東海大学文芸創作学科2021年度春学期シラバス(ゲームデザイン論)

東海大学文芸創作学科2021年度春学期シラバスゲームデザイン論)

 今年度も東海大学文芸創作学科での非常勤講師として勤務します。以下、利便性を鑑み、シラバスをこちらにも公開しておきます。

 

2021年度 春学期  

授業科目名 「サブカルチャーと文学」

曜日 時限  水-3

テーマ 「反サブカルチャー」としての文学的ゲームデザイン入門

キーワード  ゲームデザイン シナリオ創作 文芸評論

 

【授業要旨または授業概要】

 

 シラバス編成の都合上、本講義タイトルには「サブカルチャー」と掲げられていますが、講師はこの水曜3限の講義を「ゲームデザイン論」と呼ぶことにしています。受講生の皆さんも講義内や私宛の連絡では、この講義を「ゲームデザイン論」と呼んでください。

 とかく“ゲームは「サブカルチャー」であり、大学で講じられる古典的な「文学」よりも質的に劣っている”……という偏見が世に蔓延していますが、本講義はそのような立場を採りません。すなわち、ゲームが「サブカルチャー」であるという通念を裏返す「反サブカルチャー」論であり、ゲーム史と文学史の交点を、実作を通じた「世界文学」の観点から探っていく、というアプローチを採っていきます。

 また、ゲームデザインというとデジタルゲーム(コンピュータゲーム)を想起する方が多いかもしれません。もちろんデジタルゲームの歴史と現在にも、必要に応じて触れていきますが、本講義では、アナログゲーム(電源を使わないゲーム)、とりわけストーリーゲーム/ナラティヴゲームというものをデザインしていく作業を中核に据えます。

 よって、プログラミングの知識や技術は不要ですが、代わりに、土台となる文学的な教養を深め、知見を広げていく作業が必要不可欠となります。

 さらには、講義の内外で、古典的から最新系の幻想文学やSF・ホラー等を可能な限り精読し、積極的にテストプレイをこなしていく姿勢が求められます。なお、規範となるのは、「日本」的なムラ意識とは異なるタイプ、とりわけ英語圏の作品群になります。

 受講生の多くは楽しみながら、原稿用紙で何十枚もあるレポートを仕上げてしまいます。端的に言えば、それだけ楽しくやり甲斐はあるが、ラクに単位を取得したい人には向いていない講義ということになります。

 

 

 同名の講座が水曜3限・水曜4限で展開されます。意欲のある受講者は、両方の受講も歓迎します(ただし、単位は片方しか出ず、もう片方は自由聴講扱いとなります)。既習者の受講も歓迎します(こちらも自由聴講扱いとなります)。

 

 ※より詳しくは、続けて【授業計画】の項目をご参照ください。

 

<実務経験のある教員による授業科目>

 

 

【学修の到達目標】

・日常的に接する文化環境に対しての批判的な視座を持ち、その淵源を探り新たな表現を産むために必要な、最低限の知識と向学心を涵養します。

クリエイティヴライティングの基礎を、ゲームデザインという作業を介して習得します。

・ゲームの改良(ディベロップメント)のプロセスを介し、知識を受動的ではなく能動的に定着させる方法を学びます。

ゲームデザインを通じて既存の文学史を再検討し、文学とゲームを融合させた新たな表現を切り拓いていくための土台を身に着けます。

・ゲームとしての文学を扱った批評を講読していくことで、悪しき意味での「クールジャパン」な「サブカルチャー」礼賛には終わらない、学術的な批評精神を身に着けます。

・文学作品の精読と批評理論の基礎を習得し、それを自ら応用させていく姿勢が「癖」になるようにします。

 

【授業計画】

◆スケジュール

<注意:水曜3限では、ゲームデザインを中心に学習します。水曜3限と4限では内容が異なります>

 

【原則対面講義、場合によっては遠隔講義へ移行の可能性あり】

 講師は現役のゲームデザイナー(ゲーム作家)であり、同時に評論家・研究家でもあります。それらの成果を、随時共有することで、常に学生が最新の情報へアクセスできるように努めます。将来、何らかの形で仕事として「ゲームと文学の交点」に関わっていきたい方は、大いに歓迎します。

 過去履修者の継続出席、学部・他学科からの聴講も歓迎しますが、途中で離脱するケースが少なくないので、いちどやると決めたら、最後まで受講することを推奨します。さもなければ、身に付きません。

 

【原則として対面講義ですが、コロナ・ウイルス禍の影響で、途中から遠隔講義へ移行する可能性があります。いずれにおいても、Zoom等の活用も視野に入れますが、遠隔講義のスタイルは、受講生の人数によって流動的に変化します。例年以上に、授業外での課題製作とメール等での提出を重視することになります】

 

<以下は暫定的な授業計画で、受講生の人数や志向性に応じ、随時修正・変更を加えていくため、講義内での指示を聞き漏らさないようにしてください>

 

1:オリエンテーションRPGソロアドベンチャー体験

 講義の概要を伝え、自己紹介を兼ね、実際に講師が書いた新作ミニ・ソロアドベンチャーを数本プレイしてもらい、その構造を分析していきます。

 

2:幻想文学RPG

 ルイス・キャロル不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』のような英国古典幻想文学と、そのアダプテーション(翻案)を確認します。

次いで、それらがRPGソロアドベンチャー「怪奇の国のアリス」(ジョエル・マーラー著、『怪奇の国のアリス+怪奇の国!』所収)にどう活かされているのかを比較・分析します。

 

3:RPGの歴史と現在

 最新のソロアドベンチャー「怪奇の国のアリス」(ジョエル・マーラー著)と、古典ソロアドベンチャー「怪奇の国!」(キース・A・アボット著、『怪奇の国のアリス+怪奇の国!』所収)をプレイし、比較・考察をします。

 

4:ソロアドベンチャーから多人数セッションへ(1)

 『アリス』を題材にした多人数用RPGシナリオ「天空の国のアリス」(『怪奇の国のアリス+怪奇の国!』所収)を実際にプレイします(序盤)。

 RPG小説集の傑作『ミッション・インプポッシブル』収録作から1~2編を輪読していきます。

 

5:ソロアドベンチャーから多人数セッションへ(2)

 多人数用RPGシナリオ「天空の国のアリス」を終盤までプレイします。

 RPG小説集の傑作『ミッション・インプポッシブル』収録作から1~2編を輪読していきます。

 

6:ソロアドベンチャーから多人数セッションへ(3)

 「天空のアリス」の続編「トロールの国のアリス」(「ウォーロック・マガジン」Vol.9)を実際にプレイします。

 RPG小説集の傑作『ミッション・インプポッシブル』収録作から1~2編を輪読していきます。

 

7:ソロアドベンチャーから多人数セッションへ(2)

 「トロールの国のアリス」を最後までプレイします。

 RPG小説集の傑作『ミッション・インプポッシブル』収録作から1~2編を輪読していきます。

 

8:SF-RPG入門(1)

 ポストヒューマンSF-RPG『エクリプス・フェイズ』の世界観を概説しつつ、ソロアドベンチャー「流れよわが涙、と監視官は言った」(「Role and Roll」)をプレイし、ファンタジーとSFの違いから、何が見えるのかを考察します。

 また、関連して『エクリプス・フェイズ』シェアード・ワールド小説を1~2編輪読します。

 

9:SF-RPG入門(2)

 ポストヒューマンSF-RPG『エクリプス・フェイズ』の講師の新作ソロアドベンチャー(書き下ろし予定)を実際にプレイし、SFが現代思想現代文学と、どう切り結ぶのかを確認します。

 

10:ナラティヴ・スタイルのRPG体験(1)

 短時間で試せるナラティヴ・スタイルのRPGである各種ゲームポエムを、実際にプレイします。

 また、RPGシナリオの創作を実際にスタートし、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。

 

11:ナラティヴ・スタイルのRPG体験(2)

 ナラティヴ・スタイルのヒストリカルRPGである『モンセギュール1244』を実際にプレイします。

 また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。

 

12:ナラティヴ・スタイルのRPG体験(3)

 ナラティヴ・スタイルのヒストリカルRPGである『モンセギュール1244』を実際にプレイします。

 また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。

 

13:マーダー・ミステリー入門(1)

 「参加する推理小説」であるマーダー・ミステリーを、実際にプレイします(進度によってはとりやめ、講師オリジナルの児童文学RPGのプレイになるかもしれません)。

また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。

 

14:マーダー・ミステリー入門(2)

 「参加する推理小説」であるマーダー・ミステリーを、実際にプレイします。幻想文学評論の観点から分析も行います(進度によってはとりやめ、講師オリジナルの児童文学RPGのプレイになるかもしれません)。

 また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を実施します。

 

◆予習・復習

 ゲームデザインはプレイングの場数を踏まなければ、まったく書くことができない営みです。ソロアドベンチャーや多人数用シナリオ、ゲームポエムやマーダー・ミステリー等を積極的にプレイしてみてください。

 創作は研究あってこそ成り立ちます。幅広い人文科学的素養こそ必要です。講義で指示した文献を確実に消化してください。

 各種フィードバックを含め、授業外でも積極的な学習が求められます。これを怠るとレポートが書けず、挫折を余儀なくされることになります。

 

予習:講義内で指示された課題をこなし、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義内での指摘を中心に作品を書き直し、また講義外でテストプレイの機会を確保し、ディヴェロップメント(改良)を行う(100分)

 

【履修上の注意点】

 講義の際には、相当分量の論文や小説、各種ルールを読み進めていくことになります。関連して文献も紹介しますが、少々難解かもしれない理論も含まれます。自前でのゲーム会の運営など、授業外でも相当な努力が必要になります。講義へのフィードバックを毎回記述してもらい、それを講師が講義内容へ反映させていきます。その他、双方向的な講義になりますので、積極的な協力・参加が求められます。

 

【成績評価の基準および方法】

  評価のポイントは、以下の4点です。

 

1)ゲームデザインという作業の特性が理解できているか(約20%)

2)作品の内実や、周辺に存在する文脈が理解できているか(約20%)

3)課題へ積極的に取り組み、読解・創作・論文執筆ができているか(約40%)

4)批評的であることの意義が理解できているか(約20%)

 

 毎回、フィードバックシートの記述を行い、それを小テストおよび出席の代わりとします。それとは別に、中間・期末レポートを課します。なお、レポート執筆の際にWikipediaを参考資料に用いることを禁止します。代返等・コピペ等の不正行為に関しては厳正に対処します。各種文章がしっかり書けていることは、評価の前提条件とします。

 上記の学習目標が達せられているかどうかを、フィードバックを含む出席点(40点)、レポート(60点)、のウエイトで評価して総合的に判定します。具体例として、その合計が90点以上をS評価、80点以上90点未満をS評価、70点以上80点未満をB評価、60点以上70点未満をC評価とします。

 ただし、出席回数が7割未満の場合、この限りではありません。

 

 なお、2020年度後期(秋学期)のレポート課題は、オリジナルのRPGシナリオ、ソロアドベンチャー、ゲームポエム等をデザインするという試みでした。優秀作は、プロのゲームデザイナーに見てもらう場合があるので、あらかじめご了承ください。内容は随時変更する可能性があり、指示を聞き漏らさないようにすること。

 

【教科書・参考書】

区分 書名 著者名 発行元 定価

教科書 怪奇の国のアリス+怪奇の国! ジョエル・マーラーほか グループSNE/書苑新社 1800

怪奇の国のアリス (T&Tアドベンチャー・シリーズ9)
 

教科書 ミッション・インプポッシブル リズ・ダンフォースほか グループSNE/書苑新社 2500

 

【その他の教材】

「FT新聞」No.2855掲載、『トンネルズ&トロールズ』完全版の多人数用シナリオ『運命の森で待つ試練』(作:岡和田晃/英真弥)

https://akiraokawada.hatenablog.com/entry/2020/11/20/091536

 ゲームポエム「殿、粗相でござる」(デザイン:出島将大、改訂:岡和田晃) 

https://note.com/orionaveugle/n/n7d1d7cbc9c17

 2019年度秋学期および2020年春学期の優秀レポートを、受講生の同意のもとに講師が改稿したものです

 その他、講義内で随時指示します。

 

【教員との連絡方法】

 

  akiraokawada@gmail.comで事前にアポイントを取ってください。

 

 初回授業終了時に、自己紹介のメールを送ってください。