2022年春学期水曜4限シラバス(幻想文学・SF論論)

 東海大学文化社会学部文芸創作学科で開講する掲題の講義の受講生の利便性に鑑み、シラバスをサイトでも公開します。

 

/Field of Study   サブカルチャーと文学

科目キーワード

/Course Keywords             幻想文学、SF、批評

科目と関連する実務経験

/Related Practical Experience         有

アクティブラーニング科目

/Active Learning Course 該当する

地域志向による学修内容

/Regional/Area Content 無 

他科目との関係

/Relation to Other Courses               同名の講座が水曜3限・水曜4限で展開されますが、内容はまったく異なります。意欲のある受講者は、両方の受講も歓迎します(ただし、単位は片方しか出ず、もう片方は自由聴講扱いとなります)。既習者の受講も歓迎します(こちらも自由聴講扱いとなります)。

 過去履修者の継続出席、学部・他学科からの聴講も歓迎しますが、途中で離脱するケースが少なくないので、いちどやると決めたら、最後まで受講することを推奨します。さもなければ、身に付きません。

科目の目的・学修内容

/Course Objectives and Content   

科目の要旨・概要

/Course Description/Summary       あらゆる文化に貴賤はなく、各々の表現形式の差異と技術の高低が存在するにすぎません。しかしながら、既存の「文学」の側には権威に寄りかかった事大主義があり、対して「サブカルチャー」とされる側には商業主義を基軸とした美学や倫理の不在があって、相互に排他的な文脈を形成してしまっています。それは大変不幸なことであるため、本講義ではいったん文学史を遡行しながら、「文学」と、現代的な「サブカルチャー」の代表格とされる「幻想文学・SF」のあり方を、理論と創作の融合を介して問い直し、既存の「サブカルチャー」の枠組みを超えた、新たな表現を生み出すための基礎的な教養と技倆の獲得を目指します。

 シラバス編成の都合上、本講義タイトルには「サブカルチャー」と掲げられていますが、講師は水曜3限の講義を「ゲームデザイン論」、水曜4限の講義を「幻想文学・SF論」と呼ぶことにしています。皆さんも、講義内や講師への連絡ではそう呼んでください。

 本講義では広義の幻想文学・SFを扱います。幻想文学・SFは――いまや素朴なリアリズムでは捉えきれない――複雑な現実を的確に表現することができる方法ですが、しばしば文学史においては周縁的な「サブカルチャー」だとみなされてきました。また、大学で講じられるカノン(正典)としての文学は、硬直的なものになることが珍しくありません。

 しかし、本講義では、幻想文学・SFを周縁的でエキセントリック(ex-centric)なものではなく、そこから再帰的に文学の中心そのもの(centric)であるとみなし、その前提で議論を組み立てていきます。ゆえに本講義は、「幻想文学を媒介とした“反”サブカルチャー論」と言うのが正確でしょう。

 

実務経験に基づく学修内容

/Content Related to Practical Experience      講師は2008年以降、幻想文学やSFを中心とした論考や創作を発表しており、『「世界内戦」とわずかな希望 伊藤計劃・SF・現代文学』(第5回日本SF評論賞優秀作)、『北の想像力 〈北海道文学〉と〈北海道SF〉をめぐる思索の旅』(寿郎社)、『反ヘイト・反新自由主義の批評精神 いま読まれるべき文学とは何か』(第50回北海道新聞文学賞創作・評論部門佳作)といった単著・編著のほか、「図書新聞」ほか各種新聞・文芸誌で多数の論考を発表し、現在は翻訳を中心とした幻想文学専門誌「ナイトランド・クォータリー」の編集長をつとめています。2021年から22年にかけても、『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード)、『いかに終わるか 山野浩一発掘小説集』(小鳥遊書房)といった編著を刊行しています。

 以上のような経験をふまえ、歴史と現在をふまえた情報提供・指導を随時行っていきます。

 

アクティブ・ラーニングによる学修内容

/Active Learning Content                 映像資料の分析も交えますが、基本的には小説・現代詩・批評を精読していきます。

 課題のテクストを、時には声を出して精読していきながら、その表現されている細部の機微を身体レベルで自家薬籠中の物としていきます。というのも、いま、創作や批評を試みるにあたって、もっともネックになるのが、絶対的な読書量と咀嚼の不足であり、先人の成果を適切に認識し、身体化できずにいることです。

 それを克服するため、積極的に講義内で議論し、また文章を書いて発表してもらいます。

・日常的に接する文化環境に対しての批判的な視座を持ち、そのルーツを探り新たな表現を産むために必要な(最低限の)知識と好奇心を涵養します。

・悪しき意味で「世間」の流行り廃りに右顧左眄しない、文学を精読する知的な「粘り腰」を身に着けます。そこから、理論を噛ませて視座を広げるコツと学びます。

・既存の文化史・文学史の常識を、徹底的に掘り下げながら盲信しない批評性を獲得し、それをオリジナリティへ昇華させることを目指します。

現代文学とSF・ミステリ・幻想文学の各「ジャンル」で蓄積されてきた批評理論の基礎を習得します。またカルチュラルスタディーズ、ジェンダーポストコロニアル理論といった、文化批評の基礎を習得します。

大学全体レベルのDP

/University-level DP         『挑み力』問題発見力:困難と思える問題・課題を自分のこととして捉え、向き合う。

学位プログラムレベルDP

/Degree Program-level DP              汎用的技能

本科目の学修成果目標(ラーニングアウトカム)

/Course Learning Outcomes           ・日常的に接する文化環境に対しての批判的な視座を持ち、そのルーツを探り新たな表現を産むために必要な(最低限の)知識と好奇心を涵養します。

・悪しき意味で「世間」の流行り廃りに右顧左眄しない、文学を精読する知的な「粘り腰」を身に着けます。そこから、理論を噛ませて視座を広げるコツと学びます。

・既存の文化史・文学史の常識を、徹底的に掘り下げながら盲信しない批評性を獲得し、それをオリジナリティへ昇華させることを目指します。

現代文学とSF・ミステリ・幻想文学の各「ジャンル」で蓄積されてきた批評理論の基礎を習得します。またカルチュラルスタディーズ、ジェンダーポストコロニアル理論といった、文化批評の基礎を習得します。

成績評価基準・方法

/Grading Method             

成績評価の基準・方法

/Grading Method               評価のポイントは、以下の4点です。

 

1)取り扱った作家・作品の内在的特性が理解できているか(約20%)

2)作品の周辺に存在する文脈が理解できているか(約20%)

3)テクストへ積極的に取り組み、読解・創作ができているか(約40%)

4)批評的であることの意義が理解できているか(約20%)

 

 毎回、フィードバックシートへの記入を行ってもらい、それを出欠確認と小テストの代わりとします。それとは別に、中間レポート、期末レポートが課されます。

 なお、レポート執筆の際にWikipediaを参考資料に用いることを禁止します。共作を行う場合は、事前に申請して講師の許可を得てください。代返等・コピペ等の不正行為に関しては厳正に対処します。各種文章がしっかり書けていることは、評価の前提条件とします。

 上記の学習目標が達せられているかどうかを、フィードバックを含む出席点(40点)、レポート(60点)、のウエイトで評価して総合的に判定します。具体例として、その合計が90点以上をS評価、80点以上90点未満をS評価、70点以上80点未満をB評価、60点以上70点未満をC評価とします。

 ただし、出席回数が7割未満の場合、この限りではありません。

課題・試験・レポート等のフィードバック方法

/Method of Feedback (e.g. Assignments, Exams, Reports)         随時講義内でフィードバックを行い、レポートの優秀作はプロの書き手に見てもらうことがあります。あらかじめご了承ください。

履修上の注意点

/Notes                  講義の際には、相当分量の論文や小説・現代詩を読み進めていくことになります。関連して文献も紹介しますが、少々難解かもしれない理論も含まれます。講義へのフィードバックを毎回記入してもらい、それを講師が講義内容へ反映させていきます。その他、双方向的な講義になりますので、積極的な協力・参加が求められます。期末レポートのほかに、中間レポートがあります。

 本気で将来、何らかの形で「仕事」として文章を書いていきたい人は、大いに歓迎します。前期履修者の継続出席、他学部・他学科からの聴講も歓迎しますが、途中で離脱するケースが多いので、いちどやると決めたら、最後まで受講することを推奨します。さもなければ、身につきません。

 ウイルス禍の状況に応じ、一部または全部の講義を遠隔に移行する可能性があります。

 

シラバス配付方法

/Syllabus Distribution Method        あらかじめ学生がシラバスを印刷またはダウンロードして授業に持参ください。

教科書

/Textbooks         ・「ナイトランド・クォータリー vol.28 暗黒の世界と内なる異形」、岡和田晃編集長、アトリエサード/書苑新社、1870円

参考図書・その他の教材

/Other Course Materials 2021年度秋学期のレポートの最優秀作はウェブにて公開しています。参考にしてください。

 チェンジリングと、チェンジリングのこれからについての考察(平岡彩音

https://shimirubon.jp/columns/1707126

 それ以前の受講生によるレポート(評論)の最優秀作は、以下の4点です。過去の受講生のなかには、商業誌で書くようになった人もいますので、参考になると思います。

https://shimirubon.jp/columns/1701319

https://shimirubon.jp/columns/1690934

https://shimirubon.jp/reviews/1698553

https://shimirubon.jp/columns/1705558

担当教員への連絡方法

/Method of Communication with Instructor                

研究室 他

/Office                  14号館講師室。ただし、事前に必ずアポイントメントをとってください。

連絡方法

/Contact Information       akiraokawada@gmail.com

オフィスアワー

/Office Hours     事前にメールでご相談ください。

 

1             1             ガイダンス            面接授業/講義の概要を解説し、受講生の自己紹介を行なってもらった後、C・J・チェリイ(「ナイトランド・クォータリー」、以下「NLQ」Vol.27)およびパトリシア・A・マキリップ「ウンディーネ」(NLQ増刊号)を講読し、創作や批評に活かす方法を模索します。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

2             2             古典ファンタジーに触れる                面接授業/NLQ28の井辻朱美インタビューを参考に、C・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』、J・R・R・トールキンの『指輪物語』といったファンタジーの古典を、批評的ポイントを交えて確認していきます。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

3             3             幻想文学の歴史(1)         面接授業/主に19世紀から20世紀にかけてのファンタジー文学・児童文学・ホラー文学の歴史を概観し、基礎的な知識を習得します。            予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

4             4             幻想文学の歴史(2)         面接授業/主に19世紀から20世紀にかけてのファンタジー文学・児童文学・ホラー文学の歴史を概観し、基礎的な知識を習得します。            予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

5             5             モダン・ファンタジーを読む(1)                  面接授業/NLQ28のマイクル・ムアコック「漆黒の花弁」を講読し、世界観と人物を把握します。                予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

6             6             モダン・ファンタジーを読む(2)                  面接授業/NLQ28のマイクル・ムアコック「漆黒の花弁」を講読し、その構造について議論します。

 

                 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

7             7             モダン・ファンタジーを読む(3)                  面接授業/NLQ28のナンシー・A・コリンズ「竜の心臓」を講読し、シェアード・ワールドのあり方について理解を深めます。                予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

8             8             古典ホラーを読む(1)     面接授業/NLQ28のエラ・スクリムサワー「呪いの目」を講読し、オカルト探偵と怪異について、それを成立させた時代状況をふまえながら確認していきます。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

9             9             古典ホラーを読む(2)     面接授業/NLQ28のゲオルク・フォン・デア・ガーベレンツ「あのもう一人」を講読し、ドッペルゲンガー・モチーフの歴史と、非英語圏の怪奇幻想文学について考察します。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

10           10           怪奇幻想文学レイシズム                面接授業/NLQ28のユードラ・ウェルティ「キーラ、インディアンの父無し娘」をレイシズム批判の視点から講読し、表象と現実の複雑な絡み合いから目を背けない想像力のあり方について議論します。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

11           11           モダン・ホラーを読む       面接授業/NLQ28のティム・ワゴナー「廃物たち」を講読し、エコロジーモダン・ホラーの関わりについて議論します。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

12           12           現代の幻想小説を読む       面接授業/NLQ28の高原英理「隙間の心」を講読し、都市空間における遊歩(フラヌール)性と、狭義のジャンル性を突き詰めることで逸脱することの可能性を議論します。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

13           13           詩と幻想文学       面接授業/NLQ28のウォルター・デ・ラ・メア「メルミロ」ほか、小説ではなく詩でしか表現できない幻想美の可能性を考究します。             予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

14           14           レポートに向けての確認・添削       面接授業/レポート提出に向けた、現代詩・小説の実作および幻想文学批評執筆の進捗を確認し、具体的に添削していきます。            予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

 

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)