お知らせです。新刊・共著の『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』(南雲堂)がAmazon.co.jpで予約開始となりました。書影も出ています。南雲堂のサイトでは、目次の確認と、一部立ち読みができるようです。
本論集『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』で、岡和田晃は巻頭の
「「伊藤計劃以後」と「継承」の問題――宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』を中心に」
を寄稿し、直木賞候補になった『ヨハネスブルグの天使たち』に焦点をあてつつ、しばしば安直な対比で語られがちな二人の作家が何を幻視していたのか、そのヴィジョンが私たちにとってどんな意味があるのかということを、「政治」の問題を中心に論じました。加えて飛浩隆「自生の夢」や八杉将司『Delivery』など、同時代の優れた日本SFについても視野に入れたものになっています。
また「現代SFを読むための15のキーワード」のうち「シンギュラリティ」と「ナノテクノロジー」の執筆を担当しました。
The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)
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ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
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岡和田晃は「The Indifference Engine」を、戦後日本文学でも稀有な――SFでは山野浩一「殺人者の空」や『レヴォリューション』以来の――同時代の世界情勢へ向けて開かれた社会意識のもとに描かれた作品であると考えています。『虐殺器官』が何十万部も売れ、伊藤計劃の作品が社会現象になった今、しばしばアイロニカルに、「伊藤計劃バブル」という言葉が囁かれます。伊藤計劃論で賞をいただいた私も、その片棒を担いでいるように揶揄されたものです。
むろん「伊藤計劃」は「伊藤計劃バブル」の枠に閉じ込められるようなレベルの書き手ではありませんが、この問題が難しいのは、ジレンマの先を考えるためには、グローバリズムと高度資本主義、そして「個」の問題に向き合わねばならないことが原因となっています。非才の身ゆえ、明確な答えは出せませんでしたが、その先のヒントは提示できたと思います。本稿は、3月末に上梓と、最も早い時期に書かれ、最も分量のある『ヨハネスブルグの天使たち』論ともなっています。ご期待ください!
なお、私は本稿ではJ・G・バラードについて言及しています。『ヨハネスブルグの天使たち』は、帯の惹句にあるような「バラードの手法」で描かれているとは思いませんが、『殺す』や『コカイン・ナイト』以後のバラード作品に見られる世界認識、テクノロジカル・ランドスケープの現在形を共有しているのは間違いないと考えています。例えば後期のバラード作品では「ホーム・グロウン・テロ」の内在的論理が、予見的かつ克明に描かれています。バラードは、現代を理解するための基礎教養として押さえておかねばならない、その筆頭に来る作家でしょう。