2022年春学期金曜4限シラバス(詩の技法)
東海大学文化社会学部文芸創作学科で開講する掲題の講義の受講生の利便性に鑑み、シラバスをサイトでも公開します。
基本事項
/Basic Information
学科目
/Field of Study 詩の技法
科目キーワード
/Course Keywords 英米詩、現代詩、批評
科目と関連する実務経験
/Related Practical Experience 有
アクティブラーニング科目
/Active Learning Course 該当する
地域志向による学修内容
/Regional/Area Content 無
他科目との関係
/Relation to Other Courses
科目の目的・学修内容
/Course Objectives and Content
科目の要旨・概要
/Course Description/Summary はたして詩性(ポエジー)とは何であるのか、万人が認める客観的な定義づけはかないません。ちょうど「文学」が定義不可能なのと同じことです。にもかかわらず、有史以来、詩は詠われ、連綿と書き継がれてきました。
ただ、近代以降の文学史においては、「小説」のインパクトが圧倒的で、「詩」はしばしば周縁に追いやられてきたのが現状です。それでは、小説と詩はどう違うのでしょうか。短く行分けをして抒情でくるんだそれっぽい文を書けば、詩になりえるのでしょうか。
逆説的な言い方になりますが、何が詩を規定するのかを把捉するためには、これまで書かれてきた「詩」をひたすら読み、蓄積と試行錯誤のプロセスを重ねていくほかありません。
大学在学中に小説家デビューをするのは困難ですが、シジンとなるだけならば簡単です。けれども、あなたは、わずかな部数しか発行されず、梨の礫が続いても、言葉が世界の深い部分の動因に繋がると「内なる批評家」を納得させられるでしょうか。その意味で、もっとも鋭く倫理の基底が問われるのが詩という形式でしょう。
本講義では、形而上詩を中心とする近現代の洗練されたイギリス詩を中心とした詩を講読しつつ、巧まざる日本の民衆詩・生活詩も参照していくことで、内なる批評家の審美眼を、どうしたら統制的理念としての「外部」と接続させられるか、そのための手がかりを模索していきます。
実務経験に基づく学修内容
/Content Related to Practical Experience 講師は2007年から商業デビューし、2015年から「現代詩手帖」等の詩誌で詩論の発表を開始。2019年からは実作も並行して行うようになり、同年刊行の第一詩集『掠れた曙光』(幻視社/書苑新社)で茨城文学賞を受けました。「壘」、「フラジャイル」、「茨城の文化」、「白亜紀」、「早稲田学報」、「現代詩手帖」、「ナイトランド・クォータリー」、「潮流詩派」、「詩界」といった詩誌・文芸誌に詩論や実作を寄稿しています。2021年には「清水博司論」、「村田正夫論」で潮流詩派賞評論部門年間最優秀作品賞を受賞しました。林美脉子『タエ・恩寵の道行』(書肆山田)、花崎皋平『アイヌモシリの風に吹かれて』(増補版、クルーズ)の跋文や帯文も担当しています。
以上の経験をふまえ、文芸ジャーナリズムの歴史と現状を伝えるのはむろんのこと、そこで拾われてない傑作・佳作についても柔軟に紹介していきます。
アクティブ・ラーニングによる学修内容
/Active Learning Content 基本は作品を講読していきますが、単に流し読みをするのではなく、朗読の訓練を含めて、声に出して身体化していくことを目指します。かつ、理論的なフレームを参照しつつ、分析のための基礎的なスタンスをも知ることができるように修練を行います。受講生の希望と姿勢に合わせて、講読のみならず実作も視野に入れていきます。
地域志向による学修内容
/Regional/Area Content
大学全体レベルのDP
/University-level DP 『自ら考える力』探求力:対象の現状に問を見いだし、それを解くための方法や手段となる情報の在所を求める
学位プログラムレベルDP
/Degree Program-level DP 態度・志向性
本科目の学修成果目標(ラーニングアウトカム)
/Course Learning Outcomes ・詩の歴史と現在をふまえ、文学的知識の基盤と独習の姿勢を培います。
・漫然と言葉を並べるのではなく、行間に何を語らせるのか、どこに批評的焦点を与えるのか、そのための判断力を養います。
・印象を語るだけではなく、理論や技巧の分析をベースに詩の批評ができるようになることで、それを実作(と、その質)に転化させられるような蓄積を重ねます。
・既存の詩壇ジャーナリズムの枠内で小さくまとまらず、社会の変動や新たな表現の位相と切り結ぶための試行錯誤を重ねられるような知的体力を養成します。
成績評価基準・方法
/Grading Method
成績評価の基準・方法
/Grading Method 評価のポイントは、以下の4点です。
1)取り扱った作家・作品の内在的特性が理解できているか(約20%)
2)作品の周辺に存在する文脈が理解できているか(約20%)
3)テクストへ積極的に取り組み、読解・創作ができているか(約40%)
4)批評的であることの意義が理解できているか(約20%)
毎回、フィードバックシートへの記入を行ってもらい、それを出欠確認と小テストの代わりとします。それとは別に、中間レポート、期末レポートが課されます。
なお、レポート執筆の際にWikipediaを参考資料に用いることを禁止します。共作を行う場合は、事前に申請して講師の許可を得てください。代返等・コピペ等の不正行為に関しては厳正に対処します。各種文章がしっかり書けていることは、評価の前提条件とします。
上記の学習目標が達せられているかどうかを、フィードバックを含む出席点(40点)、レポート(60点)、のウエイトで評価して総合的に判定します。具体例として、その合計が90点以上をS評価、80点以上90点未満をS評価、70点以上80点未満をB評価、60点以上70点未満をC評価とします。
ただし、出席回数が7割未満の場合、この限りではありません。
課題・試験・レポート等のフィードバック方法
/Method of Feedback (e.g. Assignments, Exams, Reports) 講義内で随時フィードバックします。また、レポート優秀作はプロの書き手に見せる可能性があり、あらかじめご了解ください。
履修上の注意点
/Notes 講義の際には、相当分量の論文や現代詩を読み進めていくことになります。関連して文献も紹介しますが、少々難解かもしれない理論も含まれます。講義へのフィードバックを毎回記入してもらい、それを講師が講義内容へ反映させていきます。その他、双方向的な講義になりますので、積極的な協力・参加が求められます。期末レポートのほかに、中間レポートがあります。
現代詩作家には、詩誌に参加したり創刊したりすればよいので、すぐにでもなることができますが、蓄積がなければ質を保ったアウトプットを継続することが困難で、そのための訓練だと思ってください。他学部・他学科からの聴講も歓迎しますが、途中で離脱するケースが多いので、いちどやると決めたら、最後まで受講することを推奨します。さもなければ、身につきません。
シラバス配付方法
/Syllabus Distribution Method あらかじめ学生がシラバスを印刷またはダウンロードして授業に持参ください。
教科書
/Textbooks ・イギリス名詩選、平井正穂編、岩波文庫、1012円
・詩の中にめざめる日本、真壁仁編、岩波新書、1034円
参考図書・その他の教材
/Other Course Materials ・『レゴリス/北緯四十三度』、林美脉子、思潮社、2640円
担当教員への連絡方法
/Method of Communication with Instructor
研究室 他
/Office 14号館講師室。ただし、事前に必ずアポイントメントをとってください。
連絡方法
/Contact Information akiraokawada@gmail.com
オフィスアワー
/Office Hours 事前にメールでご相談ください。
No. 回(日時)
/Time (date and time) 主題と位置付け(担当)
/Subjects and position in the whole course 学習方法と内容
/Methods and contents 予習・復習
/Preparation and review
1 1 ガイダンス 対面授業/講義の概要と参加者自己紹介。以降、特に明記しないが、随時、『詩の中にめざめる日本』等のアンソロジーや、まさにいま書かれている現代詩も積極的に鑑賞します。白石かずこ、古川日出男、江原光太等の朗読も聴き、身体でまるごと詩を咀嚼していきます。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
2 2 リベルタンとしての詩人 対面授業/ローレンス・ダンモア監督の映画『リバティーン』や、グレアム・グリーン『ロチェスター卿の猿』を確認し、作品内外における詩人の位置を探ります。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
3 3 形而上詩 対面授業/ジョン・ダン等の詩を味わい、分析を試みます。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
4 4 ロマン主義(1) 対面授業/トマス・グレイ等の詩を味わい、分析を試みます。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
5 5 ロマン主義(2) 対面授業/ジョン・キーツ等の詩を味わい、分析を試みます。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
6 6 20世紀詩(1) 対面授業/W・B・イェイツ等の詩を味わい、分析を試みます。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
7 7 20世紀詩(2) 対面授業/T・S・エリオット、C・A・スミス等の詩を味わい、ニュークリティシズムでの批評、関連する小説等も参照します。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
8 8 フランス詩 対面授業/ランボーやヴェルレーヌからアニー・ル・ブランまでの詩を概観し、適宜、それらについての批評を参照します。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めてい(100分)
9 9 ドイツ詩 対面授業/へルダーリンやパウル・ツェランからドゥルス・グリューンバインまでの詩を概観し、適宜、それらについての批評も参照します。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
10 10 アメリカ詩 対面授業/ディキンスンやギンズバーグからトマス・ディッシュ、ルイーズ・グリュックまで詩を味わい、音楽等の他のメディアとの連関をも考察します。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
11 11 近代詩 対面授業/島崎藤村、向井夷希微、萩原朔太郎、北園克衛、西脇順三郎等の詩を味わい、それらをふまえた批評や実作をも確認します。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
12 12 現代詩(1) 対面授業/吉本隆明、三好達治、黒田喜夫、森崎和江、吉岡実、吉増剛造、鷲巣繁男らの詩を味わい、詩人たちが書いた批評や散文の文脈も把握します。関連して、「白亜紀」や「潮流詩派」といった詩誌についても現物に触れていきます。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
13 13 プロレタリア詩とカウンター・カルチャー 対面授業/小熊秀雄、今野大力、村田正夫、清水博司、長沢哲夫等の詩を味わい、関連した批評や実作も把握します 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)
14 14 現代詩(2) 対面授業/林美脉子、武子和幸、星野徹、安藤元雄、上林俊樹、米山将治、野上光子、奥間埜乃、田中さとみ等の詩を味わい、関連した批評や実作も咀嚼します。 予習:講義で指示された課題について構想を練り、具体的に批評文ないし実作を執筆し、講義前日12:00までに提出する(100分)
復習:講義での講評に従い、批評文ないし実作を改稿し、さらに完成度を高めていく(100分)