『ハーンワールド』の面白さ


 ※デザイナー追悼のため、また、日本語展開がもっともっと続いてほしいとの気持ちから、『ハーンワールド』を手に入れた際、某所に軽く書いたノートを、ここに再掲しておきます。


 そういえば最近、『ハーンワールド』を入手いたしまして、ちょくちょく読み進めています。
 ものすごく精緻に創られたファンタジーワールドの設定集。
 プレートテクトニクス、季候区分、果てはワールドが存在する星そのものの設定などまで、ぜんぶ書かれています。
 それでいて、扱いやすい。読み物として面白く、回しやすく、自作の余地がたっぷりあるワールドだと思います。
 B.Mさんのレビューが秀逸なので、引用させていただきますと……。

ハーンの”ウリ”は精密さだと思われます。
詳細な地図(海流図、気候図、植生図などなど)や星図、産業分布や文化圏、経済圏といった資料が満載です。
これらを自分で設定するとなると気が遠くなるような大事業になってしまいますよね?


もちろん、これらのデータは取捨選択して使用すればいいのですから、データが苦手な人も心配はいりません。
『ワールドの細かいところは自分で決めたい』というタイプのDM(引用者注:ダンジョンマスターのこと。テーブルトークRPGのマスター一般、あるいはファンタジー創造に興味のある方一般として理解しても、文脈的には問題ないはずです)はいませんか?
そういう人にもうってつけです。なにしろ、一番面倒くさい(笑)地図や生物相、気候といったところはすでに完成しているのですから。あとは自分の好きな設定を付け足して行けばいいのです。


それからもう1つ。
詳細な資料としての活用法があります。
ハーンの世界はおそらくファンタジーセッティングの基本を踏襲しており、それについての膨大な資料があるわけです。
これらはアナタが自分だけのオリジナルワールドをセッティングする時に大変に参考になるでしょう。
また、ファンタジーTRPGをプレイする時にも何らかの役に立つのではないでしょうか?。
意外に”ワールドセッティング用の資料”って無いもんですからねぇ(笑)。

・ハーンワールド(ぐぐっと下)
http://www.sunsetgames.co.jp/rpg/harn/harn.htm


・ハーンワールド案内(PDF)
http://www.sunsetgames.co.jp/rpg/harn/harnguide_from_lythia_com.pdf


・関連資料、無料ダウンロード。秀逸!
http://www.harn.jp/


・B.Mさんのレビュー
http://rainbow.s140.xrea.com/cdspe/review/harn.html


 専用の『ハーンマスター』というルール集こそ出ているものの、『ハーンワールド』そのものは特定のRPGに依存していないので、単体で読み物として楽しめます。
 これ、重要。予備知識、いらないのです。


 『指輪物語 追補編』とかを楽しめる人、中世の社会史が好きな人なんかは、満漢全席を味わうような、濃密な体験ができることと思います。
 ファンタジー小説/ゲームの創作に興味のある方も、必須かと。

指輪物語 (10) 新版 追補編

指輪物語 (10) 新版 追補編

 13世紀のブリテン島がモデルなので、同じ13世紀を描いた参考資料としては、エマニュエル・ル=ロワ・ラデュリの『モンタイユー』なんかが使えるでしょう。


 『モンタイユー』とは、ある村の生活資料をそのまま記録した実録集。
 佐藤亜紀氏曰く、「小説より面白い」実録だとのことです(笑)

モンタイユー: ピレネーの村 1294~1324 (上) (刀水歴史全書)

モンタイユー: ピレネーの村 1294~1324 (上) (刀水歴史全書)

  • 作者: エマニュエルル・ロワ・ラデュリ,エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ,井上幸治,波木居純一,渡辺昌美
  • 出版社/メーカー: 刀水書房
  • 発売日: 1990/06/20
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 75回
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モンタイユー: ピレネーの村 1294~1324 (下) (刀水歴史全書)

モンタイユー: ピレネーの村 1294~1324 (下) (刀水歴史全書)

  • 作者: エマニュエル・ル・ロワラデュリ,エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ,井上幸治,波木居純一,渡辺昌美
  • 出版社/メーカー: 刀水書房
  • 発売日: 1991/10/20
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人
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 最近出た以下のような資料集もありますね。

中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)

中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)

 こちらは、13世紀のイギリスを舞台としているので、ほぼそのままサプリメントとして使えます。
 

 それにしても、『ハーンワールド』の大人が読み物として楽しめるファンタジー設定集、ってコンセプトは、かなりワクワク感があって、素晴らしいです。
 価格帯が抑え目なのも好印象。


 思わず、メル・ギブソンの映画『ブレイブハート』みたいな話を遊んでみたくなります。
 ただ、設定を読み解いていきながら、『ブレイブハート』の二次創作をやるのではないような形で、下手すると『ブレイブハート』よりも面白い物語が創れそうに思えてしまうのが怖ろしいところ。



 個人的に、かなり応援したいシリーズです。
 こういうゲームこそ、細く長くでもいいので続いてほしい。心からそう思います。


 読むだけでも楽しめますが、『ハーンマスター』を使用しないのであれば、ルールシステムは、『トンネルズ&トロールズ』(第7版)や『クトゥルフ・ダークエイジ』など、軽く取り回そうとするぶんには合いそうです。
 『d20ハーン』が訳されてもいるので、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』でも遊べるけど、個人的には前の2システムかなあ。

トンネルズ&トロールズ 第7版 (Role&Roll Books)

トンネルズ&トロールズ 第7版 (Role&Roll Books)

クトゥルフ・ダークエイジ (Role & Roll RPG)

クトゥルフ・ダークエイジ (Role & Roll RPG)