評論連載「向井豊昭の闘争」を「未来」(未來社)で開始します。

 私が本格的に評論を書き始めたのが2006年ですから、今年はちょうど5年目の節目となります。はじめて書いた評論が新潮新人賞のベスト5に入り、「おお、行けるのかも!」と思ったのが運の尽き。その後、3回連続最終候補で落とされ、結局は日本SF評論賞に拾ってもらったのでした。


 ただし、その際には、伊藤計劃氏の死という事件があったため、受賞しても複雑な思いを抱いたのは確かです。
 どうやら、私はこの屈折を引き受けていかねばならないようで、SFマガジンに掲載いただいたジーン・ウルフ論をはじめ、ここしばらくの商業原稿には「死」の影がつきまとっています。それは「語り得ざるもの」にどう接近するかを模索することでもあったのだろう、と今にして思います。



 このたび、本格的な評論連載を始めることになりました。
 ジェルジ・ルカーチジョルジョ・アガンベンの訳出、宮本常一の著作集やポイエーシス叢書等、硬派な出版で知られる学術出版社・未來社のPR誌「未来」にて、評論の連載を開始します。
http://www.miraisha.co.jp/np/mirai.html


 まだホームページには出ていないのですが、「未来」2012年1月号の見本誌が届きました。

 表紙の掲載陣は……。

〈カタストロフィスム〉について
転換のディヴェルティメント25
小林康夫


神話の辺境化
デラシネ備忘録24
町田幸彦


ドイツ映画「第4の革命――エネルギー・デモクラシー」
ドイツと私41
永井潤子


タジュラーの武器商人
書簡で読むアフリカのランボー8
鈴村和成


累日の果て、スーマンボースーで
〈沖縄と文学批評〉15
仲里効


「復帰」という視差
沖縄からの報告23
與儀秀武


アイヌならざる者による現代アイヌ文学
向井豊昭の闘争1《新連載》
岡和田晃


リベラル・デモクラシーの展開
――トマス・ヒル・グリーンを中心として
リベラル・デモクラシーとソーシャル・デモクラシー5
行安茂

 と、私以外の書き手が超豪華! 
 まさか小林康夫さんや永井潤子さんと、同じ雑誌に書けるとは思いもよりませんでした。


 連載名は、題して向井豊昭の闘争」
 このタイトルは鎌田哲哉知里真志保の闘争」を下敷きにしています。


 第1回のタイトルは「アイヌならざる者による現代アイヌ文学」。


 向井豊昭については、有志による「向井豊昭アーカイブ」をご覧ください。
http://www.geocities.jp/gensisha/mukaitoyoaki/index.html
 ただし、連載にあたっては、アーカイブに載っている記事作成時よりも、いちから調べなおして掘り下げてあります。


 SF評論賞の選評で、ありがたくも「彼は戦っていますから」とのお言葉を選考委員長の荒巻義雄さんにいただいたのですが、そのような「戦い」を主題とした連載です。また、知られざる作家にスポットを当てる評伝、ならびに北海道文学と現代アイヌ文学の再評価の役割も兼ねています。


 ここしばらく、資料収集と読み込みに動いて参りましたが、面白いものになりそうな自信はあります。ご期待ください。