10月6日(日)のSF乱学講座で「忘れられた作家・鶴田知也を読む〜北海道・開拓・アイヌ〜」の講師をします。

 10月5日に行なうジュンク堂書店池袋本店でのトークイベントに引き続き、翌日10月6日(日)にも講演をやります。
 SF乱学講座という、すでに半世紀近い歴史を有した「なんでもあり」の市民講座があります。Analog Game Studies顧問の草場純さんも、前身たるSFファン科学勉強会の頃から、深くコミットしています。
 こちらで「忘れられた作家・鶴田知也を読む〜北海道・開拓・アイヌ〜」と題した講演をやることになりました。基本的には東條さんにしゃべってもらって、私はサポートに徹する予定です。経緯や内容については以下、乱学講座のサイトからの引用をご覧ください。

タイトル:忘れられた作家・鶴田知也を読む〜北海道・開拓・アイヌ


講師:東條慎生氏(ライター)、岡和田晃氏(文芸評論家)
課題図書:『コシャマイン記・ベロニカ物語 鶴田知也作品集』 (講談社文芸文庫)
 

内容紹介:
 鶴田知也(1902〜1988年)は、プロレタリア文学の書き手でありながら、芥川賞を受賞した唯一の作家です。しかし、2009年に講談社文芸文庫から40年ぶりの作品集『コシャマイン記・ベロニカ物語』が出るまで、完全に忘れられていました。そして、残念ながら同書が出た後も、忘れられた作家という印象は拭えないものとなっています。
 けれども、受賞作の「コシャマイン記」(1936年)は、アイヌ叙事詩を擬した特異な作品で、戦前の時代状況に対する批評性も籠められており、事実上の戦時下たる現在も読み継がれる価値を有しているものと考えます。
 このたび、鶴田についての論考を収めた『北の想像力』(仮題)という評論集が、寿郎社から刊行されることとなりました(2014年春頃を予定)。
 同書は、北海道をテーマにしたSFや文学を主題的に扱った批評のアンソロジーなのですが、刊行に先がけて、『北の想像力』で鶴田知也論を担当した東條慎生と、同書の編集を手がけ、また筑波大学鶴田文学を講じた岡和田晃が、鶴田文学について語ります。
 課題図書を指定してありますが、最低限「コシャマイン記」には目を通しておいてください。講談社文芸文庫版を――年譜や注釈が充実しているうえ、他の作品も収められており、鶴田の全体像をコンパクトに掴むことができるので――強くお勧めします。
 ただ、「コシャマイン記」については、ウェブ上に公開されているものがいくつかあるので、ブラウザで小説を読むのに抵抗がない方は、そちらで読む選択肢もあります。以下、URLを列挙しますが、それぞれ、ギリシャ古典文献に関するサイト、日本ペンクラブのサイト、そして秦恒平氏のサイトにて、「コシャマイン記」が公開されています。このうち、後二者は誤字が共通しており、注釈も省かれているなど、同じテキストデータを使っていると思われます。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/yaziuma/master2.html
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/novel/tsurutatomoya.html
http://umi-no-hon.officeblue.jp/emag/data/tsuruta-tomoya01.html

 
開催日時:2013年10月6日 日曜日 午後6時15分〜8時15分
参加費 :千円
会場  :高井戸地域区民センター (京王井の頭線「高井戸」駅下車)
サイト:http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/5302/

 講義で扱う「コシャマイン記」、発表当時はこのように読まれました。
 「コシャマイン記」は、昭和11年芥川賞をとった作品ですが、すでにプロレタリア文学は厳しい弾圧にさらされていて、作家は実際に逮捕されることも、しばしばでした。『蟹工船』の小林多喜二は、昭和8年特高の拷問で殺されています。また、鶴田知也と同郷で、同じ雑誌に書いていた葉山嘉樹は、これまた特高の弾圧で、思想的な「転向」を余儀なくされています。
 そうした時代状況で、このように「日本人」が徹底して裏切り者として書かれる作品が評価されたというのは、きわめて珍しい事例です。「コシャマイン記」に、源義経の最期に見られるような、日本人的な感覚を投影する人もいますが、じつは狡知な主人公――『オデュッセイア』のオデュッセウスや、今だと『ヒストリエ』のエウメネスでもいいですが、そのような巧い立ち回りができない――マイノリティの苦しみを描いていると感じます。
 このような作品を遺した鶴田知也が、翼賛体制下において、いかなる運命をたどるのか。すでに東條さんの原稿を見ている身からすると、実にスリリングで、ネットに瀰漫する排外主義的な言説に、問題意識を感じている方にこそ来ていただきたいと思います。
 いま、鶴田知也が熱い!

 「SFマガジン」にも紹介が載りました。