もあるけど、使える剣だから許すヨ。
防具は、冒険で稼いだお金で新しく買ったキルテッド・ファブリック(完全鎧)。
そして、仲間は……。


1:屈強なる幕開け

「今日こそ兄貴の〈青蛙亭〉に寄って、酒を飲もうぜ。前と違って冒険が終わった後だから行かねえ理由はねえよな?」
野太い声で強引にあたしを引きずる、岩悪魔のシックスパックが、あたしの冒険の仲間だ。
飲んだくれのアル中岩悪魔で、酒が切れると手当たり次第かつ見境なく攻撃をしてくる、迷惑野郎ネ。
こんな野郎とまともに付き合えるのは、あたしくらいだから、今も一緒に組んでいる。
「〈青蛙亭〉だけは勘弁ネ~。故郷のじいちゃんが青蛙を食べて死んだから縁起悪いヨ~」
あたしは、シックスパックに抵抗しながら、嘘をつく。
前に〈青蛙亭〉で料金を払えず、店主に叩き出された苦い思い出があるから、絶対に行きたくないネ!
「おめえのじいちゃんはまだ生きていて介護受けているとこの前言っていただろうがよ!ほれ、我が親愛なるクォーツ兄貴の経営する〈青蛙亭〉に到着だぜ!」
シックスパックは、あたしの嘘をさっさと見破ると、容赦なく〈青蛙亭〉まで引きずりこむ。
店内は、ストゥールの残骸が散らばり、まるで酒が切れたシックスパックが暴れた後のような荒らされっぷりだった。
もし、シックスパックと一緒にいなかったら、こいつが犯人だと思ったところサ。
シックスパックが言うには、この店は“青蛙の守り”で守られているからこんな風に荒らされることはないらしいネ。
不思議がるシックスパックと一緒にあたしも考えたけど、ちっともわからない上、窓がパリンと割れて見慣れないクリーチャーが現れたヨ!
あたしらは、すぐに戦いを始めた。


2:屈強なる遭遇

そのクリーチャーは、翼付きのっぺらぼうと言った姿で、店内をはばたいていた。
うぅ、アル中岩悪魔もなかなかひどい外見だけど、あいつは何だか薄気味悪いヨ!
あたしの精神安定度が1下がる。
「あの翼付きのっぺらぼうめ、飛び回っているから、倒しにくいったらないネ!」
「しかも素早いぜ、翼付きのっぺらぼうの奴!」
だいぶ手こずらされたけど、あたしらは何とか翼付きのっぺらぼうに勝利したヨ。
「ナイトゴーント……僕の名前はナイトゴーントです……」
何か、翼付きのっぺらぼうが最期につぶやいたけど、聞き流すネ。
戦闘が終わると、シックスパックがカウンターの奥に落ちていた手紙を見つけて読み始めた。
それは、シックスパックの兄のクォーツの置き手紙で、“青蛙のお守り”を奪われたから〈青蛙亭〉の地下にある迷宮に、腕ききの雇われ戦士を連れて潜っているとのことだったヨ。
「雇われ戦士の名前が〈幸薄き〉ジークリットとなっていたけど、ジークリットちゃんは魔術師だったネ?」
ジークリットの奴は、確かガレー船の奴隷になったはずだぞ?」
あたしとシックスパックは、共通の友人である〈幸薄き〉ジークリットちゃんが「波瀾万丈すぎ!」と言いたかったけど、不意に嫌な予感がして、あたしらは割れた窓の外を見た。
そこには、赤いローブが胡散臭い3人の僧侶団がいたネ。
「また戦闘かよ!」
「面倒くさいけど、やるしかないヨ!」
あたしらが迎撃態勢に入ると、僧侶団は襲いかかってくる。
「カエル面の岩悪魔が帰ってきたか!」
僧侶団の一人が、シックスパックを兄のクォーツと見間違えて叫ぶ。
「どこに目をつけているんだ、てめえ!俺のどこがクォーツの兄貴に似ているんだ!?俺様の方が、目元涼やかで鼻筋の通ったいい男だろうがァァーッ!」
シックスパックの怒りはすさまじく、失言した僧侶は瞬く間に血祭りにあげられたネ。
残り二人の僧侶を二人がかりで倒した後、シックスパックは腕組みをした。
「人間は、俺様とクォーツの見分けがつかねえみてえだ……」
「自分が兄そっくりのカエル面だと認めろヨ」
「このままだと、またバカな僧侶どもに兄貴に間違えられて狙われちまう。どこかに行かねえと……そうだ!」
頑なに自分が兄そっくりだと認めないシックスパックだったけど、急に何か閃いたようネ。荒らされていない地下蔵の扉へ駆けて行ったヨ。


3:屈強なる穴蔵

「〈青蛙亭〉には、クォーツ兄貴が行った迷宮以外にも通じる複数の穴蔵があるんだ!そこへ避難しようぜ!」
「でも、鍵がかかっているネ」
しかも、錆びていてかなり重い。
「何を言っているんだ。こういう時こそ〈屈強なる〉翠蓮の出番だろう?」
「わかったネ。力まかせに開けるけど、壊れた場合はちゃんとおまえの兄貴に事情を説明しろヨ?怒られるのは、ごめんサ」
あたしは、念を押してから、扉を開ける。
きしんだ音と共に、ほこりくさいこもったにおいが扉の中からもれてきて鼻をつく。
あたしは思わず顔をしかめたけど、シックスパックは顔を輝かせたヨ。
「秘蔵の蜂蜜酒がたくさんあるじゃねえか!」
扉の向こうは、アル中飲んだくれの天国、別名酒の貯蔵庫だったネ。
黄金色の蜂蜜酒は、見るからに甘くておいしそうで、今回ばかりはシックスパックの気持ちがわかったサ。
「うめえ!一緒に飲もうぜ!」
「賛成ネ!」
あたしは、蜂蜜酒を四本もらい、そのうちの一本を飲み干した。
甘くておいしい蜂蜜酒は、故郷の母ちゃんが作ってくれたお菓子と同じ味がして、癒される!
おかげで、さっき減ったあたしの精神安定度が全快したヨ!
すっかりいい気分になったあたしらは、貯蔵庫に保管されていた二週間分の食糧とそれを乗せる荷車を見つけて、ちょうだいすることにしたネ。
これだけあれば、遠くに避難できるヨ!
すると、荷車を引いて、外に出ようとしたところで、地下蔵の奥に意味ありげに横穴が開いているのを見つけたのだった。


4:屈強なる未体験領域

「シックスパック、この横穴はどこへ通じているネ?」
あたしがきくと、シックスパックは行ったことがないから知らないと、にべもなく答えた。
それから、地上と地下道のどちらかを選んで進もうと提案してきた。
シックスパックもろくに知らない地下道より、地上を歩いて行った方がましネ。
あたしらは、荷車を引いて店の外に出た。
いつの間にか、とっぷりと日が暮れて夜になっていた。
あたしらが根城にしている、カサールの〈トロールの脳漿亭〉が、暖かい布団にポカポカお風呂と、ファビュラスな美人の恋人のジーナをそろえて、あたしの帰りを待っているから、早く帰るのが一番ネ。
そんなことを考えつつ、荷車を引いて歩き出したところで、頭上から聞いた覚えのあるはばたきの音がしてきた。
「翠蓮、また翼付きのっぺらぼうだ!」
「しかも、翼付きのっぺらぼうの奴、今度は大量発生してやがるヨ!」
あたしらがうろたえているすきに、翼付きのっぺらぼうはあたしらにつかみかかってきた。
「ナイトゴーント……僕らの名前はナイトゴーントです……」
未知のクリーチャーどもは、あたしらのネーミングが気に入らないのか、名乗ってくる。
でも、どんどん上空へと舞い上がっている状況で自己紹介されても、ちっとも頭に入らないネ!
〈青蛙亭〉があんなに小さくなって…ちょっと意識が遠のいたけど、意識が戻ったら戻ったで、宇宙空間にいるって、上空高く登りすぎヨ、翼付きのっぺらぼうども!
嗚呼……星が近いネ……。
トロールワールドをすべて俯瞰できる日が訪れるとは思いもしなかったヨ……。
精神安定度が減っていくのを感じたそばから、翼付きのっぺらぼうどもは、とどめのようにあたしらを宇宙の「何か」に合わせた。
戻っていたあたしの意識は、またも途切れたネ……。


5:屈強なる頼まれごと

気がついたら、トロールストーン山の中で岩トロールどもに囲まれているという、とんだ目覚めを果たしていたヨ!
前にモンゴーの塔で酒を飲んで意識が飛んで目覚めた時も、とんだ目覚めだと思ったけど、今回はそれに匹敵するネ!
シックスパックの大事な魔法の酒樽と、〈青蛙亭〉から調達した食糧の積まれた荷車が無事なのはいいけど、あたしらは無事にすみそうにないヨ!
と、あたしが心配したそばで、シックスパックが岩トロール達に、カルギッシュ語でしゃべり出した。
いきなりあたしの知らない言語でしゃべり出したから、酔いが覚めたのかと警戒しまくったけど、岩トロール達をひれ伏させた後でまたいつもの言語であたしに語りかけてきたので、あたしの勘違いだとわかったネ。
「いったい、岩トロール達に何て言ったヨ?」
あたしが尋ねると、シックスパックは自分達は神の使いだとはったりをかましたとの答えただった。
「魅力度13の女戦士を神の使いと信じこませたのはともかく、よく岩トロールどもは、小汚い飲んだくれ岩悪魔を神の使いだと信じたネ」
「岩悪魔きっての美丈夫と謳われる俺様の魅力がわからねえとは、かわいそうに……。まあ、個人の趣味や嗜好はさておき、俺達を宇宙の彼方から連行してきた、あのナイトゴーントどもを岩トロール達も見たんで、俺の話を信じてくれたってわけよ」
つまり、シックスパックは、宇宙から地上に戻ってくる間の一部始終を見ていても、精神安定度が揺るがなかったことになるヨ!
酔っぱらいの精神力、けたはずれすぎネ!
「あと、宇宙のお偉いさんに頼まれ物をしたんだ。『北のコッロールにいる我が眷属にこの金属の小箱を届けてほしい』ってな」
どう考えても、宇宙のお偉いさんなんて存在と出会ったり、会話したりしたら、精神安定度なんかあっという間に消し飛ぶのに、シックスパックときたら、頼まれごとまで引き受けているヨ!
「それと、小箱の中は決して見るなとも言っていたぜ。そうそう、お礼は眷属がしてくれるってよ!早いところ用事をすませて、お礼をたんまりもらって〈トロールの脳漿亭〉で飲もうぜ!」
「おまえの精神安定度、実は無限大だろ!?」
トロール達に道案内させて、意気揚々と歩き出すシックスパックの後頭部に、あたしは思いの丈をぶつけたのだったヨ。


6:屈強なる道中

あたしらは、岩トロール達の道案内で、トロールストーン山の比較的平坦な道を進んだネ。
でも、この「比較的」がくせものサ。
崖とうねりまくった下り坂の連続で、危うく足を滑らせそうになって、肝を冷やしたヨ。
やっとの思いで下りたトロールストーン山のふもとは、かつては砦だと思われる廃墟が建っていたネ。
「何かよ~、こういう廃墟の地下室には酒蔵が眠っていそうだから、ちょっくら寄ってみねえか?」
「うるせえ。ただでさえ、てめえが勝手に宇宙のお偉いさんから引き受けた頼まれごとにつきあってやっているんだ。寄り道して、こっちの貴重な時間をこれ以上削ったら、額に肉の字を刻みこんで、てめえの自慢のハンサム顔を台無しにしてやるヨ」
あたしの真心が通じたのか、シックスパックは先を急いでくれた。
数日後、さらに道を下ったあたしらは、森の一角に出たネ。
何て森なのか知りたかったけど、あたしの知性度では無理な相談だったヨ。
「ここはどこかネ?」
「さあな。俺が知りてえくらいだぜ」
あたしらが森の中を歩いていると、3人の泥男が現れたヨ!
「翠蓮、森に棲む泥男にはロリ好きが多いときいたことがある!おめえの魅力で奴らに交渉すれば、戦いを避けられるかもしれねえ!」
どの筋から入手した情報か知らないが、あの噂の恐怖のコッロールへ行く前に無駄な体力や耐久力を減らして死にたくないから、ここはシックスパックの言うとおりにするネ!
あたしは、泥男達の方へ一歩踏み出した。
「あー……泥男さん達。あたしらは、ただの届け物をしに行く途中の冒険者ヨ。ここを通してもらえたら、ありがたいネ」
泥男達は、あたしとシックスパックをじっと見る。
それから、三人で相談を始めた。
「かわいそうに……まだあんな若いのにアル中の岩悪魔に引っかかってしまって……」
「これから先の長い人生で苦労を重ねていくであろう若者に、今のうちから苦労を増やしたら気の毒だよ」
「まして、あんないたいけな女の子だからね。さあ、お嬢さん。急ぎの用があるなら、お行きなさい」
シックスパックの目論見は、思いきりはずれていたけど、あたしらと泥男達は戦闘にならずにすんだ。
泥男達の人情で、あたしらは先に進めたけど、森があまりにも深くて迷いそうになったヨ。
そのタイミングで、呪われた遠吠えが聞こえてきたので、あたしの精神安定度はまた1減少した。
そろそろ、黄金色の蜂蜜酒を飲んで精神安定度を回復させた方がよさそうネ。
「悠長にしている場合じゃねえ!こいつは魔王や邪神の間で人気No.1犬種である災厄の猟犬バーゲストの遠吠えだ!暗くなる前に森を抜けねえと命がねえぞ!」
シックスパックは、自分の命に関わる時は絶対に嘘をつかない。あたしは、すぐにシックスパックの言葉に従い、バーゲストに追いつかれないように、さっそく隠密行動を取ったサ。
それなのに、追いつかれてしまったヨ!
不幸中の幸いで、まだ暗くなりきってないから、バーゲストは本来の力を出せてないみたいネ。
だったら、勝てるかも!
あたしらは、それぞれの武器をかまえた。


7:屈強なる仲間

結論を言うヨ。
あたしらは、バーゲストから逃げきれたネ。
これは、あたしの作戦勝ちだったヨ。
まず、あたしのターンはひたすら攻撃。
そして、シックスパックのターンは、ひたすら呪文《千鳥足》を唱えさせたネ。
おかげで、シックスパックの魔力度はがっつり減ったけど、あたしらはたいしたダメージもなく、森の開けた一角まで逃げられたヨ。
「こんなに呪文を使ったのは、初めてだぜ……ふぅ、酒でも飲……む……か」
「すごくきれいなグリフィンがいるネ!」
酔いどれ岩悪魔が、酒を飲むのも忘れて魅入られるほど、その深い藍色の羽毛を持つグリフィンは美しかったヨ。
見とれるうちに、あたしの精神安定度は全回復した。
そこへ、突然グリフィンが目を開けたネ!
「夜の申し子、ブルー・グリフィンがロリかどうかは存在が伝説すぎて情報がねえ! 気をつけろ、翠蓮!」
「気をつける必要はないぞよ。わらわは、小さきものたちに危害を加えるはしたなき真似などいたさぬ」
あたしが行動に出る前に、ブルー・グリフィンが、どうして自分がここにいるのか、あたしらに説明してくれた。
それは、怪しげな宇宙船に奪われた自分の卵を取り戻すための戦いの記録でもあったヨ。
卵を取り戻すためとは言え、たった一頭で怪しげな宇宙船に立ち向かった話は、涙なしでは聞けなかったネ。
その後、宇宙船がコッロールの方へ不時着していくのが見えたと聞いて、あたしは目をしばたかせた。
「コッロールなら、これからあたしらが頼まれ物を届けに行く先サ」
「そうなのか?それは、ちょうどよい。頼む。わらわの大事な卵を取り戻してほしいぞよ」
誇り高いブルー・グリフィンが、生まれてくる我が子を守りたいがために、アル中飲んだくれ岩悪魔にまで涙ながらに頼む姿……母の愛は美しくも強いネ!
その愛に、心があるのかかなり怪しい酔いどれ岩悪魔すら、目に涙を浮かべたヨ。
「その依頼、引き受けたぜ!」
あたしも、異論はない。
すると、ブルー・グリフィンはあたしを背中に、シックスパックをおなかの袋に入れて夜空に舞い上がったネ!
そのまま、あたしらは空からコッロールへと続くカザン街道まで連れて行ってもらえたヨ。
そこへ、ウルク2体が現れた!
「わらわも戦うぞよ」
「とても心強いネ!」
「では、さっさとやっちまうか!」
ブルー・グリフィンが仲間にいてくれたおかげで、バーゲスト相手にしていた時とは違って、あたしらは快勝!
街道を西へ西へと進んで行った。


8:屈強なる廃都

西へ進むうちに、ついに廃都コッロールの城門が見えてきたヨ。
地上に見えるのは廃墟のみだけど、地下にはヴァンパイアどもが眠っている、呪われし都ネ。
奴らと出くわして血を吸われたら、ヴァンパイアになって、下僕にされるとか。
しかも、普段は都の中にたくさんの〈スケルトン・マン〉という、アンデッドどもが暮らしているそうだ。
どう転んでも、怖すぎヨ!
あたしが縮み上がっていると、血を吸われる危険のない岩悪魔は、遠巻きにコッロールを見ながら、あごに指をかける。
「さて、どこからコッロールに入ったものか……? 処刑場へと続く東門か、〈スケルトン・マン〉のキャンプがある南門か、〈スケルトン・マン〉の住居が点在する西門か……」
あたしも、恐怖に震えてないで、考えてみたネ。
今のシックスパックの選択肢の中で、唯一〈スケルトン・マン〉に会う確率が低そうなのは、処刑場だ。
だったら、東門から入るのが一番サ!
決断すれば、後は早い。あたしらは、東門からコッロールに入ったヨ。
処刑場に到着すると、生贄の変わり果てた姿が悪趣味なディスプレイのようにあったネ。
カラス達には、かっこうのビュッフェらしく、カアカア鳴きながら群がっているヨ。
生贄達を見ているうちに、あたしの耳元にたくさんの声が聞こえてきた。
「こっちだ、翠蓮……て、首が360度回ってやがるだと!?」
「どうもゴーストに取り憑かれたみたいぞよ!」
シックスパックと、ブルー・グリフィンは、あたしに取り憑いたゴーストに、必死に説得。
おかげで、これから2回何らかの行動を邪魔したら、昇天すると約束してくれた。
あたしは、ようやく、シックスパックが見つけた物を見に行くことができたネ。


9:屈強なる大団円

シックスパックが見つけたもの。
それは、処刑台の南に不時着していた怪しげな宇宙船だったヨ。
宇宙船のまわりには、蛸の頭をしたヒューマノイドトークティパスが5体いたネ!
あんなおぞましい顔面の連中を目撃したのに、「こっちだ」と、あたしとブルー・グリフィンに知らせに来られるとか、シックスパックの精神安定度はオリハルコンでできているヨ!
「ひぃ! 原住民が来たぞ!」
「あいつらきっと野蛮だから、僕らを酢でしめて食べちゃうんだ!」
「どうしよう! 俺、この任務が終わったら結婚する予定だったのに!」
「やめろ! 危機に瀕した時に結婚などの明るい未来を語るな! ろくでもないことになる!」
「グダグダ言ってねえで、ここは自衛あるのみ! 食らえ、《ボンボン爆弾》!」
「待つネ、あたしらは、友好的な原住民……ギャアァァーッ!!」
ゴーストに取り憑かれて動きが鈍っていたあたしは、見事に《ボンボン爆弾》を食らう。
耐久度が、一気に10も削れてしまったせいか、星が見えるヨ……。
目の前に見える星で、あたしは思い出した。
シックスパックは、宇宙のお偉いさんから、謎の小箱を自分の眷属へ届けるように頼まれてなかったネ?
そして、あいつらはどう見ても、この星の住民ではないヨ。
すなわち、今こそ小箱を使う時!
「シックスパック、こちらさん達に、お届けものを渡すネ!」
あたしが、まだ目の前の星をちらつかせながら叫ぶと、シックスパックは思い出したように小箱を取り出した。
「宇宙のお偉いさんから、あんた方へのお届けものだぜ」
《ボンボン爆弾》を投げてもくたばらないあたしにおびえていたトークティパス達だったが、小箱を渡されると、初めはおそるおそる、次には割れんばかりの歓声をあげたヨ。
「これで元の星系に帰れます!」
大喜びしたトークティパス達は、たくさんのお礼の品をくれた。
その中には、ブルー・グリフィンの卵があったので、ブルー・グリフィンも大喜びしたネ。
何もかもめでたしめでたし……と思ったところで、あたしらは大事なことを思い出した。
〈青蛙亭〉と、シックスパックの兄のクォーツがどうなったか、すっかり忘れていたヨ!
ブルー・グリフィンの親切に甘え、あたしらは彼女の背に乗って〈青蛙亭〉に引き返したのだった。
無事に帰ってきていたクォーツから「俺の店で過去最高の金額で無銭飲食した小娘が何しに来やがった!?」と、たたき出されかけたネ。
けど、シックスパックが柄にもなく「兄貴が無事でよかったぜ」と涙ぐんでいたから、めでたしめでたしってことにしたネ。

(完)

 

子ども食堂 かみふうせん

子ども食堂 かみふうせん

 
屍実盛

屍実盛

 

  リプレイを楽しんだあとは、ぜひ齊藤飛鳥さんの小説もお試しあれ!