八杉将司作品リスト

※以下は、トークイベント「未来を産出(デリヴァリ)するために」@ジュンク堂池袋で当日、配布した資料である。

『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』刊行記念イベント
未来を産出(デリヴァリ)するために〜新しい人間、新しいSF〜 at ジュンク堂書店池袋本店


八杉将司作品ガイド(2013年10月5日現在)               
          

●長編


・『夢見る猫は、宇宙に眠る』徳間書店2004/7(第五回日本SF新人賞受賞作)
人格を模倣するAIトゥインと発達障害のヒロインであるユンの認知の問題を宇宙論的な規模に拡張させ、量子論ナノテクノロジーを軸に、荒巻義雄「柔らかい時計」のような、火星を舞台にしたスペキュレイティヴ・フィクションの伝統に連なる作品。


・『光を忘れた星で』講談社BOX 2011/1
全人類が盲目になった世界で、視覚描写を徹底して排した叙述スタイルが特徴的。ウェルズの『盲人の国』(一九〇四年)を意識し、伊藤計劃『ハーモニー』(二〇〇八年)への応答を含んでいる。意識が消滅した存在との共生可能性が模索されている。


・『Delivery』早川書房(ハヤカワSFシリーズJコレクション)2012/5(第三十三回日本SF大賞候補作)
 本イベントで主な議題となる作品。


●連載


〈創作集団「NEO」のシェアードワールド企画「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」(オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり)にて、ハードボイルド青春群像シリーズ「まなざしの街」を連載中〉
・「眼差し」まなざしの街1(九十九神曼荼羅シリーズ) 2012/9
・「メモされた未来」まなざしの街2(九十九神曼荼羅シリーズ) 2012/10
・「黒星ヒットマン」まなざしの街3(九十九神曼荼羅シリーズ) 2012/12
・「邂逅」まなざしの街4(九十九神曼荼羅シリーズ) 2013/2
・「報復の街 前編」(まなざしの街5九十九神曼荼羅シリーズ) 2013/6
・「報復の街 後編」まなざしの街6(九十九神曼荼羅シリーズ)2013/7


すべて、小学館eBOOKsにて電子書籍で販売。



●短編


・「命、短し」小松左京マガジン十五巻2004/7
 遺伝子の突然変異によって二十歳で寿命が来てしまう世界で家族の意義を問う。すでに本作の段階から、先鋭的なコンセプトが模索されていた。


・「海はあなたと」SFJapan 2004winter 徳間書店2004/12
 『Delivery』の原型。恒星間宇宙船の生体CPUとなった語り手が、妻や世界を追想するポストヒューマンSF。独特の叙情が読者の心を打つ。


・「ハルシネーション」SFJapan 2006spring 徳間書店2006/3
 『光を忘れた星で』の原型。交通事故によって、動いた存在が見えなくなった主人公。死んだ妹だけは知覚できる。認知科学アウグスティヌスの時間論の交錯に瞠目。


・「娘の望み」進化論(異形コレクション)光文社2006/8
 言語を理解できず、音楽や絵画に特異な才能を発揮した語り手の娘は、やがて、世界を塗り替えていく。取り残された語り手の選択と、娘の真意とは……?


・「俺たちの冥福」心霊理論(異形コレクション)光文社2007/8
 下っ端ヤクザの語り手は、見殺しにした親友の霊に悩まされる。それは脳に刻まれた「クオリア」が原因だった。意外な結末は、どことなくイーガン風。


・「うつろなテレポーター」SFJapan 2007WINTER 徳間書店2007/12(虚構機関〜年刊日本SF傑作選 東京創元社に転載2008/12)
 作者随一のハードSF。並行宇宙論量子テレポーテーションをハートウォーミングに変奏している。


・「ある世界の日常」 東京理科大学科学教養誌「理大科学フォーラム」六月号 2008/6
 疑似ドキュメンタリー方式を採用した異色短篇。脳科学は祖父をいかに変えたのか。著者の遊び心と、シリアスな問題意識が融合する。


・「産森(うぶもり)」 未来妖怪(異形コレクション)光文社2008/7
 子どもを「間引いた」という民間伝承の残る森に、突如、赤ん坊が現われる。実はその赤ん坊は、クローニングされた主人公だった……。民俗性と自然科学の見事な融合。


・「カミが眠る島」 SFJapan 2008SUMMER 徳間書店2008/8
 フリーライター夜刀光一郎を主人公とする本格伝奇ミステリ。結末部が読者の度肝を抜くものの、実は殊能将之のある作品を読む前に書かれた。なんと続編を鋭意執筆中とか。


・「エモーション・パーツ」 SFJapan 2009AUTUMN 徳間書店2009/9
 人工大脳の故障により、代替脳をインプラントされた主人公は、奇妙な既視感に悩まされるが、それは新たな「家族」との出逢いを意味していた。


・「一千億次元の眠り」 SFJapan 2011SPRING 徳間書店2011/3
 お得意のハードボイルドタッチで描かれる、多次元ものの極致。バリントン・J・ベイリー風「バカSF」か。著者の懐の深さがよくわかる。


・「宇宙の終わりの嘘つき少年」 SF作家の書店「PlanetariArt」BIGLOBEパブリッシングにて電子書籍で販売2012/2
 終末テーマに挑んだ中篇。八杉の少年描写の背後にある「昏さ」を垣間見ることができる。片理誠『エンドレス・ガーデン』と、対にして読まれるべき。


・「それを昔の人は魂と呼んでいた」 電子文藝誌「アレ!」二月号に掲載2013/1
 アイデンティティを掘り下げ、「魂」の意義を正面からポストヒューマニズムの意義を問い、テッド・チャンを彷彿させる佳作。これもまた『ハーモニー』への応答である。


・「私から見た世界」小説現代七月号 講談社に掲載2013/6
 最新作。水頭症の一種で、身近な者を「存在しない者」と認識するようになってしまった語り手は世界を放浪し……。短篇のなかで、現時点の最高傑作だろう。


ショートショート日本SF作家クラブ公認ネットマガジンSF Prologue Wave掲載ぶんは、八杉将司コーナーで参照するのが便利です)


・「夏がきた」ひとにぎりの異形(異形コレクション)光文社に掲載2007/12


・「ブライアン」日本SF作家クラブ公認ネットマガジンSF Prologue Waveに掲載2011/5


・「ムカエニキタヨ」SF Prologue Waveに掲載2011/7


・「幽霊」SF Prologue Waveに掲載2011/10


・「ぼくの時間、きみの時間」物語のルミナリエ異形コレクション)光文社に掲載2011/12


・「神が死んだ日」SF Prologue Waveに掲載2012/1


・「パンツと髪の毛と学生証」SF Prologue Waveに掲載2012/2


・「沸騰する宇宙」SF Prologue Waveに掲載2012/5


・「北海道沈没」SF Prologue Waveに掲載2012/7


・「幻握」SF Prologue Waveに掲載2012/10


・「永劫少年」SF Prologue Waveに掲載2012/12


・「宇宙ステーションの幽霊」SF Prologue Waveに掲載2013/5



●文庫解説


・上田早夕里著「火星ダーク・バラード」(第四回小松左京賞受賞作・文庫版)ハルキ文庫 2008/10


機本伸司著「神様のパラドックス」上・下巻 ハルキ文庫2010/11



※本リストは八杉将司氏から提供された情報をもとに、岡和田晃が作成した。その他、コラム・エッセイ・対談などがあるが、本リストでは省略した。