スチームパンクの古典を読みふける


 ここ一月ばかり、いわゆる「スチームパンク」の古典を読みふけっておった。
 はじめて読んだものもあれば、読み返したものもある。
 といっても、ヴェルヌやウェルズを読んだのではなく、P.K.ディックとサイバーパンク絡みで出てきた連中と、カトリシズムの気配濃厚な歴史改変群の「スチームパンク」である。
 具体的には、


ウィリアム・ギブスンブルース・スターリングディファレンス・エンジン
・ティム・パワーズ『アヌビスの門』
・J.P.ブレイロック『ホムンクルス』『リバイアサン
・K.W.ジーター『悪魔の機械』
・ハリィ・ハリスン『大西洋横断トンネル、万歳!』
・キース・ロバーツ『パヴァーヌ


 こんなところ。
 なかでも、『悪魔の機械』と『パヴァーヌ』は素晴らしかった。とりわけ『パヴァーヌ』は、5年ぶりくらいに読み返したけど、かなり「わかる」部分が増えていて嬉しかった。でも、ヒースの野に香るもの悲しさは、宮崎アニメとはちょっと違うな。


 反対に残念だったのは、ハリィ・ハリスン。
 サンリオSF文庫の惹句だけだと、こんなに面白いそうなのにねぇ。

1212年、ナバス・ド・トロサの戦いでキリスト教徒が敗れていたら――本書は、こうした歴史的仮定にもとずく「パラレル・ワールド」テーマの傑作とされている。イベリア半島は回教徒に占領され、アメリカ発見はコロンブスでなくキャボットがなしとげ、独立戦争に敗北したワシントンは謀反入として銃殺され、現在のアメリカは貴族の支配するイギリスの植民地に止まっている。ワシントンの末裔であるアメリカ人技師ワシントン大尉は新工法を駆使して大西洋の梅底にトンネルを建設するよう大西洋横断トンネル会社から委託される。真空のトンネル内を列車が磁気の反発力で猛スピードで疾駆するという計画である。大尉は工事を成功に導いて大西洋両岸の産業を活気づけ、女王陛下を説得してアメリカを独立に導く悲願を抱いている。完成を妨害する組織の暗躍、全トンネルの計画者サー・イザンバードの大尉に対する嫉妬、彼の娘と大尉の困難な愛――まさに超弩級の娯楽作である。