「ナイトランド・クォータリーvol.29 サロメ、無垢なる誘惑者の幻想」が発売

 僭越ながら私が編集長をしております「ナイトランド・クォータリーvol.29 サロメ、無垢なる誘惑者の幻想」が、2022/6/29頃に発売。サロメファム・ファタル表象を軸に、幻想文学セクシュアリティを問い直す試みです。

 

 幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌《ナイトランド・クォータリー》。
 vol.29の特集は「サロメ、無垢なる誘惑者の幻想」。
 19世紀末、ワイルドとビアズリーによって、ひとつの物語として再構築されたサロメ
 それは人々を魅了し、現在でもさまざまな分野でオマージュされ続けている。
 そのサロメや、ファム・ファタル=運命を狂わせる女をモチーフにした物語の数々を特集!
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 小説は、メアリー・シェリー、マイクル・ムアコックジョアン・アンダートン、フランク・ヴェデキント、アメリア・B・エドワーズ、マーガレット・セント・クレア、高原英理小林弘利、詩は、トム・ディッシュ(トマス・M・ディッシュ)、サミュエル・ファー ガスン卿といった多彩な内容!
 他に、下楠昌哉インタビューなど、コラム記事等も充実です!

 

 

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■主な内容
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【Story】
■メアリー・ウルストンクラフト・シェリー「邪視譚──アルバニア人匪賊の物語」/訳:待兼音二郎、訳語監修:茂木政敏・白石隆
ラフカディオ・ハーン「雪女」/訳:下楠昌哉
■フランク・ヴェデキント「女侯爵ルサルカ」/訳:垂野創一郎
マイクル・ムアコック「彷徨える森 〜赤き射手の物語〜」/訳:健部伸明
ジョアン・アンダートン「ファウストという名の猫」/訳:山田和子
アメリア・B・エドワーズ「サロメの話」/訳:渡辺健一郎
■マーガレット・セント・クレア「ボーリュー」/訳:岡和田晃
高原英理「〈精霊語彙集〉 帝命定まらず」
小林弘利「HiKaRi」
【Poetry】
■トム・ディッシュ「僕の母・一つの議論」/訳:菅原慎矢
■サミュエル・ファーガスン卿 アルスター地方の民謡「妖精の茨(フェアリー・ソーン)」/訳:井村君江
【Interview】
下楠昌哉インタビュー「アイルランド幻想文学と翻訳の「文武両道」」インタビュー・構成=岡和田晃
【Essay】
■オペラ出演者として体験したサロメたち/畠山茂
■「妖精の茨」について──妖精の「人さらい」──/井村君江
■無垢なるサロメは死の境域で舞う──怪奇幻想文学ファム・ファタル岡和田晃
殺生石と半神と。 キツネがファム・ファタルになった理由/丸屋九兵衛
■世紀末作家ラフカディオ・ハーンと「宿命の女」/下楠昌哉
■十一谷義三郎「谷崎潤一郎小論」をめぐって/黒田誠
■生首のある風景、もしくはサロメに到るまでの覚書/深泰勉
■見世物の「サロメ」/浅尾典彦
リヒャルト・シュトラウスサロメ』とパゾリーニ『奇跡の丘』の反省的手法/岡和田晃
【Game】
■トロフィーではなく、名前ある主人公として ゲームにおける「意志ある女性」小史/徳岡正肇
【Serial】
■〈アンソロジーに花束を〉第十一回 女王のスポーツアンソロジー安田均
【Book guide】/岡和田晃 
■生の絶頂、運命の采配、汎ヨーロッパ的騎士道幻想――『世界の果てまで連れてって!…』、『テュルリュパン』、『魔法の指環』 
■ポスト社会主義における民族的情念 ――『ヒップホップ・モンゴリア』&『憑依と抵抗』 
■表紙/妃耶八「サロメ

 

 メアリー・シェリー「邪視譚」は、『フランケンシュタイン』の作者が挑んだギリシア独立戦争アルバニアを扱った小説。難物ということもあり、おそらく今回が本邦初訳となります。ご期待ください!
 ラフカディオ・ハーンの「雪女」は、今号でインタビューを掲載したアイルランド文学者下楠昌哉さんによるフレッシュな新訳。
 フランク・ヴェデキント「女侯爵ルサルカ」は、ベルクのオペラでも知られる〈ルル二部作〉の著者が風刺誌「ジユプリチシムス」に寄せた作品。こちらもおそらく初訳。
大好評マイクル・ムアコック未訳作品連続掲載の第三弾。今回はなんと主役は赤き射手ラッキール! 健部伸明さんによる研究レベルの解説も充実。
 ジョアン・アンダートン「ファウストという名の猫」は、オーストラリア・ホラー界での賞レース常連作家による技巧的スペキュラティヴ・フィクション。アンナ・カヴァンやバラードの訳で知られる山田和子さん、訳者としてNLQ初登場。「解剖」のモチーフをひっくり返した、フェミニズム・ホラーの最前線。
 アメリア・B・エドワーズ「サロメの話」は、ヴィクトリア朝エジプト学者でもあった作家の見たサロメ譚。オスカー・ワイルド以前の英文学における「サロメ」像を伝えます。これも初訳ー!

 畠山茂さんは二期会会員のバス・バリトン歌手。今回はコンヴィチュニー演出の『サロメ』について出演者の視点も交えて語っていただきました。
拙稿はワイルド、フローベール、ヴェデキントからメアリー・シェリー、さらには須永朝彦からマーガレット・セント・クレアまで、幻想文学ファム・ファタルの関係を概観!
 丸屋九兵衛さんは、伏見稲荷から妲己まで、アジアにおけるファム・ファタル的な想像力を概観!
 下楠昌哉さんの批評は、ワイルドと同じアイルランド出身の作家ハーンを世紀末の視点から分析。
 あなたは十一谷義三郎をご存知ですか? 映画におけるサロメ表象は? ケン・ラッセルは? トッド・ブラウニングは? 黒田誠、深泰勉、浅尾典彦ら各氏の論考を是非お読みください。
 安田均さんの連載は、エラリー・クイーンのアンソロジーについて。特にスポーツ・アンソロジーや、『犯罪文学傑作選』についても。アンソロジーが大好きになる連載です。
 ブックガイドは、サンドラールペルッツ、フケー、島村一平らの作品について。