「文字のないSF――イスフェークを探して」


 高槻真樹さんの論文「文字のないSF――イスフェークを探して」が「SFマガジン」の2010年6月号に掲載されていますね。

S-Fマガジン 2010年 06月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 06月号 [雑誌]

 多木浩二からイコノロジーに行くかと思いきや、そうはならないところに高槻さんのSFの在り方が見えています。
 例えば私はマニエリスム絵画ってSFだなあ、と思っていたのですが、あくまで近代以降の理性と論理に依拠しているところが、全体的な書き方の技術をも含めて、楽しく読むことができました。
 この論文はとても広がりがあって、例えばクリス・フォスや加藤直之、さらにはラリー・エルモアのイラストレーションなども、この流れで楽しく読むことは可能だと思うのですよね。シュルレアリスムにしても、エルンストの『百頭女』も立派な「文字のないSF」ですし。
 そうそう、私が近年で最も強く「文字のないSF」を感じたのは、『魔城の迷宮』という書物です。
魔城の迷宮―ミステリ迷路ゲーム (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

魔城の迷宮―ミステリ迷路ゲーム (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

百頭女 (河出文庫)

百頭女 (河出文庫)

 スチームパンク特集に収録されているスチームパンク論はこちらでしょうか。
http://www.irosf.com/q/zine/article/10562
 なお岡和田は、スチームパンクといったらハリイ・ハリスンの『大西洋横断トンネル、万歳!』を偏愛している人間でございます。ハリスンはどれも好きなのですが、特にこの作品は隠れた名作だと思います。
 
大西洋横断トンネル、万歳! (1979年) (サンリオSF文庫)

大西洋横断トンネル、万歳! (1979年) (サンリオSF文庫)