RPGのイメージサウンドは?


 JGC2009では「『ハーン』体験プロジェクト」http://cmizer.com/movie/55731を、ICE JAPANの皆さん、そして『ハーン』プロジェクトhttp://www.sunsetgames.co.jp/rpg/harn/harn.htmの田沼貴弘さんらと一緒に開催します。
 その打ち合わせなどを兼ねて田沼さんと色々お話していたのですが、なぜファンタジー世界にはまったのかという話になりまして、面白い脱線をしたのでご紹介しましょう。言うまでもなく、私の出発点は『指輪物語』と『D&D』です。

幻想世界との絡みで行くと、私(注:田沼貴弘さん)の場合はトマス・ブルフィンチとエクトル・ベルリオーズが端緒と言えば端緒。前者はおそらくご存じだとは思いますが、「ギリシャローマ神話」。小学3年生頃にこれで夏休みの読書感想文を書いていました。後者は代表作「幻想交響曲」。ヴァルプルギスって何だろう……とずぶずぶはまったような気が。


実はRPGに手を染める以前から私はクラシック音楽に傾倒していて、学生時代は「将来は作曲家を目指す」とかなり本気で思っていた口。現在でも色々CDを買いあさり、気に入った曲であればオーケストラ・スコアまで買って、じっくり解読しながら音楽に耳を傾けるのが楽しみ。


RPG作品を音楽で例えると、「ハーン」諸作品群の場合、私は近代イギリスの作曲家レイフ・ヴォーン=ウィリアムズの「海の交響曲」の第1楽章がイメージサウンド。冒頭の軋むような金管楽器短調のファンファーレとそれに続く合唱の絶唱、それがフルオーケストラと共に長調へ解決されたときの解放感がたまらなく良い。

 まさかベルリオーズやヴォーン=ウィリアムズの名前が出るとは思わなかったよ!
 僕は夢で「幻想交響曲」の最後が流れるくらいベルリオーズが好きなのだけれども、ベルリオーズからロマン派の文学へ向かったのでした。


 これが「海の交響曲」。『ハーン』世界の勇壮さがよくわかる選曲ですね!

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%82%BA
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2


 その他、田沼さんが選んだRPGのテーマに見合ったイメージサウンド選をご紹介しましょう!


・ヴァンパイア・ザ・マスカレード:マイケル・ナイマンハープシコードとストリングスのためのコンチェルト」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%B3

Nyman;Double Concerto

Nyman;Double Concerto

↑こちらから視聴できます。
ヴァンパイア:ザ・マスカレード―日本語版 (TRPG series)

ヴァンパイア:ザ・マスカレード―日本語版 (TRPG series)

ワーウルフ・ジ・アポカリプス:ベーラ・バルトーク「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」の第2楽章
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%A9
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%99%A8%E3%81%A8%E6%89%93%E6%A5%BD%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E9%9F%B3%E6%A5%BD

ワーウルフ:ジ・アポカリプス日本語版 (TRPG series)

ワーウルフ:ジ・アポカリプス日本語版 (TRPG series)


・Jovian Chronicles:ウィリアム・ウォルトン 交響曲第1番の第2楽章と第4楽章
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_%28%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%29


 最後のJovian Choniclesですが、これは田沼さんが個人的に訳されているカナダのRPGです。
 以下、田沼さん自身のお言葉で説明されているので、そちらをご覧下さい。
 というか、どこかで出版しませんか?<日本のRPG会社の方

セッション中のBGMをどうするかという話題は時折各所で上がりますけれど、その作品のイメージサウンドは何かという話題は、まず上がりませんよね。


私(注:田沼さん)がはっきりとそのようなことを考え始めたのは、カナダのゲーム製作会社DreamPod9の作品Jovian Chroniclesの翻訳を始めたときです。


http://www.dp9.com/
http://www.dp9.com/index.php?option=com_content&view=article&id=65&Itemid=108


詳しい説明は↑をご覧いただくとして、私はこの作品をごく簡単に人に説明するとき、「人類の恒久的活動圏を木星軌道まで拡張した、宇宙世紀系統のガンダム」と言っています(注:なんかガンダムというよりもJ・P・ホーガンあたりのほうが近いか?)


Jovian Chroniclesは元々、R. Talsorian GamesのロボットものRPGMEKTON Zのサードパーティサプリメントとして出版され、後に独立した作品へと拡張されたものですが、サードパーティサプリメント時代の記述を見ると、メインテーマにForce tenを使えとあったり。どんな曲だろうと思って調べてみたら、カナダのプログレッシブ・ロックバンドRUSHの曲だと分かったのですが。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5_%28%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89%29

つまりDreamPod9はJovian ChroniclesのメインイメージをForce tenにしたと言っても良いわけですが、これを知ったとき、「RPG作品のイメージサウンドとは」とはっきり意識して考えるようになりました(漠然とであれば、それ
以前も何かの折に夢想していたかもしれませんけれど)。


ちなみに私が翻訳したJovian Chroniclesですが、各惑星の勢力の基本設定は以下のような題材を基礎にしていると思われます。


水星:9世紀から13世紀にかけてのヴェネツィア共和国
金星:高度成長期からバブル全盛の頃の日本
地球(CEGA):明朝及び現代の支那
火星(火星連盟):ナチス・ドイツ
火星(火星自由共和国):西部開拓時代のアメリカ北西部
木星:近現代のカナダ


特に木星は、どう考えても明らかにカナダです。カナダではケベック州のみならず全州で英語とフランス語を勉強することになりますし、木星木星連邦)もフランス語の存在感が非常に強い(連邦制国家であることも共通しています)。
Jovian Chronicles 2nd Editionの木星の文化の項には、以下のような記述もあります。


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木星第一言語は英語であるが、国民の大半は同じくらいにフランス語にも習熟している。これは、連邦初期の植民者で後に詩人へと転身したエリザベス・ビセの手になる、連邦最高の文学作品と認められた日記と詩の力によるところが大きい。ビセは、フランス人とフランス系アフリカ人の血を引いた、ヴァン
ガード・マウンテン州へ移住した鉱夫の子供であった。彼女はそこで木星の上流階級に親仏派を育成し、自らも教育に携わった。現在、ほぼ全ての中学生・高校生はフランス語を数年間学び、フランス語の古典を原文で読めるようになる。フランス語は、連邦において芸術分野の標準語とされている。太陽系最多のフランス語人口を擁する木星連邦は、地球以外では唯一のフランス語圏国家である。
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なお、木星連邦は木星本体“オリュンポス州”、重力安定点の1つL4地点の“ヴァンガード・マウンテン州”、L5地点の“ニュー・ホーム州”の3州から成っています。


考えてみれば、製作会社のDreamPod9はケベック州の州都モントリオールにある会社。道理と言ってしまえば道理ですが。

 ちなみに、『D&D』では、オフィシャルでサウンドトラックが発売されていますね。

http://www.hobbyjapan-shop.com/shopdetail/056002000001/

 英語版の“Sharn:City of Towers”には、私がリプレイを手がけたこともある、エベロン世界のBGMを収録したCDが同梱されていました。これを聞いてリプレイを書いていましたよ。
 日本語版にはついていなくて残念でしたが……。