児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる「魔法の酒樽を取り返せ!」リプレイ

児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんの『傭兵剣士』リプレイシリーズ、第4作は、『傭兵剣士』に収められた多人数用シナリオ「〈黒のモンゴー〉の塔ふたたび」のソロアドベンチャー版「魔法の酒樽を取り返せ!」(「Role&Roll」Vol.177)のリプレイストーリーとなります。ご堪能ください。

 

『屈強なる翠蓮とシックス・パックの魔法の酒樽を取り返せ』
~リプレイ『魔法の酒樽を取り返せ』~

著:齊藤飛鳥 

傭兵剣士 (T&Tアドベンチャー・シリーズ7)

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Role&Roll Vol.177 (ロールアンドロール)

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0:屈強なるプロローグ

あたしの名は、〈屈強なる翠蓮〉
18歳。人間の女戦士で、黒髪色白黒目のロリ体型がご自慢ネ。
知性度は9と低めだけど、気にしないヨ。
ひょんなことから、アル中悪魔のシックス・パックと冒険をすることになってしまったネ。
何しろ、岩悪魔のシックス・パックは、酒が切れると人間嫌いになるは、酒を見るとドワーフトロールでもおかまいなしに襲いかかって酒を奪うは、いかにも友達いなさそうなろくでなしだから、あたしが相棒になってやらなきゃダメだ。
今だって、赤魔術師の迷宮から帰って来て、次の冒険で何をするかという話になったら、迷わずに
「モンゴーの野郎に奪われた“空にならない”魔法のビール樽を取り戻そうぜッ!!」
と言い出す始末サ。
こいつの日常は酒を中心に回りすぎネ。
でも、考えてみたら、“空にならない”魔法のビール樽があったら、あたしがこのアル中のために荷車引いて大量の酒を運ぶ苦労を背負いこまなくてすむヨ。
「わかったわかった。シックス・パックがそこまで言うなら、一緒に行ってやるネ」
「そう来なくちゃな、相棒!」
シックス・パックは、がっしりとあたしの手を握った。
これで、相談は終了。
あたしらは、再び“黒のモンゴーの塔”を目指した。


1:屈強なる“黒のモンゴーの塔”前

“黒のモンゴーの塔”へ行く途中の田舎の辻に〈青蛙亭〉という居酒屋が見えた。
シックス・パックは、自慢げにこう言った。
「ここは俺の兄貴のクォーツが経営している店なんだぜ!」
「ふーん」
「えらく反応薄いな、おい!待てよ、置いていくなよ!」
シックス・パックには悪いが、あたしはクールに〈青蛙亭〉の前を通りすぎた。
前にあたしが〈青蛙亭〉で支払いができなくて叩き出された過去をシックス・パックには知られたくないからヨ。許せ、シックス・パック。
“黒のモンゴー”の塔には、前に来たことがあるので、迷わずに着けたネ。
でも、本番はこれからヨ。
あたしらを追い出した“黒のモンゴー”に見つからないように、塔に侵入しないとならないネ。
こういう時に活躍するのは、シックス・パックだ。
辺りを嗅ぎまわり、水路とひっくり返ったボートを見つけ出したヨ。
これで水路を遡れば、塔の地下迷宮に入れるネ。
と、喜んでボートに乗ったら、オールがないことに気づいたヨ。
「仕方ない、近くの木を切ってオールを作るネ」
「簡単そうに言っているが、器用度9のおめえが作れるのか?」
「大丈夫、工作は体力勝負ヨ!」
あたしは、剣で木を板状に切り、難なくオールを完成させた。
「オールと言うか、ただのでかい板きれじゃあねえかよ」
シックス・パックはブツブツ言っていたけど、自分で作るのは面倒だったみたいだから、結局受け入れた。
あたしらは、できたてのオールを使ってボートで水路を遡っていった。


2:屈強なる登攀

あたしとシックス・パックがボートで水路を進むうちに、滝が見えてきたヨ。
水路は、この滝で終わっていて、滝の裏にはいかにも地下迷宮の入り口っぽい洞穴があったネ。
ボートを捨てて、洞穴目指して登攀することになり、今度こそ本当に器用度を試される時が来たことを悟ったヨ。
まあ、考えるよりも行動あるのみサ。
あたしは、登攀に挑戦した。
常に手足の角度が三角形になるように登れば、バランスが取れて安全に登れると、故郷の一番上の兄ちゃんの四番目の花嫁が教えてくれたから、間違いないネ。
右手、左足、左手、右…うわ!
マヌケな右足め!
足を滑らせたネ!
体が宙に舞ったと思った直後、激しい痛みが臀部に走ったヨ…。
あぁ、もうダメだ…。
〈屈強〉の翠蓮、ここに死す…。
転落死だから、きっとあたしの死体はぐっちゃぐちゃネ…。
どうか、ジーナにはあたしの死がマイルドに伝えられて欲しいヨ…。
「登攀の最初に足をらせて尻もちついたくらいで、どうして人生のしめに入っているんだよ!?まったく、大袈裟な奴だぜ」
あきれた調子で、シックス・パックがあたしの顔をのぞきこむ。
アル中悪魔がいるということは、ここは天国ではない。
地獄だって、こんなアル中悪魔は入場規制するだろうから、あたしはまだこの世にいる。すなわち、生きているネ!
生きているって素晴らしい。
単純ながらも深遠なる真実を噛みしめつつ、あたしはシックス・パックに肩車をしてもらって登攀したネ。


3:屈強なる岩トロールとの戦い

登攀し終えて、湖のほとりを進むうちに橋を見つけた。
橋の手前には中くらいの山羊がいて、向こう側には凶悪そうな岩トロールがいたヨ。
山羊が橋を渡った後、あたしらも橋を渡ろうとしたら、岩トロールがこちらを向いた。
しかも、舌をペロリとしてやがるネ。
どうやら、あの山羊があたしらを食えと言っていたらしい。何て山羊サ!
でも、あたしだって負けないネ!
ここは舌先三寸で煙に巻いてやるヨ!
あたしは知性度と魅力度を合わせて、岩トロールへ愛想よく微笑んで見せた。
「もっと大きいアミルスタン羊がこの後に来ますネ」
「羊?山羊じゃあないトロか?」
「隙ありー!」
シックス・パックの不意討ちが、きれいに決まった。
ここから、岩トロールとの戦いが始まったヨ。
何とか岩トロールを倒すと、岩トロールの胸がひび割れて宝石のような石が現れる。
体の中にあったことからして、この石は岩トロールのはらわたか何かネ?
シックス・パックが、あたしにこれは岩トロールの核であるハートストーンだとか何だとか小難しい説明をしてくれたけど、知性度9だからよくわからなかったヨ。
わかったことは、もらっていってもいいということネ。
あたしは、岩トロールのハートストーンを手に入れた。


4:屈強なる山羊達

トロールを倒して橋を渡ると、牧草地だった。
そこには小さい山羊と中くらいの山羊がおいしそうに食事をしていたヨ。
あたしらが眺めていると、橋を渡って大きな山羊が現れ、食事に加わった。
「おまえ達、モンスター来るような所なのによく来たネ」
「山羊に言葉がわかるわけ…ヒィ!山羊がしゃべりやがったぜ!」
山羊があたしの声かけに応じて、ここがおいしい牧草地だから食べに来たと答えたので、シックス・パックが腰を抜かしたネ。
そこへ、山羊を食べにフログルが現れたヨ!
どうして、地下迷宮の近くに一大牧草地があると思ったら、モンスターが山羊をおびき寄せるために開墾していたからネ!
「メエエ、ボクたちの食事を邪魔するモンスターは容赦しないよ!」
おぉ、まさかの山羊達も戦いに参加ヨ!
山羊達の戦いを横目に、あたしらもフログルと戦った。
あたしが、剣でフログルAを斬る。
山羊達が角でフログルBを突き刺す。
シックス・パックが剣でフログルAを斬る。
山羊達が後ろ脚でフログルBを蹴り飛ばす。
戦いが終わる頃には、フログルBの惨殺体ができあがっていたヨ。
「俺、今度から居酒屋行っても酒のつまみに絶対山羊料理は注文しねえわ」
「シックス・パックもか。あたしもネ」
地下迷宮の近くでモンスターが出没する危険地帯へ一匹ずつノコノコやって来た時点で、山羊達の強さに気づくべきだったヨ。
モンスターよりも、山羊達に脅威を感じながら、あたしらは先を進んだ。 

三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

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5:屈強なるチェーン店

山羊たちの牧草地を後にして、地下迷宮の通路を歩くうちに、いきなりシックス・パックが走り出した。
いい匂いがするとかで、そう言えば、焼き肉の匂いがするネ。
シックス・パックの後を追って匂いのもとへ行ってみると、こんな地下迷宮に屋台があったヨ!
思わず二度見したその屋台の看板には、こう書かれていたネ。
「ラット・オン・ア・スティック(串刺しネズミ)・チェーン店」
まだ若くて肉の軟らかいネズミを何種類かのスパイスを混ぜて作ったタレにひたし、二匹ずつ串刺しにして、丁寧に遠火であぶったその一品は、香ばしい香りを辺りに漂わせている。
一見単純な串刺し料理ながらも、その実じっくりと手間ひまかけて作られているヨ。
それなのに、お値段はたったの4spぽっきり!!
これは、お買い得ネ!
「しかも、酒は8spだぜ!」
「よし、串刺しネズミも酒も買ったァァーッ!!」
あたしとシックス・パックは、屋台の親父であるゴブリンに金を払うと、さっそく串刺しネズミを食べた。
ただの丸焼きかと思いきや、ちゃんと歯も爪もはらわたも丁寧に抜き取って食べやすくなっているから、まるでノウサギの肉のような歯触りと食感ヨ!
噛むと口の中に、スパイシーな香りと一緒に深いうまみのある肉汁が口の中に広がるのが、たまらないネ!
この屋台のゴブリンの親父、一流の料理人ヨ!
感動のあまり、耐久度が4上がったところで、あたしは紫色に泡立つ酒を飲んだ。
「ホワッシャアァァーッ!!」
それは、口の中に雷雨が発生したに等しい衝撃だったネ…。
アルコール界の暴君に出くわしてしまったヨ…。
「何だ、翠蓮。ドワーフ・クラッシャー程度の軽口でのびちまったのかよ?酒に弱いお子ちゃまだなぁ」
「これを軽口とか、おまえ、どんだけ酒に強いのサ…?」
体力度が2下がるのを感じながら、ドワーフ・クラッシャーを浴びるように飲み続けるシックス・パックを見るとはなしに見ていると、屋台の親父のゴブリンが、すごくいい笑顔で近づいてきたヨ。
何と、シックス・パックに屋台のフランチャイズをやらないかと持ちかけてきちゃったネ!
嘘!ありえないほど、シックス・パックを気に入っちゃっているヨ!
しかも、シックス・パックがめちゃくちゃ乗り気だヨ!
「俺の兄貴も叔父貴も居酒屋経営者と言った具合に、俺にも経営者の才能があるからな」
得意げなのが腹立つが、シックス・パックに居酒屋経営者の才能があるのは、確かかも。
何せ、ウルクワーウルフが、あたかもシックス・パックのバカ笑いに引き寄せられたように、客としてひょっこりやって来たのだからネ。
「いっちょ、飲み比べをするか!」
シックス・パックの提案に、止める奴は誰もいなかったヨ。
酔いつぶれているあたしをよそに、屋台の親父のゴブリンが審判となって、シックス・パックとウルクワーウルフの飲み比べが始まっ…。
…あれ?
「どうして、あたしも屋台に座らされているネ?」
「バカだなぁ。俺達は仲間だろう?」
答えにならない答えをシックス・パックがかました後、恐怖の飲み比べが始まった。


6:屈強なる飲み比べ

屋台の親父のゴブリンが、この飲み比べはチームプレイだと説明する。
今すぐ変えろヨ、そんなルール!
こちとら、すでに酔っ払ってダメージ食らっているネ!
だが、あたしの抗議もむなしく、飲み比べが始まった。
組み合わせは、あたし対ウルク。シックス・パック対ワーウルフだ。
どう考えても、あたしに不利だよネ?
ちびりちびり酒を飲んでいたけど、もう限界ヨ…。
シックス・パック、後はおまえに任せたネ…。
「任せとけ!」
シックス・パックは、胸を叩いて調子よく返事した。
たのもしいネ…と、思ったのは30分前のこと。
今、あたしらは飲み比べに負けて酔いつぶれていたヨ…。
「頭痛がする!吐き気もだ!足に力が入らねえ!このシックス・パック様が酔いつぶれて立てないだと!?」
シックス・パックのわめき声が頭蓋骨に反響して頭痛いネ…。
“黒のモンゴー”から魔法の酒樽を取り戻す前に、地下迷宮で二日酔いで死ぬゥゥ…。
力尽き、絶望に打ちひしがれ、藁にもすがる思いで手を差し伸べると…。
「生きよ。そなたは美しい」
どんな不審者!?
いきなり現れた白髭のじじいは、あたしとシックス・パックを神殿みたいな場所に連れこんだ。
これから、じじいのダディにあたしらを紹介するとのことだ。
初対面で、もう親に紹介されるとか、これはまずいヨ!
「気持ちは嬉しいが、あたしには、ジーナというファビュラスな美人の恋人がいるから勘弁ネ!」
ややこしくなる前に白髪のじじいに前もってごめんなさいしていると、顔面が時計で年齢不詳なムキムキマンが現れたヨ。
じじいのダディであるムキムキマンは、“黒のモンゴー”が嫌いなので、じじいに地下迷宮を見張らせていたそうだ。
“黒のモンゴー”って、シックス・パックだけでなく、じじいやムキムキマンにも嫌われているネ。
まあ、あたしもあのおっさん好きじゃないからかまわないヨ。
この正直さが気に入られたのか、ムキムキマンはあたしらが酔いつぶれる前に時間を戻して送り届けてくれたネ!
神対応とは、まさにこのことヨ!
あたしらは、飲み比べをする前の時間へと送りこまれた。


7:屈強なるチェーン店と飲み比べ

気がつくと、あたしは串刺しネズミを食べ終え、今まさに因縁のドワーフ・クラッシャーの入ったグラスを飲むところだった。
今度は、酔いつぶれないように一気飲みはなしネ。
あたしは、ちびりちびり飲む。
おかげで、体力度が1上がった。
そこへまた、ウルクワーウルフがふらりと現れたヨ!
シックス・パックは、こりずに飲み比べを挑むし、えい、どうにでもなるがいいサ!
屋台の親父のゴブリンを審判にして、いざ尋常に勝負ヨ!
やった!!
今度は、勝てたネ!
先を急ごうとするあたしは、屋台のライセンスを購入したいと言い出したシックス・パックを引きずって行ったのだった。


8:屈強なる醸造施設

屋台から歩いてしばらくすると、酒の匂いがするとシックス・パックが言った方向に引きずられ、T字路に出たヨ。
東の扉から機械音がするので開けてみると、そこはダアクの秘密醸造施設だった。
酒で我を忘れたシックス・パックが、ダアクに襲いかかったので、戦闘開始になってしまったネ!
ダアクには悪いが、楽勝だったヨ。
シックス・パックは、ウキウキしながら、サーバーをいじくる。
「先に飲めよ、相棒!」
「ほう、今の戦闘であたしのありがたさが理解できたネ。だが、デモンズ・エールはてめえだけで飲みやがるネ!」
あたしは、シックス・パックの口にデモンズ・エールを押しこんでやった。
「うめえ!こいつは、絶品だぜ!」
シックス・パックは、目を輝かせる。
まったく、危うくあたしを毒殺しかけたとも知らず、いい気なものサ。
あたしらは、また元の場所に引き返して、別のルートを進むことにした。


9:屈強なる剣

引き返して西の扉の前に行ったら、怪しい音がしたので入るのをやめて直進することにした。
直進すると、またも東西に扉がある所に出たネ。
しかも、東からは地下迷宮なのにトンテンカンと大工仕事する音が聞こえて、とてつもなく怪しいヨ。
あたしらは、音がしてない西の扉を開けた。
そこには、岩に刺さった剣があったネ。
岩には何やら小難しいことが書かれていたけど、かまわずに剣を引っこ抜きにかかるヨ!
ドワーフ・クラッシャーの影響で、まだ体力度が1少ないけど、挑戦あるのみネ!
よし、剣を抜けたヨ!
「モンゴーの歪みの剣」という剣で、ちょっと面倒くさい使い心地だけど、使える物は使うネ。
剣を携え、あたしは意気揚々と部屋を出て、直進した。
しばらくして、穴のあいた扉があった。
今までの扉には穴が開いてなかったのに、ここだけこれ見よがしに穴が開いているのは怪しいヨ。
あたしらは、穴をのぞかず、そのまま南西の道に直進した。
すると、今度はY字路にぶつかった。
「どっちの道も嫌な感じで行きたくないぜ」
シックス・パックは、不機嫌そうに言い捨てる。
「うるせえ。誰のために、冒険しているネ。魔法の酒樽を取り返したかったら、つべこべ言わず先に進めヨ」
あたしは、優しくシックス・パックを励ますと、南南西を進んだ。


10:屈強なる螺旋階段

着いたところは螺旋階段で、上に登って行けるようになっている。
あたしらが登ると、何と13階段が噛みついてきたネ!
「やべえ!モンゴーのプロテクション・スペルだ!」
「だったら、器用にこいつらの牙をかわしていくまでヨ!」
器用度9でも、人間様の力をなめないことネ!
あたしらが半ば根性で螺旋階段を登りきると、中央に窪みのある、怪しげな鉄の扉があったヨ。
「こいつは形と言い、大きさと言い、ひょっとして、岩トロールから出てきたハートストーンをはめるんじゃあねえか?」
「はらわたを鍵に使うような悪趣味野郎だから、モンゴーはおまえだけでなく、じじいやムキムキマンにまで嫌われているんだと、よくわかったネ」
あたしは、そう言いながら持っていたハートストーンを扉の窪みにはめた。
扉は低い音を立てて開き、その先には赤いローブの僧侶集団が11人もいたヨ!
部屋の中央には、いかにもお宝くさいアミュレットが彫像に下げられているけど、今は撤退するに限るネ!
あたしらは、螺旋階段まで撤退して、追いかけてきた赤いローブの僧侶集団と戦い始めた。


11:屈強なる海ドラゴンのスープ

赤いローブの僧侶集団を全滅させた後、あたしらはアミュレットが下げられた彫像を調べることにした。
彫像はいきなり目を見開き、海ドラゴンのスープという謎かけをしてきたヨ!
知性度9に謎かけはきつすぎるけど、頑張るネ!
あたしとシックス・パックがしゃべる彫像に質問して、以下のことがわかった。
ドワーフは一人を相手に戦っていた。
・戦いは、リスクを負う試みではなかった。
ドワーフは相手と毎日勝負をしていた。
・この勝負の内容は、戦闘ではなかった。
・勝敗が決まったのは一度だけだった。
ドワーフが絶対負けない勝負に勝って髭がますますのびたのは、超常現象だった。
うん、ドワーフが勝負に勝った決め手が超常現象だったのか、勝って髭がのびたのが超常現象だったのか、ちょっとわからないけど、だいたい答えは見当ついたヨ。
あたしは、しゃべる彫像に自信たっぷりに答えを言ってやることにした。
「正解は、『面白い顔をしたドワーフが、無表情の友人ドワーフと、毎日にらめっこの勝負をしていた。ある日、ついに友人ドワーフが面白い顔をしたドワーフの顔に我慢しきれず爆笑。負けた友人ドワーフは、勝ったドワーフに巻物を贈った。しかし、その巻物は《しゃれたヒゲだね》と書いてあったので、これを読んだ勝ったドワーフの髭がますますのびた』ネ!」
彫像は、一瞬ののち、ためらいがちな声で正解を教えてくれた。
あたしは、恥ずかしさのあまり、穴があったら入りたい心境で、特に気になる音がしない北東の扉のある部屋へ飛びこんでいったヨ。
すると、その部屋にはソーンとローワンの実家を没落させて、ジーナを悲しませた極悪貴族の悪事の証拠となる書簡があったネ!
「こいつは…!」
あたしの後からやって来たシックス・パックも、息を飲む。
シックス・パックも、とんでもないものを見つけたとわかったのだろう。
あたしが振り向くと、シックス・パックはモンゴー秘蔵のブランデーに感動しているだけだったヨ。
呆れるな、あたし。シックス・パックは元からこーいう奴サ。
あたしは、書簡を手に入れて元の部屋に戻る。
しゃべる彫像が、あたしに気を使って、そっと目をそらしているのが、かえっていたたまれない気持ちにさせられたけど、あたしは男の笑い声がする部屋に行ってみることにした。


12:屈強なるエンディング

扉を開けると、酒をかっくらっている、でっぷり太った司祭服の男がいた。
よく見ると、男が酒をついでいるビヤ樽は、探し求めていた魔法の酒樽ネ!
シックス・パックも気づいて、今まで見たこともないほど殺気立った動きで男に飛びかかった。
そして、アル中悪魔対酔っ払い司祭という、魔法の酒樽をめぐる、飲んだくれ頂点対決が繰り広げられたヨ。
あたしは、見守ることしかできなかった。
関わりたくない気持ちでいっぱいだったから…ではなくて、飲んだくれどもの神聖なる戦いを邪魔したくなかったからネ。
「どんな酒でも、最高にうめえのは、勝利の美酒だァァーッ!!」
司祭を倒したシックス・パックは、勝利の雄叫びを上げながら、魔法の酒樽から直接ビールを飲み干した。
こうして、冒険は無事に終了。
あたしらは、カサールの街に帰ってきた。
現在本拠地にしている〈トロールの脳漿亭〉へ行くと、ちょうどジーナが酒を卸しているところだったので、あたしは走って手に入れた書簡を見せたヨ。
「翠蓮!あなた、シックス・パックの魔法の酒樽を取り戻しに旅立ったはずなのに、どうやって“漆黒の鷲”子爵の悪事の証拠を入手したの!?」
嬉しさ半分驚き半分で、ジーナはあたしを見つめる。
まさか、謎かけを答えたものの、思いきりはずした答えだったから恥ずかしくて駆けこんだ部屋で、たまたま見つけたとは言いづらい。
あたしは、見栄をはった。
ジーナへの愛の力で見つけたネ!」
ジーナは、あたしを力いっぱい抱きしめてくれた。
見栄をはったのは、ずるかったかな…との思いは、シックス・パックを見て消し飛んだ。
シックス・パックは、カウンターに腰かけて、九割増しの武勇伝を、酒を片手に居酒屋の客達を相手にまくし立てていたからだ。
まったく、それでこそシックス・パックだヨ!
あたしとジーナは、気持ちよさそうに武勇伝を語るシックス・パックを温かく見守ってやったのだった。

子ども食堂 かみふうせん

子ども食堂 かみふうせん