児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる「傭兵剣士」リプレイ

以前、私のサイトでも紹介したRPGの登場する児童文学子ども食堂かみふうせん』(2018年)の作者で、歴史ミステリ『屍実盛』で「第15回ミステリーズ! 新人賞」を受賞した作家の齊藤飛鳥さんが、なんと『トンネルズ&トロールズ』完全版に対応した『傭兵剣士』シリーズのリプレイ小説を書いてくださいました。

ご当人の許可をいただき、本サイトでの連載という形でご紹介させていただきます。 

気軽に読み進められるリプレイですので、肩の力を抜いてご堪能ください。

子ども食堂 かみふうせん

子ども食堂 かみふうせん

 

 ※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みます。また、作中には、齊藤飛鳥さんオリジナルの設定もありますが、あくまでも、プレイをしながら自由に想像と解釈を膨らませたということで、私からの手を入れてはおりません。どうぞご諒解ください。

 

 

『幸薄きジークリットの幸運な冒険』
~『傭兵剣士』リプレイ~

著:齊藤飛鳥

傭兵剣士 (T&Tアドベンチャー・シリーズ7)

傭兵剣士 (T&Tアドベンチャー・シリーズ7)

 

 0:幸薄き問わず語り

私の名は、ジークリット。
エルフの女性。300歳。成人女性。銀髪金眼褐色肌の160㎝/体重50㎏。魅力度15だから、中の上と言ったところかしら。
エルフ感覚での昔で言うところの「ちょい美人」ってやつ?
体力度8、耐久度11、器用度13、速度11だから、肉体の能力値は平均的と言えば平均的だと、自分では思っている。
精神的能力値の方は、魔力度24で、知性は11と言った具合に、体力よりも知性の方が大きくて魔力度が高いから、就職の際は魔術師を選んだ。
タレントは、癒し手と回避。体力度が中の下なのをフォローするために習得した。
魔術師組合卒業時、私に与えられた二つ名は〈幸薄き〉。
おい。
いくら、幸運度6だからと言って、手抜きすぎない?
前から気になっていたけど、この魔術師組合のお偉方は、新米魔術師達の能力値を嘲弄するような二つ名を授けすぎ。
能力が数値化されるこんな世の中はポイズンかPSYCHO-PASS…と、時々私の脳内に流入する異世界の知識が浮かんだけど、何はともあれ、私の人生の目標はできた。
こんな魔術師組合をぶっ潰せる力を持った魔術師になること。
魔術師組合を卒業して冒険に出る時、密かに組合の建物に後ろ足で砂をかけてから、私は旅立った。


1:幸薄き青蛙亭

「魔術師組合をぶっ潰す。そう思っていた時が私にはありました…。知性11の発想力って、思っていたよりおバカなのね。もう、過去の自分に会ったら、《炎の嵐》を食らわせたいわ…まだ習得できてないけど。くやしいけど、魔術師組合の言うとおり、私は〈幸薄きジークリット〉なんだわウワァァーンッ!!」
魔術師組合を卒業して3年。
私の冒険は、失敗と敗北にまみれていた。
最初のパーティーは、リーダーの座を巡る内紛で新米魔術師の私以外全滅。
大人数はダメだと思い、人間の女戦士と組んだら、故郷の祖父母を介護するために引退。
人間はしがらみが多そうだから、次はドワーフの男戦士と組んだら、連日連夜のセクハラに悩まされたので、持てる力すべてを賭けて、攻略中のダンジョンの最深部に封印。
魔術師組合卒業時と同じ能力値に戻り、現在に至る。
この運のなさ、魔術師組合がつけた二つ名〈幸薄き〉は伊達じゃあない。
「もういや。まともな仲間欲しい。まともな冒険したい」
最初こそ私の話を楽しんで聞いてくれていた青蛙亭の主人だけど、次第にからむ酔っ払い客な私を持て余したのか、レベル21の魔術師〈黒のモンゴー〉が傭兵を雇いたがっている話をして巧みに話題をそらした。
前に雇われた傭兵はその後行方不明になったとか、えらいきな臭い話だったけど、報酬がよいのは嬉しい。
ドワーフの一団が来た後、支払いができなくて主人に店からつまみ出されても、私が自分の幸運度の低さに嘆かずにすんだのは、その話が酔った頭に残っていたおかげだ。
親切な木こりさんにモンゴーの家を教えてもらい、私はモンゴーの暮らす塔の前に到着した。
「ごめん下さ~い、〈黒のモンゴー〉さん。傭兵をお求めと聞いてやって来た者です~」
酔った勢いで、私は大声で呼びかけた。


2:幸薄きファーストコンタクト

魔術師〈黒のモンゴー〉のレベル21というのは、ガセではない。
いきなり酔っ払いが家の前に来て大声で用件を告げたのに、動じずに招き入れてくれたし、仕事の話もしてくれた。
そのうちに、私の酔いも覚めてきた。この頃には、私の武器や装備の話になっていた。
地下迷宮へ行くのに、今の武器や装備だと通用しないから、モンゴーは新しい武器や装備を提供してくれた。
でも、すごく重い!
体力度8のか弱い冒険者には、どちらも重すぎる!
まさか、冒険を始める前から体力度が壁となって阻むとは思わなかった…。
ここで〈幸薄き〉という二つ名が発揮されるとは、どれだけついてないの?
ヨヨと泣き崩れる私に、〈黒のモンゴー〉は、かわいそうなものを見る眼差しで、ルーン文字が刻まれた小剣を提供してくれた。
いたせりつくせりとは、このことだ。すごい!
これがレベル21にまで上り詰めた魔術師のお気遣い力なのね!
私も、きっちり迷宮の地図を作って、モンゴーみたいな立派な魔術師目指すわよ!
私は、モンゴーに見送られて、たいまつを片手に意気揚々と迷宮へと入っていった。


3:幸薄きセカンドコンタクト

迷宮の階段を下りると小さな扉があった。
知性度でセービングロールすると、見事に成功!
早くも〈幸薄き〉二つ名を返上できそうだわ!
嬉々として私が扉を開けると、そこには岩悪魔がいた。
玄関開けたら二分でご飯…と、時々私の脳内に流入してくる異世界の知識を押しのけ、私は扉を開けたら二秒の場所にいた岩悪魔を観察した。
メタボぽんぽんしたゆるキャラ枠だから、彼は安心できる。
またも脳内に流入してきた異世界の知識を今度は活用し、私は岩悪魔に話しかけてみた。
思ったとおり、友好的だ。
名前は…シックス・パック!?
私は思わず、彼のどこも腹筋が割れていないメタボぽんぽんを見た。
シックス・パックは、私の奇行に気づかず、名前の由来を説明してくれた。
なーるほど。6本入りビール箱という意味なのね。酒好きの彼にふさわしい名前だ。
私も、お返しに自己紹介した。
ジークリットとは、とある子ども向けの本の作者の名前で、勝利を意味する。
「いい名前だ。だが、二つ名と合わせると、〈幸薄き勝利〉って意味になっちまうな」
シックス・パックの笑顔に、魔法を食らわせたくなったけど、不意にシックス・パックが真顔になった。
「まるで悲劇の英雄伝説の主人公みたいでイケているな。その仲間でナイスガイな岩悪魔のシックス・パック…俺様達、最高のパーティーになれるぜ!」
こんなことを言われたら、旅の仲間にするしかない。
私は、岩悪魔のシックス・パックと共に、迷宮の冒険を本格的に開始した。


4:幸薄き扉選び

シックス・パックと一緒に歩いていくと、東西南北に扉のある部屋に出た。
シックス・パックは、東西の扉に行きたがっている。
すでに迷宮を冒険したシックス・パックが行きたがっているから、きっと安全だろう。
幸運度6の私が選ぶよりは、ずっと安全だ。
東西なら、順番通り東から開けてみよう。
東の扉を開けて部屋の中に入る。
即座に錠が下りて閉じこめられた。
…何て、コテコテな罠にかかってしまったんだろう。
壁に〈我を押せ〉と上から目線なメッセージ付きの赤いボタンを見るたびに、自分の幸運度の低さを痛感する。
でも、いつまでも落ちこんではいられない。私は隠し扉がないか、探してみた。
幸運度で、セービングロールしたら、案の定失敗した。
もう嫌。
半ばヤケになって、私は止めるシックス・パックの話半分に、壁のボタンを押した。あ、ポチッとな。
たちまち、両側の壁が迫ってきた!
シックス・パック、私の幸運度の低さに巻きこんで、マジごめん!
早いところ、扉から脱出しなくちゃ!
扉に駆け寄り、勢いよく開ける。
まるで、それがスイッチだったみたいに、壁は元通りになった。
そして、壁が元通りになったのと引き換えに、扉の一部が開いて、ルビーのお守りを見つけた!
これは、ついている!
私はルビーのお守りを手に入れると、お守りの左のボタンを押した。
ルビーのお守りが隠されていた扉が閉まり、代わりに鍵がかかっていた西の扉が開いた。
進んだら、また似たような東西南北に扉のある部屋で、シックス・パックはまたも東西どちらかの部屋が気になっている。
まさか無限ループにならないわよねェ?
ルビーのお守りを手に入れた喜びも束の間、私は一抹の不安に襲われた。


5:幸薄き戦闘

せっかく西の扉の錠が開いたので、私は西の扉を開けて入った。暗い部屋で、何も見えない。モンゴーにもらったたいまつに火をつけてみるか…と、明かりをつけた途端、後ろで扉は閉まるし、部屋の中央には2メートル半もある〈ほうき拳〉というモンスターがいるし、さっそく戦おうと飛び出したシックス・パックはすってんころりんして気絶!?
いきなり、一人で戦う羽目になってしまったけど、こうなったら覚悟を決めるしかない!
私が一人で戦ううちに、ようやくシックス・パックが目を覚ました。
シックス・パックは意外と強くて、ゾロ目を連発してくれた。
あれほど私を苦しめた〈ほうき拳〉は、起きてほんの数分のシックス・パックに倒された。
〈ほうき拳〉の冷たくなった死体から離れると、木箱があった。
それも、汚い木箱だ。
宝箱なら、きれいだろうから、これは開けないでおこう。開けてモンスターが出てきたら、シャレにならないものね。
私はまた扉に引き返して、扉のたくさんある部屋に戻った。
うん、やっぱり無限ループ感ありすぎ。
でも、迷宮の地図作りが今の私の任務だ。
私は、どの扉を開けようか、思案した。


6:幸薄き扉巡り

シックス・パックが行きたがっていた東西の扉はもう行ったから、残るは南北の扉だ。
これも、南北の順番通りに南の扉から入ってみよう。
南の扉を開けると、二つの扉がついた部屋に出た。
シックス・パックがついてきたがらないので、仕方なく元来た部屋に引き返す。
こうなると、残るは北の扉だけだ。
私は、北の扉を開ける。
真っ暗な地下道が、どこまでも続いている。
たいまつを片手に進んでいき、地下道の中ほどで隠し扉がないか、幸運度のセービングロールしてみた。
はい、失敗!
南へ進んだら、またも隠し扉を探す幸運度のセービングロールがあった。
やってみた。
はい、失敗!
仕方なく、私は北へ向かった。
しばらくして、急にシックス・パックがたいまつを消すよう言ってきた。
危険な感じがしたので、言われた通りに私はたいまつを消した。
辺りはすぐに暗闇に閉ざされる。
数十秒もしないうちに、いかにも怪しい赤いローブを着た僧侶の集団がいた。
見つからないように祈ったけど、そこは幸運度6の悲しさ。
早々と見つかって、戦闘になってしまった!
今度は最初からシックス・パックが戦闘に加わっているから、気が楽だ。シックス・パックが弱らせた僧侶に私がとどめを刺すという、かなり姑息な戦闘だったけど、どうにか全員倒せた。


7:幸薄き地下道探索

シックス・パックは、僧侶は金を持ってないだの、魔法の杖に触ったら死ぬだの、やたらと詳しく教えてくれる。
もしかして、私の前に誰かと冒険して、魔法の杖を触って死んだ人を見たことがあるのと訊いたら、酒を勧めてきてごまかした。
でも、いいや。答えないということは、この場合は肯定に等しい。
私は、シックス・パックとまた地下道探索を継続した。
すると、また幸運度でセービング・ロールする場所に戻ってしまった!
こうなりゃ、やけだ!
あれ、成功しちゃったよ、おい!
というわけで、私はついに地下道で隠し扉を見つけることができた。
隠し扉を開けて歩くうちに、様々な方角に通じる扉がある部屋に出た。
扉は東西南とあるから、また順番通り東から開けてみよう。
東の扉を開けると、チェイン・メイルと皮袋のかかった部屋に出る。
シックス・パックは、どちらもエルフくさいと言うけど、私もエルフなんだけど?
それはさておき、チェイン・メイルとはよさそうね。
私が手に取って装着すると、ここで幸運度と魅力度によるセービングロール発生!
いけるか?いけるかしら?
いっけェェーッ!!
よっしゃ、成功よ!!
これは、「青きエルフ」って鎧なのね。
あ、まだ皮袋に触ってなかった。
…て、触ったら、またセービングロール発生!?
幸運度と知名度って、自信ない組み合わせ…あぁ、言っているそばから失敗だし、 床に穴が開いて落ちたし、穴の底には冷たい水が張られているし!!
〈幸薄き〉の二つ名がまたも猛威を振るい始めたわ!
でも、シックス・パックは穴に落ちてないから、よかった。
私はロープを投げて、彼に引き上げてもらうことにした。
一回目、失敗!
二回目…成功!
「ファイト~!」
「いっぱ~つ!」
シックス・パックのかけ声に、定例の異世界から流入してきた知識で応じる。
こうして、私は何とか冷たい水の中からはい出すことができた。


8:幸薄き再スタート

助かったのはいいけど、地図のインクが流れ落ちたし、皮袋は消えてしまっていた。
これでまた地下道探索は、やり直しだ。
私は、シックス・パックがくれたお酒で体を温めると、西の扉から出た。
また東西南の扉がある部屋に戻ってしまった。今度は順番通りに西の扉へ入ろう。
…ん?どこかで見た道と思ったら、前にも隠し扉を探してセービング・ロールをした道じゃない!
さらに、セービング・ ロールに失敗して歩いていたら、また東西南北の部屋に逆戻り!!
恐怖!無限ループの始まりだ!!
でも、同じ失敗をしないですむ利点がある。
気を取り直し、私は再び扉を開けた。
そして、東の扉の部屋に入り、ルビーのお守りがあった部屋に来た。
今度は、右のボタンを押す。
すると、先程とは違うルートの道に進めた。
そこは、おなじみの東西南に続く扉のある部屋だった。
まだここで行ってないのは、南の扉だけだ。
私は南の扉を開けてみた。
何だかんだで、またここに戻ってしまった。
え?だったら、西の扉を開けてみようかしら…うぅん、だめだめ!
また無限ループな隠し扉探しの地下道に行くだけだ。
ここは、「青きエルフ」の鎧のあった東の扉をオープン!!
今は私が装着しているから、「青きエルフ」はないけど、あの皮袋はまたあった。
今度こそ、セービング・ロールを成功させてやる!
燃えろ!私の小宇宙!
異世界から流入してきた知識と気合が功を奏したのか、今度はセービング・ロールは成功!奇蹟ってあるんだね!
皮袋の中身は金貨100枚で、私の重量点だと他の装備を持てなくなるので、シックス・パックに持ってもらうことにした。
さあ、さらに冒険を続けよう!
気分よく部屋を出た私は、またも東西南の部屋に出て、奇蹟だけでなく、無限ループ地獄も本当にあるのだと思い知らされた。


9:幸薄き無限ループ

無限ループは、大げさでもなければ、誇張でもなかった。
何度も何度も同じ道を歩くうちに、私はついに地底のハゲ集団、別名赤いローブの僧侶達をやりすごせた。
これで、今までとは違った道を行ける。
私は、シックス・パックからもらったお酒を景気づけに一杯引っかけて、僧侶達の来た道へ行ってみることにした。
東西南のT字路だから、いつものように、順番通りに東の扉から開ける。
ルーン文字の書かれた扉があったけど、シックス・パックが調べて問題なさそうなので、私も入ってみた。
途端に、かわいい黄金の子豚の貯金箱と目が合った。
赤いローブの僧侶達のいる怪しい迷宮に似つかわしくないかわいらしさだ。
もし、子豚の貯金箱だけでなく、見るからに怪しげな炎熱の穴が見えなければすぐにでも手に取るところだった。
何なの、このあからさまに怪しい炎熱の穴は?
私は念のため、炎熱の穴を覗きこむことにした。
シックス・パックが出たがるような光景が広がっていた。
うん。これは、進まずに黄金の子豚の貯金箱をゲットしよう。
私は引き返して、貯金箱を手に取った。
たちまち、中からネズミが一匹現れた!
いやー!ネズミ!ネズミ!
地球破壊爆弾!
…と、お約束の異世界から流入してきた知識が頭に浮かぶうちに、シックス・パックの一撃でネズミはあっけなく倒された。
これで、安心して貯金箱を手に入れられる。
私が手に取った途端に、知性度と幸運度のセービング・ロールがまたも発生!
これ、一番苦手な組み合わせなんだよねェ…。
おそるおそる試してみる。
嘘!両方とも成功したわ!
黄金の子豚の貯金箱を手に取ると、中にはすでに金貨50枚入っていた。
しかも、いくらお金を入れても、重さは10重量点だとか。
私は、シックス・パックと相談して、さっき見つけた金貨100枚を貯金箱に入れて、シックス・パック重量点の空きを増やした。


10幸薄き新ルート

貯金箱を手に入れた後、歩いて行くうちに、またT字路に出た。今度は西へ行ってみよう。
私は西に向かって歩き出す。
着いた所は、ルーン文字の刻まれた木の扉だった。
シックス・パックが警戒しているので、私も警戒してのぞき穴からのぞくことにした。
そこは、赤いローブの僧侶達の部屋だった。
見るからに、危ない。
シックス・パックが警戒したわけだ。私とシックス・パックは、来た道をそっと戻った。
えっと、そうなると、南へ行く道しか残ってないけど、あそこは隠し扉探しの無限ループゾーンだから行くのはなし。
そうなると、シックス・パックには悪いけど、炎熱の穴の底に見えたあの岩棚を進むしか新たなルートはない。
私は、また貯金箱の部屋に行くと炎熱の穴に入り、岩棚を進んだ。
と、ここで、セービング・ロール発生!
珍しく器用度でセービング・ロールときた!
でも、器用度は13あるから自信あるのよね!
はい、成功!
だけど、あと1違ったら失敗だったから、慢心はよくないでちゅね!
ハラハラしすぎて、ちょっとキャラがぶれかけたけど、気を取り直して私は進んだ。
あいにく、この岩棚は崩れていたので、西の岩棚に移る。
そうしたら、穴からガス噴出!
たたみかけるように、幸運度のセービングロール発生!
私、この冒険が終わったら魔術師組合に再入学するんだ…。年下からバカにされながら修行するのも悪くないな…。
…と、異世界から流入してきた知識で言うところの死亡フラグを立てたところで、まさかの成功!
しかも、シックス・パックたら、超イケメンに私を助けてくれた!
〈幸薄き〉な二つ名だけど、これはついている。
いい気分になったところで北側に進むと、色々とルートが現れた。
落とし穴の水にはまった時、たいまつをなくしたから、余分なたいまつはない。
前にシックス・パックが来たことのある道なら、暗がりでも何とかなりそう。
そう考え、私はシックス・パックを案内役にしてたいまつを持たずに地下道を進んだ。


11:幸薄き地下水路

やがて、不意にシックス・パックが私を地面に引き倒した。
何と、吸血コウモリが襲撃してきたのだ!
その数3羽。
岩悪魔の血は吸われないから、戦闘はシックス・パックが引き受けてくれるけど、ダメージ・ヒットはすべて私が引き受けることになった。
どうにか吸血コウモリを倒しきった後、しばらく進むうちに地下水路に出た。
シックス・パックが壁にかかった苔でおおわれた角笛を指差したので、よく拭いてから吹いてみた。
南の地下水路から、赤髭片目のドワーフがはしけの舵を取って現れた。
…赤いローブの僧侶達が住み着いていることと言い、ドワーフがはしけに乗って現れたことと言い、こんなに家族以外の連中が潜りこんでいるとは、モンゴーの地下迷宮は意外と開放的なのね。
密かにツッコミを入れていると、シックス・パックがドワーフに喧嘩を売りそうになっていたので、私は仲裁してはしけに乗せてもらった。
はしけは、北の地下水路を進む。しばらくして、船室から女ドワーフが出てきて、色々と飲み物を勧めてくれた。
だけど、シックス・パックは自分の酒を飲むだけで、口をつけようとはしていない。
ということは、何らかの毒が入っているかも。
私が丁重に断ると、ドワーフがこの先は危険だから、たいまつを消すように言った。
けっこううさんくさいけど、たいまつを消せとシックス・パックが言った時は、あの赤いローブの僧侶達がいたから、これも同じ意味合いの警告だろう。
私はたいまつを消した。
その甲斐あって、無事に別の地下水路に進み、岸辺に下ろしてもらった。
ドワーフに渡し賃を請求され、私は考えた。
腹に一物ありそうなこのドワーフのことだ。ケチったら、何をしでかすか、わからない。
私は、今後の安全を買うために、所持金の半額以上をドワーフに支払った。
でも、ドワーフは私の太っ腹には気づかなかったようで、何のリアクションもなかった。
でも、敵として襲いかかってこられなかっただけよしとするか。


12:幸薄き結末

私とシックス・パックは、西へ進んだ。
理由は、彼が西の方が出口に近そうだからということだ。
しばらくして、西の桟橋に出た。壁には、またも角笛がかかっている。
また吹いてみるか。私は角笛を吹いた。
予想通り、またはしけがやって来た。
今度は緑の目をした灰色の髭のドワーフだ。
船が遅れているから早く乗れとせかされたけど、さっきのドワーフと言い、このはしけは迷宮内定期船なの?
そんな疑問が頭に浮かんだけど、私とシックス・パックははしけに乗った。
すると、ドワーフが寒くなるからとワインを勧めてきた。
また怪しい飲み物ではないかと、シックス・パックの反応をうかがったら、まさかの無反応!
え?これは、何が正解なの?
わからないから、もう運を天にまかせるまでよ!
私はドワーフからワインを受け取ると、一口飲んだ。
そして、瞬く間に酔いつぶれ、目が覚めたら、鎖で縛られてガレー船の奴隷として売り飛ばされていた!
〈幸薄き〉二つ名を返上しようと思ったら、二つ名通りになっちゃったわよ、どうしよう!
そんな私を品定めするように、ガレー船の船長は子分達と共に見る。
「ウヒヒヒ。エルフの女か。こいつには力仕事は無理そうだな、ウヒヒヒ」
うわぁ…これは嫌な話の流れだ。
魅力度15だから、きっと公序良俗に反する意味での奴隷にされちゃうんだ、どうしよう!
鎖で縛られたままうろたえる私に、ガレー船の船長は悪い笑みを浮かべた。
「決めた!おまえは今日から、俺のペットのベティちゃんの世話係だ!」
あ…凶悪そうな見た目に反して、この船長さん、ホワイト経営者だわ。
こうして、私は、前任のベティちゃんの世話係から引き継ぎを受けるべく、船長室の隣のベティちゃんルームへ行った。
扉を開けようとしたら、その前に勢いよく前任者とおぼしき人間の男が飛び出してきた。
「ベティちゃんに噛まれた!医者を呼んでくれ!医者!」
そのまま、男は走り去っていった。
私は、猛烈な不安に襲われながら、部屋の中を覗いた。
そこにいたのは、船長のかわいいペットのベティちゃん、種族名巨大グモだった。
モンスターをペットにしとるんかいィィーッ!!
やっぱり、あの船長はブラック経営者だったァァーッ!!
…こうして、私は三年間ベティちゃんの世話係を務めた。
そして、隙をついてガレー船から脱出。
ベティちゃんを握り拳大から、船室いっぱいになるほど大きく育て上げ、船内お散歩をさせてあげたおかげだ。情けは人のためならずと言うのは、エルフにも適用されるものなのね。
何はともあれ、ガレー船を脱出してから、これと言って行くあてがないので、またモンゴーの所へ行った。
だけど、失敗した傭兵は当然採用されず。
行くあてのない私は、ふらりとまた青蛙亭に入った。
そこでまた新たな冒険に巻きこまれるけど、それはまた別の話。
これは、「生きているだけでも、人生はもうけものだ」という教訓を得られた私、〈幸薄きジークリット〉は、幸運だったという話。

 

子ども食堂 かみふうせん

子ども食堂 かみふうせん