岡和田晃(akiraokawada@gmail.com)と申します。ご遺族のご許可をいただきまして、ゲーム/史学研究者の蔵原大さんが、2020年の2月22日から23日頃、心筋梗塞でお亡くなりになったことをお知らせいたします。
22日に具合が悪いと勤務先に連絡があり、23日に無断欠勤されたそうで、そんなことする人ではないからと勤務先の方がご実家に連絡して、妹さんが警察立ち会いの元24日に確認、という流れだそうです。不幸中の幸いとして、あまり苦しまれた様子はなかったとのこと。
すでにご身内のみで葬儀はお済みでした。お寺さんとの都合で、これから納骨を済ませられるということです。お墓参り等をご希望の方も、納骨以降の話になります。
妹さんは蔵原さんの携帯電話のパスコードを知らなかったらしく、ロックを解除できずに、どちらへ訃報を知らせたらよいかわからなかったそうで、亡くなってから時間が経過してしまいました。
私は蔵原さんとは11年、12年ほどの付き合いで、昨年は私の教えている東海大学の講義にもゲスト講師として招聘し、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』を戦略研究の視点から読む講義をしていただきました。
今年正月にゲーム会(『トンネルズ&トロールズ完全版 コッロールの恐怖』のテストプレイ)をご一緒したのですが、その時は変わらぬご様子で楽しんでおられました。
しかし、いつも参加していた月例の研究会(ボードゲーム読書会@高田馬場)2月末の会を連絡もなく欠席され、Facebook の更新も止まっていたので心配しておりました。
ただそれは杞憂で、すぐに元気な笑顔を見せてくれると思っておりましたので、あまりのことに呆然とし、言葉もありません。
蔵原さんは、来年度からは新しく開学する東京国際工科専門職大学での講師の職も決まっていたことから、意気揚々としておられました。
本当に惜しい人を亡くしました。
1972年生まれの蔵原さんは、早稲田大学出身で、社会人になってSEとして働き、お金を貯められてから早稲田大学の大学院で、修士号を取られました。
他人に弱みを見せることが決してなかった人ですが、苦労人です。
その後、国立公文書館を経て、民間企業、東京大学や東京電機大学でお勤めになられました。並行して、研究や様々な企画を進められてきました。企業や公的機関への取材にも定評がありました。
ウォーゲームサークルGood Gamers Group、早稲田大学シミュレーションゲーム研究会でウォーゲームやRPGに親しみ、高じて遊戯史学会の広報担当理事を務められていたこともありました。戦略研究学会、日本アーカイブズ学会、日本デジタルゲーム学会、アルテス=リベラレス研究所にも所属されていました。
史学研究とゲーム(ウォーゲーム、シリアスゲーム)研究を、両方されていた稀有な方です。今はゲーム研究者と自認しておられました。
近年はレヴィ=ストロースなどの構造主義や、網野善彦の民衆史等の研究書をよく読まれていて、その成果を研究会や市民講座等で披露されていました。
研究者としての蔵原さんの研究業績(著書、論文、訳書、研究発表等)について、2015年末までのものは、個人的にいただいたことがあるので、以下に共有します。
Dropbox - 蔵原_研究業績.xls - Simplify your life
以降の論文では、こちらをダウンロードして読むことができます。
また、書評SNS・シミルボンにも、多数のコラムを書かれています。
私が運営していたサイトAnalog Game Studiesにも、コラムや講座の聴講記があります。
日本SF作家クラブのネットマガジンSF Prologue Waveにも、小説や戯曲等を書かれています。
私が翻訳に参加した『エクリプス・フェイズ』(新紀元社)というRPGのルールブックでは、校正協力もいただきました。蔵原さんはこの作品を、心から愛しておられました。
蔵原さんの史学やゲームへの豊かな知見、また新しい企画への積極性や、知への飽くなき向上心には、常に刺激を与えられてきました。
研究、仕事、ゲームと、あれこれ共闘し、苦楽を共にしてきたので、とても悲しく、自分の一部が欠けたような気がします。
3.11東日本大震災の時、沢山の防災用具を持ち歩いて、「これしきのことではくたばりませんよ」とタフに笑っていたのが思い出されてなりません。
追記:東京電機大学で蔵原さんの同僚だった石塚正英先生と連絡がとれました。石塚先生はいち早く訃報を知らされたそうで、現在、ささやかな遺稿集を編んでおられるとのこと。私も協力することになりましたので、彼の原稿をお持ちの方はお知らせください。
追記2:石塚先生は、岐阜女子大学の助川幸逸郎先生から聞いたそうで、助川先生にお伝えしたのは、助川先生と蔵原さんとの共通の知人である、はるかぜ書房の社長さんでした。蔵原さんは、社長さんの子供さんの家庭教師のような仕事をされていたということです。私も社長さんに(蔵原さんと一緒に)ゲームを教えてくれと、昨年末に蔵原さんから打診されていました。
助川先生のお話では、蔵原さんは発熱して寝込まれていて、そのあげくに心臓発作を起こされたということでした。ご遺体に対する解剖も行われたけれども、事件性はなかったということのようです。
追記3:電大の石塚先生と共同で、蔵原大さんの遺稿追悼文集を作成することになりました。電子オンリーになりそうですが、執筆希望の方は以下の要項でお願いいたします。
・形式・分量自由(ただし、テキストファイルかWordファイルですと助かります)
・締め切りは4/25 正午
こちらでお書きいただければと思います。
何卒よろしくお願い申し上げます。参加をご希望の方は、人数を把握するため、事前にakiraokawada@gmail.comにまで送っていただければと存じます。
なお、数日前、蔵原大さんのお父様が逝去されたとの連絡が、ご遺族より電大の事務宛にあったそうです。