2022年春学期金曜3限シラバス(文学とセクシュアリティ)

 東海大学文化社会学部文芸創作学科で開講する掲題の講義の受講生の利便性に鑑み、シラバスをサイトでも公開します。

 

基本事項

/Basic Information           

学科目

/Field of Study   文学とセクシュアリティ

科目キーワード

/Course Keywords             フェミニズム/クイア文学、世界文学、批評

科目と関連する実務経験

/Related Practical Experience         有

アクティブラーニング科目

/Active Learning Course 該当する

地域志向による学修内容

/Regional/Area Content 無 

他科目との関係

/Relation to Other Courses             

科目の目的・学修内容

/Course Objectives and Content   

科目の要旨・概要

/Course Description/Summary       狭義の「文学」のみならず、あらゆる文化とセクシュアリティは無縁ではありえませんが、それにまつわる表徴はしばしば巧妙に操作され、私たちの欲望を駆動させる動因、あるいは排除の原理として、不均衡な社会を形作ってしまっています。インターネットの普及により議論の機会は増えたかにも見えますが、かえって差別的な言辞が大手を振るう結果にもなっているのはご承知の通りで、性役割の押し付けはいまだ根強い――などという言葉では語り切れないほどの規模で――残存しています。誰しもが自由でありたいと願っていますが、そのためには性急な言説に惑わされず、批評的な思考を鍛えることで、他者に出会い直す必要があります。

 本講座では、フェミニズム批評を中心とした人文社会科学的なフレームを参照しつつ、海外のフェミニズム/クイア文学作品の講読をしていきますが、一方通行の講義ではなく、常に双方向的な議論を心がけていきます。積極的な参加を期待します。

 

実務経験に基づく学修内容

/Content Related to Practical Experience      講師は2008年より文芸ジャーナリズムにおける批評活動を開始し、「時事通信」「共同通信」「北海道新聞」等で、数多くの現代文学を論じてきました。2015年より開始した「図書新聞」の文芸時評は2022年で8年目に入りますが、マイノリティ・スタディーズの視座に着目する形で、最新の文学状況をフォローしてきました。2019年に刊行した編著『現代北海道文学論』(藤田印刷エクセレントブックス)では批評家ガヤトリ・C・スピヴァクの理論をフレームワークとし、欧米文学者たちによる2021年の共著『脱領域・脱構築・脱半球』(小鳥遊書房)ではスピヴァクの項目を担当しています。また、翻訳文学を中心にした文芸誌「ナイトランド・クォータリー」の編集長をつとめ、最新のフェミニズム/クイア文学を編集・翻訳・批評しています。

 以上の経験を活かし、国内外の最新の動向を受講生にフィードバックします。

 

アクティブ・ラーニングによる学修内容

/Active Learning Content                 精読を核としますが、受け身の講義ではなく、常に創作と理論へ同時に親しみ、講読と討議を融合させることを目指します。具体的には、毎度学生にフィードバック・シートとして小レポートを記述してもらい、それを議論の素材として、積極的な参加を促します。

地域志向による学修内容

/Regional/Area Content

大学全体レベルのDP

/University-level DP         『集い力』アイデンティティ獲得:他者の価値観を理解し、集団の中で自己や他者の役割を理解し、信頼を構築

学位プログラムレベルDP

/Degree Program-level DP              態度・志向性

 

本科目の学修成果目標(ラーニングアウトカム)

/Course Learning Outcomes           ・セクシュアリティを基軸としつつ、世界文学の歴史と現在に関する関心を培います。

フェミニズム/ポストコロニアリズムを中心とした理論的な考え方の基本を習得します。

・日常的に接する文化表象から歴史化された表徴の内在的論理を読み解き、自律した思考のための基礎を培います。

・自覚的/無自覚に差別の再生産に加担しないための責任感を涵養します。

成績評価基準・方法

/Grading Method             

成績評価の基準・方法

/Grading Method               評価のポイントは、以下の4点です。

 

1)取り扱った作家・作品の内在的特性が理解できているか(約20%)

2)作品の周辺に存在する文脈が理解できているか(約20%)

3)テクストへ積極的に取り組み、読解・創作ができているか(約40%)

4)批評的であることの意義が理解できているか(約20%)

 

 毎回、フィードバックシートへの記入を行ってもらい、それを出欠確認と小テストの代わりとします。それとは別に、中間レポート、期末レポートが課されます。

 なお、レポート執筆の際にWikipediaを参考資料に用いることを禁止します。共作を行う場合は、事前に申請して講師の許可を得てください。代返等・コピペ等の不正行為に関しては厳正に対処します。各種文章がしっかり書けていることは、評価の前提条件とします。

 上記の学習目標が達せられているかどうかを、フィードバックを含む出席点(40点)、レポート(60点)、のウエイトで評価して総合的に判定します。具体例として、その合計が90点以上をS評価、80点以上90点未満をS評価、70点以上80点未満をB評価、60点以上70点未満をC評価とします。

 ただし、出席回数が7割未満の場合、この限りではありません。

課題・試験・レポート等のフィードバック方法

/Method of Feedback (e.g. Assignments, Exams, Reports)         講義内で随時フィードバックを行います。優秀なレポートは、プロの書き手に見てもらうことがあります。あらかじめご了承ください。

履修上の注意点

/Notes                  同時代の「日本」で書かれたも交えますが、基本的には海外の小説や詩・批評を精読していきます。

 課題のテクストを、時には声を出して精読していきながら、その表現や問題意識を咀嚼します。

 講義内はあくまでも思考実験の場であり、いたずらに文脈を切断して議論の内容を外に出さないようにご注意ください。参加者のアイデンティティや指向性・安全性を最優先いたしますので、配慮を希望する方は、いつでもお知らせください。

シラバス配付方法

/Syllabus Distribution Method        あらかじめ印刷またはPDFでダウンロードのうえ、受講に臨んでください。

教科書

/Textbooks         ・ダロウェイ夫人、ヴァージニア・ウルフ、丹治愛訳、集英社文庫、825円

参考図書・その他の教材

/Other Course Materials ・絵画の政治学、リンダ・ノックリン・坂上桂子訳、ちくま学芸文庫、1650円

・鳩沢佐美夫の仕事 第一巻、鳩沢佐美夫、藤田印刷エクセレントブックス、2200円

担当教員への連絡方法

/Method of Communication with Instructor                

研究室 他

/Office                  14号館講師室。ただし、事前に必ずアポイントメントをとってください。

連絡方法

/Contact Information       akiraokawada@gmail.com

オフィスアワー

/Office Hours     事前にメールでご相談ください。

 

/Time (date and time)     主題と位置付け(担当)

/Subjects and position in the whole course   学習方法と内容

/Methods and contents    予習・復習

/Preparation and review

1             1             ガイダンス/モダニズム文学とフェミニズム(1)                  面接授業/講義の概要を説明し、学生の自己紹介と問題意識のあり方を伝えてもらった後、ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』の序盤を講読します。

※以後、随時、同時代のテクストも参照しつつ、参加者の指向性にあわせて、取り上げる作品を組み替えていきます。鳩沢佐美夫「休耕」等、従来の日本文学研究ではほとんど顧みられてこなかった作品も扱っていきます。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

2             2             モダニズム文学とフェミニズム(2)             面接授業/モダニズムの技法を深化させた、ナタリー・サロートのラジオドラマ脚本「嘘」を講読し、何が語り落とされているのかを考察します。                  予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

3             3             フェミニズムSF(1)        面接授業/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア接続された女」と、マーガレット・セント・クレア「ボーリョー」を比較しつつ、工業化・情報社会化した状況における身体の問題を考察します。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

4             4             短詩形文学            面接授業/トマス・M・ディッシュのクイア詩から、塚本邦雄や春日井建など俳句や短歌におけるクイア性にもスポットを充てて分析していきます。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

5             5             フェミニズムSF(2)        面接授業/第2波フェミニズムとSF、モダンアートの発想を融合させたパミラ・ゾリーン「宇宙の熱死」を講読し、リチャード・コールダーのポストサイバーパンクガイノイド三部作を概観します。            予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

6             6             現代小説(1)、   面接授業/レアード・バロンのレズビアン人狼ホラー(という括りでは真価がわからないであろう部分まで含めて傑作)「腐肉喰らいの神の楽園」を講読します。              予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

7             7             現代小説(2)     面接授業/近年再評価が著しいアンナ・カヴァンアサイラム・ピース』から何作かを精読し、越境的なフェミニズム文学の位置を「自分のなかのもの」として探っていきます。                  予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

8             8             フェミニズム小説の最新形                面接授業/世界幻想文学大賞候補となった最新のフェミニズム小説、リサ・ハネットの「戴冠試合」を講読します。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

9             9             ラテンアメリカ文学            面接授業/アルゼンチンの作家・詩人シルビア・オガンポの傑作選『蛇口』から何作かを講読し、その軌跡を追体験します。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

10           10           現代詩 面接授業/ルイーズ・グリュック『アヴェルノ』を読み、現代詩のなかでどのように神話とフェミニズムが融合しているかを確認します。                予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

11           11           ハードコア・パンク            面接授業/ミシェル・クルーズ・ゴンザレス『スピットボーイのルール』を読み、ハードコア・パンク・バンドにおけるフェミニズムのあり方を探ります。            予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

12           12           理論に親しむ(1)             面接授業/リンダ・ノックリン『絵画の政治学』やイヴ・セジウィック『男同士の絆』を講読し、理論の概要を掴みます。       予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

13           13           理論に親しむ(2)             面接授業/ジュディス・バトラー&ガヤトリ・スピヴァク『国家を歌うのは誰か?』、テッサ・モーリス・スズキ『辺境から眺める』を講読し、理論の概要を掴みます。                  予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)

 

14           14           理論に親しむ(3)             面接授業/ダナ・ハラウェイ「もう神のトリックはいらない 靈長類、サイボーグ、女性」を講読し、理論の概要を掴みます。   予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)

復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)