2022年春学期水曜3限シラバス(ゲームデザイン論)

 東海大学文化社会学部文芸創作学科で開講する掲題の講義の受講生の利便性に鑑み、シラバスをサイトでも公開します。

 

 

サブカルチャーと文学

科目キーワード

/Course Keywords             ゲームデザイン、シナリオ創作、文芸評論

科目と関連する実務経験

/Related Practical Experience         有

アクティブラーニング科目

/Active Learning Course 該当する

地域志向による学修内容

/Regional/Area Content 無 

他科目との関係

/Relation to Other Courses               同名の講座が水曜3限・水曜4限で展開されますが、内容はまったく異なります。意欲のある受講者は、両方の受講も歓迎します(ただし、単位は片方しか出ず、もう片方は自由聴講扱いとなります)。既習者の受講も歓迎します(こちらも自由聴講扱いとなります)。

 過去履修者の継続出席、学部・他学科からの聴講も歓迎しますが、途中で離脱するケースが少なくないので、いちどやると決めたら、最後まで受講することを推奨します。さもなければ、身に付きません。

科目の目的・学修内容

/Course Objectives and Content   

科目の要旨・概要

/Course Description/Summary       あらゆる文化に貴賤はなく、各々の表現形式の差異と技術の高低が存在するにすぎません。しかしながら、既存の「文学」の側には権威に寄りかかった事大主義があり、対して「サブカルチャー」とされる側には商業主義を基軸とした美学や倫理の不在があって、相互に排他的な文脈を形成してしまっています。それは大変不幸なことであるため、本講義ではいったん文学史を遡行しながら、「文学」と、現代的な「サブカルチャー」の代表格とされる「ゲーム」のあり方を、理論と創作の融合を介して問い直し、既存の「サブカルチャー」の枠組みを超えた、新たな表現を生み出すための基礎的な教養と技倆の獲得を目指します。

 シラバス編成の都合上、本講義タイトルには「サブカルチャー」と掲げられていますが、講師はこの水曜3限の講義を「ゲームデザイン論」と呼ぶことにしています。受講生の皆さんも講義内や私宛の連絡では、この講義を「ゲームデザイン論」と呼んでください。

 とかく“ゲームは「サブカルチャー」であり、大学で講じられる古典的な「文学」よりも質的に劣っている”……という謬見が世に蔓延していますが、本講義はそのような立場を採りません。すなわち、ゲームが「サブカルチャー」であるという通念を裏返す「反サブカルチャー」論であり、ゲーム史と文学史の交点を、実作を通じた「世界文学」の観点から探っていく、というアプローチを採っていきます。

 また、ゲームデザインというとデジタルゲーム(コンピュータゲーム)を想起する方が多いかもしれません。もちろんデジタルゲームの歴史と現在にも、必要に応じて触れていきますが、本講義では、アナログゲーム(電源を使わないゲーム)、とりわけストーリーゲーム/ナラティヴゲームというものをデザインしていく作業を中核に据えます。

 よって、プログラミングの知識や技術は不要ですが、代わりに、土台となる文学的な教養を深め、知見を広げていく作業が必要不可欠となります

実務経験に基づく学修内容

/Content Related to Practical Experience      講師は現役のゲームデザイナー(ゲーム作家)であり、同時に評論家・研究家でもあります。2007年に商業デビューしてから、「Role and Roll」「Lead and Read」「GAME JAPAN」「R・P・G」「4Gamer.net」「TtTマガジン」「ウォーロック・マガジン」「GMウォーロック」ほかの商業媒体で書き続け、『ウォーハンマーRPG』(第2版・4版、ホビージャパン)、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(第3.5版・4版、ホビージャパン)、『エクリプス・フェイズ』(新紀元社)、『トンネルズ&トロールズ完全版』(グループSNE)、『ガンドッグゼロ』(新紀元社)等のタイトルに関係した出版を多数行ってきました。また『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷 SF・幻想文学・ゲーム論集』(アトリエサード)ほか、ゲーム研究の学術的著作も数多くあります。

 それらの成果を、随時共有することで、常に学生が歴史と現在へアクセスできるように努めます。将来、何らかの形で仕事として「ゲームと文学の交点」に関わっていきたい方は、大いに歓迎します。

 

アクティブ・ラーニングによる学修内容

/Active Learning Content                 講義内で実際に各種のゲーム作品をプレイし、古典的から最新系の幻想文学やSF・ホラー等を可能な限り精読します。

 出席の代わりに、毎回の課題をこなすことで、基礎的なデザイン・批評スキルを身に着けます。

 レポート執筆のためには、講義外でのテストプレイが必須です。

 受講生の多くは楽しみながら、原稿用紙で何十枚もあるレポートを仕上げてしまいます。端的に言えば、それだけ楽しくやり甲斐はあるが、ラクに単位を取得したい人には向いていない講義ということになります。

 

大学全体レベルのDP

/University-level DP         『挑み力』問題発見力:困難と思える問題・課題を自分のこととして捉え、向き合う。

学位プログラムレベルDP

/Degree Program-level DP              汎用的技能

 

本科目の学修成果目標(ラーニングアウトカム)

/Course Learning Outcomes           ・日常的に接する文化環境に対しての批判的な視座を持ち、その淵源を探り新たな表現を産むために必要な、最低限の知識と向学心を涵養します。

クリエイティヴ・ライティングの基礎を、ゲームデザインという作業を介して習得します。

・ゲームの改良(ディベロップメント)のプロセスを介し、知識を受動的ではなく能動的に定着させる方法を学びます。

ゲームデザインを通じて既存の文学史を再検討し、文学とゲームを融合させた新たな表現を切り拓いていくための土台を身に着けます。

・ゲームとしての文学を扱った批評を講読していくことで、悪しき意味での「クールジャパン」な「サブカルチャー」礼賛には終わらない、学術的な批評精神を身に着けます。

・文学作品の精読と批評理論の基礎を習得し、それを自ら応用させていく姿勢が「癖」になるようにします。

 

成績評価基準・方法

/Grading Method             

成績評価の基準・方法

/Grading Method               評価のポイントは、以下の4点です。

1)ゲームデザインという作業の特性が理解できているか(約20%)

2)作品の内実や、周辺に存在する文脈が理解できているか(約20%)

3)課題へ積極的に取り組み、読解・創作・論文執筆ができているか(約40%)

4)批評的であることの意義が理解できているか(約20%)

 毎回、フィードバックシートの記述を行い、それを小テストおよび出席の代わりとします。それとは別に、中間・期末レポートを課します。なお、レポート執筆の際にWikipediaを参考資料に用いることを禁止します。代返等・コピペ等の不正行為に関しては厳正に対処します。各種文章がしっかり書けていることは、評価の前提条件とします。

 上記の学習目標が達せられているかどうかを、フィードバックを含む出席点(40点)、レポート(60点)、のウエイトで評価して総合的に判定します。具体例として、その合計が90点以上をS評価、80点以上90点未満をS評価、70点以上80点未満をB評価、60点以上70点未満をC評価とします。

 ただし、出席回数が7割未満の場合、この限りではありません。

 なお、2021年度のレポート課題は、オリジナルのRPGシナリオ、ソロアドベンチャー、ゲームポエム等をデザインするという試みでした。内容は随時変更する可能性があり、指示を聞き漏らさないようにすること。

 

課題・試験・レポート等のフィードバック方法

/Method of Feedback (e.g. Assignments, Exams, Reports)         フィードバックは講義内で随時行います。期末レポートの優秀作は、プロのゲームデザイナーに見てもらう場合があるので、あらかじめご了承ください。

 

履修上の注意点

/Notes                  講義の際には、相当分量の論文や小説、各種ルールを読み進めていくことになります。関連して文献も紹介しますが、少々難解かもしれない理論も含まれます。自前でのゲーム会の運営など、授業外でも相当な努力が必要になります。講義へのフィードバックを毎回記述してもらい、それを講師が講義内容へ反映させていきます。その他、双方向的な講義になりますので、積極的な協力・参加が求められます。

 ウイルス禍の状況により、一部または全部の講義を遠隔に移行する可能性があります。

 

シラバス配付方法

/Syllabus Distribution Method        受講生が予め印刷ないしPDFをダウンロードして授業に持参のこと。

 

教科書

/Textbooks         ・傭兵剣士、J・ウィルソン/岡和田晃、書苑新社、1800

参考図書・その他の教材

/Other Course Materials ・ウォーハンマーRPG スターターセット、岡和田晃ほか訳、ホビージャパン、3000

・再着装(リスリーヴ)の記憶――〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー岡和田晃編、アトリエサード、2700

・エクリプス・フェイズ ソースブック サンワード、岡和田晃ほか訳、新紀元社

ブルーフォレスト物語 リバイバル・エディション、伏見健二、グランペール

 

 以下は、過去の受講生の優秀レポートを、(受講生の同意のもと)必要に応じて講師が改稿したものの一例です。

・「FT新聞」No.3175掲載、『ピークス・オブ・ファンタジー』用シナリオ『英雄の祭典』

https://analoggamestudies.seesaa.net/article/483803699.html

・「FT新聞」No.3235掲載、ゲームポエム『檸檬

https://analoggamestudies.seesaa.net/article/481294559.html

 

担当教員への連絡方法

/Method of Communication with Instructor                

研究室 他

/Office                  14号館講師室ですが、必ず事前にアポイントをとってください。

連絡方法

/Contact Information        akiraokawada@gmail.com

オフィスアワー

/Office Hours     原則としてメールで事前にご相談ください。

 

1             1             オリエンテーション~ボード/カードゲームの可能性を知る(1)         面接授業/講義の概要を伝え、受講生の自己紹介の後、古典ボードゲームアクワイア』の作者シド・サクソンが著した『シド・サクソンのゲーム大全』から「ソリティア・ダイス」を実際にプレイし、アナログゲームのシステムデザインに慣れ親しみます。            講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

2             2             ボード/カードゲームの可能性を知る(2)                  面接授業/『シド・サクソンのゲーム大全』から、前回とは異なる作品(参加者の資質に合わせて調整)をプレイし、両者を比較しつつ、その構造と機能を分析します。       講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

3             3             ボード/カードゲームの可能性を知る(3)                  面接授業/『シド・サクソンのゲーム大全』から、(1)~(2)とは異なる作品をプレイし、今度はルールの改良ができるのか、そこを考えてみます。   講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

4             4             ウォーゲームをプレイする(1)     面接授業/歴史的な状況をシミュレートした、アバロンヒル社の以降のデザイン・メカニズムに基づくウォーゲーム(『スターリングラード攻防戦』、『D―DAY』、『ドイッチュラント・ウンターゲルト』など)を実際にプレイし、そのゲーム・メカニズムを把握します。   講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

5             5             ウォーゲームをプレイする(2)     面接授業/前回プレイした1対1タイプとは異なる、マルチゲーム構造の作品を実際にプレイし(『魔法の島の闘い』等)、デザインのあり方がどう変わってくるのかを分析します。                講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

6             6             6:ユーロゲームをプレイする         面接授業/アメリカのゲームデザイン思想とは性格が異なる、ドイツを中心に発展を遂げたボードゲームであるユーロゲームを実際にプレイし(『遺産相続ゲーム』等)、プレイヤー間のインタラクションが、どのように合理化されているのかを考えます。                講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

7             7             ゲームポエムをプレイする                面接授業/講師や学生が作ったゲームポエム(ナラティヴ・スタイルのミニマムなRPG)をプレイし、「ナラティヴ=語り」の自由度を体感してもらいます。                  講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

8             8             ファンタジーRPG入門(1)            面接授業/シンプルなファンタジーRPG『トンネルズ and トロールズ』のキャラクターを実際に創造し、行為判定(セービング・ロール)と戦闘のルールを概説した後、実際に1人用のアドベンチャーをプレイします。       講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

9             9             ファンタジーRPG入門(2)            面接授業/シンプルなファンタジーRPG『トンネルズ and トロールズ』の1人用シナリオを引き続きプレイし、シナリオによる展開の違いを味わいます。そして、多人数でのゲームセッションによる自由度の拡張、小説と連動したストーリーテリングのあり方を考え、実際に執筆をしてみます。                  講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

10           10           ファンタジーRPG入門(3)            面接授業/神聖ローマ帝国時代のドイツをモデルにした背景世界を有するファンタジーRPGウォーハンマーRPG』をプレイし、世界観の奥深さが生成されるストーリーに、どう影響を与えてくるのかを考察します。また、レポートに向けたシナリオの制作を開始します。     講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

11           11           ナラティヴ・スタイルのRPG体験                 面接授業/ナラティヴ・スタイルのヒストリカルRPGである『モンセギュール1244』を実際にプレイします。また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。                  講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

12           12           SF-RPG体験       面接授業/ポストヒューマンSF-RPG『エクリプス・フェイズ』をプレイし、1人用アドベンチャーシェアード・ワールド小説を参照しつつ、その批評性がどこに宿るのかを分析します。また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。 講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

13           13           マーダー・ミステリー入門(1)     面接授業/「参加する推理小説」であるマーダー・ミステリーを、実際にプレイします(進度によってはとりやめ、講師オリジナルの児童文学RPGのプレイになるかもしれません)。また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を行います。

                 講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。

14           14           マーダー・ミステリー入門(2)     面接授業/「参加する推理小説」であるマーダー・ミステリーを、実際にプレイします。幻想文学評論の観点から分析も行います(進度によってはとりやめ、講師オリジナルの児童文学RPGのプレイになるかもしれません)。

 また、進行中のRPGシナリオの創作につき、講義内で講評・ディベロップメント(改良)を実施します。

                 講義後のフィードバックと、指定された作品の事前講読を兼ねた小レポートを提出してもらいます。