「Book News」に「SF・評論入門3:「伊藤計劃以後」とハイ・ファンタジーの危機――未来は『十三番目の王子』の先にある!」を掲載いただきました。

 “人文系・コミック・音楽から雑学など、出版系イベントからマニアックな新刊情報まで、「本」にまつわることはなんでも”扱う人気サイト「Book News」で、新刊・共著『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』にあわせたリレー連載「SF・評論入門」が始まっています。
 そちらに「SF・評論入門3:「伊藤計劃以後」とハイ・ファンタジーの危機――未来は『十三番目の王子』の先にある!:を寄稿いたしました。
 入門記事を意識しているので、記述はとても平易に、参照文献も著名なものに限定しております。ご笑覧ください。
 なお、今回は編集サイドの都合もあり、公開後校正を行なっています。2013/7/16 0:30頃に反映された模様ですので、それ以前にご覧の方は、今一度、再読をしていただけたら幸いです*1


SF・評論入門3:「伊藤計劃以後」とハイ・ファンタジーの危機――未来は『十三番目の王子』の先にある!
http://www.n11books.com/archives/30455265.html

ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF

ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF

十三番目の王子

十三番目の王子

 あくまでも入門記事なので、スケッチ的に状況の大枠をつかんでいただくことを優先し、細部は意図的に簡略化しています。隅々まで完成された厳密な論考を求める方は、私のファンタジー論だと、ジーン•ウルフ論「救済なき救済の相(かたち)――《新しい太陽の書》小論」をどうぞ。「SFマガジン」2011年9月号所収です。
S-Fマガジン 2011年 09月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2011年 09月号 [雑誌]

 今回は『十三番目の王子』に焦点を当てているので、同時代日本のハイ・ファンタジーについては、『十三番目の王子』以外、すべてを分析から落としています。敢えて詳細な表現の変遷としての「ジャンル論」に近づけていくのであれば――現代日本に限っても――門倉直人の『ローズ・トゥ・ロード』(2010年版)、古川日出男の『アラビアの夜の種族』、乾石智子の『夜の写本師』、あるいは片理誠の『屍竜戦記』、米澤穂信の『折れた竜骨』、あるいは山尾悠子の『ラピスラズリ』等について、厳密に考える必要があるでしょう。また、どこかで機会をいただけるならば、論じてみたいと思います。
 なかでも『屍竜戦記』は、本稿でいう「トランスメディア的な感性」を「ハイ・ファンタジー」の枠組みを利用しながら、ジャンル越境的に繰り広げているので、もう少し批評的に何をやろうとしているのか突き詰められてもよいでしょう(岡和田晃の場合、片理さんの作品については、「SF Prologue Wave」のシェアードワールド小説企画で、何度も論じております)。
屍竜戦記〈2〉全てを呪う詩 (トクマ・ノベルズEdge)

屍竜戦記〈2〉全てを呪う詩 (トクマ・ノベルズEdge)

 なお、本ウェブログをご覧の方には、門倉直人「グンドの物語」、および『シンデレラは、なぜかぼちゃの馬車に乗ったのか』に関する下記記事をお薦めいたします。いずれも、岡和田晃が微力ながら協力させていただきました。

 「グンドの物語」は“静かの公”グンド・べレドール、つまりユルセルーム世界最大の英雄の一人を中心とした散文です。
 本稿ではその生涯が蠱惑的な文体によって読者の前に提示されており、日本の幻想文学、あるいはヒロイック・ファンタジー史における、重要な位置を与えられてしかるべき作品でしょう。とりわけ、ヒロイック・ファンタジーにおける「文体」、そして幻想文学における「相互干渉性(インタラクティヴィティ)」の問題について、思考の材料を提示してくれていると思います。
 加えて、トールキンやル=グィンを思わせるいわゆるハイ・ファンタジーをベースにしながらも、日本語による詩歌文学の伝統の味わいもある独得の世界観は新鮮な驚きを提示してくれることと思いますので、RPGをご存じない方もぜひご覧下さい。

・門倉直人「グンドの物語」
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/180701887.html
・「【レビュー】門倉直人『シンデレラは、なぜカボチャの馬車に乗ったのか 〜言葉(ことのは)の魔法〜』(付記:SF乱学講座「日本昔話「昔々、あるところでポストヒューマンが……」――その後の日本神話とデジタル物理学から」のお知らせ)」公成文
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/222913904.html
SF乱学講座聴講記 門倉直人、小泉雅也「日本昔話「昔々、あるところでポストヒューマンが……」――その後の日本神話とデジタル物理学から」田島淳(協力:岡和田晃、齋藤路恵、門倉直人、小泉雅也)
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/302012017.html

*1:その際、@yk5さんの指摘も参考にさせていただきました。この場を借りて謝意を表します