北海道大学大学院文学研究科映像・表現文化論講座編「層 映像と表現」vol.11に、長編論考「RPG研究の現在と、伏見健二の「初期の仕事」(アーリー・ワーク)」が掲載

  北海道大学大学院文学研究科映像・表現文化論講座編「層 映像と表現」vol.11に、長編論考「RPG研究の現在と、伏見健二の「初期の仕事」(アーリー・ワーク)」が掲載されています。
 本稿は二段構成となっており、まず文芸批評と遊戯史学のアプローチからRPG研究をサーヴェイしています。
 後半では、批評的に重要なデザイナーとして『ストームブリンガー』の紹介から『アドバンスト・ウィザードリィRPG』デザインまでの伏見健二さんの仕事の先駆性を論じています。心がけたのは、シリアスゲームデジタルゲーム、文学との往還という視点を堅持することです。
 その他、伏見健二論のウリ。1:文芸評論の作家研究の手法でRPGデザイナーを学術誌にて扱った、非翻訳だとおそらく本邦初の試み。2:「タクテクス」「オフィシャルD&Dマガジン」「ヒッポンスーパー」「3DOマガジン」等の今では必ずしも参照が容易でない伏見さんの仕事を拾い再評価の論拠とした。3:現場目線。

 この「層」には、下楠昌哉「毛皮を奪われた女 あざらし女民話の変奏としてのジョー・ホールドマン『擬態 カムフラージュ』」が載っています。「SFマガジン」2008年5月号に梗概のみ掲載されたまま、埋もれていた伝説の作品ですが、現物は、やはり傑作でした。近年活字化されたSF評論ではトップ級の品質でしょう。
 加えて、タル・ベーラ監督の『ウェルクマイスター・ハーモニー』論が載っている!

校正漏れ。p.44にある、わかつきめぐみ、は、わきあかつぐみ、の間違いです。また、p.49の注釈25は、『ロードス島戦記I』ではなく、『ロードス島戦記II』です。お詫びして訂正させていただきます。

My latest academic writing surveys Japanese RPG studies around Kenji Fushimi’s early works. This article has just published in the journal of Hokkaido University faculty of letters.

 

eprints.lib.hokudai.ac.jp

『日本ペン倶楽部と戦争 戦前期日本ペン倶楽部の研究』が出ました

 

 

 目野由希さんの科研費報告書(「国際ペンクラブと世界文学史の相関――日中印外交と英連邦史、欧州史」)で、私が2017年に行ったインド出張が記述されていました

「モハンマド・モインウッディンおよび岡和田晃の共同研究者2名のデリー史資料調査出張の日程が、ちょうど日印友好交流年のイベントであるデリー大学・ネール大学の日印文学研究のカンファレンスの9月16日前後と重なった。そのため、彼らはここに参加でき、在インド日本大使館書記官や国際交流基金職員、デリー大学教員や大学院生たちと、学術交流を行えた。さらに彼らから、デリーでの調査のためのツテを得られるなど、相互に有益な関係を構築できた。このことで、本共同研究がインドのジャパノロジストたちに関心を持たれ、有意義な対インド文化・学術発信を果たす結果となった。」

 ということです。

 そして、これらの成果を含む研究の全体をまとめた目野由希『日本ペン倶楽部と戦争』(鼎書房)も公刊されました。
 この本はhontoより購入することができますが、

日本ペン倶楽部と戦争 戦前期日本ペン倶楽部の研究の通販/目野 由希 - 紙の本:honto本

 研究チームを編成してアメリカ・インド・イギリスへの海外出張調査を行った点、ちょっと類を見ないスケールの研究になっているのではないかと思います。

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『反ヘイト・反新自由主義の批評精神』についての書評(商業媒体)

 『反ヘイト・反新自由主義の批評精神』(寿郎社)、これまで多くの言及や批評をオフライン・オンラインにて、いただいてまいりました。

 有形無形のご支援に感謝いたします。そのなかで、商業媒体で発表された書評や紹介を、まとめて紹介いたします。

 

・「文藝」2018年冬季号(評者:山本貴光さん)

http://web.kawade.co.jp/bungei/2396/

・「東京新聞」「中日新聞」2018年10月12日夕刊(大波小波

https://twitter.com/kghgugin/status/1050694343240036352

・「北海道新聞」2018年10月21日号(評者:澤田展人さん)

https://twitter.com/orionaveugle/status/1053794236527562753

・「読書人」2018年11月2日号(評者:生田武志さん)

https://dokushojin.com/article.html?i=4514

・「東京新聞」「中日新聞」2018年11月3日号(評者:藤沢周さん)

https://twitter.com/Shu_Fujisawa/status/1064812690835628032

・「図書新聞」2018年11月10日号(荒井裕樹さんとの対談)

https://www1.e-hon.ne.jp/content/toshoshimbun/3375_2

・「東奥日報」2018年11月20日号(評者:田中里尚さん)

https://twitter.com/orionaveugle/status/1064783749450092544

・「Webちくま」2018年11月28日号(評者:高原英理さん)

http://www.webchikuma.jp/articles/-/1560

・「現代詩手帖」2018年12月号(評者:笠井嗣夫さん、神山睦美さん)

http://www.shichosha.co.jp/gendaishitecho/item_2215.html

・『SFが読みたい! 2019年版』(評者:長山靖生さん)

http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014146/ 

「Role&Roll」Vol.174に、『エクリプス・フェイズ』の入門シナリオ「クローズド・ハビタットの囚人」を寄稿

Role&Roll」Vol.174に、『エクリプス・フェイズ』の入門シナリオ「クローズド・ハビタットの囚人」を寄稿しました。『プリズナーNo.6』にオマージュを捧げた作品ですが、ネタ元を知らない方でも脱出ゲーム風にプレイできるように工夫しています。テストプレイでも大好評でした!

As a professional designer, I contributed Posthuman RPGEclipse Phase” gaming scenario on Role&Roll magazine Vol.174. It’s a homage of Patric Mcgoohan’s “The Prisoner”.

 

Role&Roll Vol.174

Role&Roll Vol.174

 

 

「図書新聞」2019年3月26日号に、神山睦美『日本国憲法と本土決戦』(幻戯書房)の長い書評「「純粋贈与」と象徴天皇制の天秤を可視化する」を寄稿

図書新聞」2019年3月26日号に、神山睦美『日本国憲法と本土決戦』(幻戯書房)の長い書評「「純粋贈与」と象徴天皇制の天秤を可視化する」を寄稿しました。

I contributed a long review about Mutsumi Kamiyama's "Nihonkoku Kempow to Hondo Kessen (The Constitution on Japan and the Decisive last battle at Japan) "on The Book Reiview Press issue 03/26/2019.

日本国憲法と本土決戦: 神山睦美評論集

日本国憲法と本土決戦: 神山睦美評論集

 

 

法政大学経済学部2019年度シラバス(演習・現代マイノリティ文学)

※2019年度、サバティカルの代講として、1年の任期で法政大学経済学部の兼任講師にとして「演習」を担当します。以下、シラバスを公開します。

 

LIT207CA
演習
岡和田 晃
開講時期:通年 単位:8 単位 木曜4・5限

授業コード:
K7054

 

【授業の概要と目的(何を学ぶか)】
 「大学」という場で「文学」を学ぶことの意義は何かといえば、答えのない問いに向き合う粘り腰の姿勢、あるいは煽動に流されない確固たるリテラシーを獲得し、さらには自らの考えを適切に表現する技術を身につける、ということが一つの答えになるだろう。
 加えて、こと文学の場合、他に専門があっても、あるいは大学を出て働きながらでも、自分なりに考えを深め学習を続けていくことが可能だという強みがある。
 この演習では、受講生の皆さんとともに様々な観点から「独学者」として立つために必要な知的体力を培い、「読み」のダイナミズムの体感を通して、自分なりの表現スタイルを確保してもらうことを目標とする。
 すでに創作や批評など、何らかの表現を行っている人の参加を歓迎するが、これから手がけてみたいという人のきっかけ作りにもなればよいと考えている。

 

【授業の概要と目的(英文表記)】
The purpose of this seminar is to discuss and analyze representations of ethnic minorities in contemporary literature. In each session, a single participant will take charge of the class and present a report. Before the discussions, each student must read the assigned texts. Student grades will be evaluated according to the extent of their contribution to the seminar.

 

【到達目標】
 1 年という限られた期間ではあるが、そのなかで、できるだけ悪あがきをする。最終的には、「文学」のプロとして自分の手段と媒体を見つけ、思考を表現する道筋をつけることを目標とする。


【この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)】
ディプロマポリシーのうち、「DP8」「DP9」「DP10」「DP11」に関連

 

【授業の進め方と方法】
 ゼミは自由な思考実験の場であるが、散漫になることを避けるため、特定のテクストを事前に指定し、レポーターがそれを発表・主導する形で議論を進めていく。よくあるパワーポイント的な整理だけではなく、ロジカルな分析、小説や詩などの創作的な応答も認める。しかしながら、いずれの場合も、元のテクストへの敬意をないがしろにしてはならない。
 テクストは、講師が「図書新聞」で連載中の文芸時評で取り上げているような現代文学を扱う。とりわけマイノリティ(アイヌ民族在日コリアン、女性、LGBT など)からの視点や、作中でのマイノリティ表象に注目していきたい。
 政治を概観するに、現代社会は、すでに広義の紛争状況のさなかにあると言わねばならず、そのなかで言葉を紡いでいくこととは、どのような営為であるのかを、常に自覚していくこと。とはいえ、ただ単に「思想」を抽出するのではなく、表現の技術的な側面への目配せをも怠らないのが肝要である。
 また、必要に応じ、ゼミ内では世界の文学、哲学、歴史を随時参照していく。SF やミステリ、双方向的なストーリーゲーム等、従来の「日本文学」のパラダイムではマージナルに見られる領域の手法も軽視しない。
 ベースは読書会形式ではあるが、流れに応じて、フィールドワーク等の課外実習を行う可能性がある。


【アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)
の実施】
あり/ Yes

 

【フィールドワーク(学外での実習等)の実施】
あり/ Yes

 

【授業計画】
回 テーマ内容
1 ガイダンス・参加者自己紹介
ガイダンス・参加者自己紹介
2 『反ヘイト・反新自由主義の批評精神』を読解し、討議を行う
『反ヘイト・反新自由主義の批評精神』を読解し、討議を行う
3 読解・討議読解・討議
4 読解・討議読解・討議
5 読解・討議読解・討議
6 読解・討議読解・討議
7 読解・討議読解・討議
8 読解・討議読解・討議
9 読解・討議読解・討議
10 読解・討議読解・討議
11 読解・討議読解・討議
12 読解・討議読解・討議
13 読解・討議読解・討議
14 読解・討議読解・討議
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20 読解・討議読解・討議
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25 読解・討議読解・討議
26 読解・討議読解・討議
27 読解・討議読解・討議
28 読解・討議読解・討議


【授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)】
 演習で扱うテクストについては、その前の回に告知や配布を行っておき、レポーターを含めた参加者が事前に読んでおくことを前提とする。演習外においても、可能な限り多くの作品に触れておくことが望ましい。

 

【テキスト(教科書)】
 マイノリティに対するバックラッシュの問題を現代文学の観点から扱った、岡和田晃『反ヘイト・反新自由主義の批評精神 いま読まれるべき〈文学〉とは何か』(寿郎社)。まずは、これを読むところから始めるので、初回授業までに入手しておくこと。以後、ゼミ生の人数や志向に合わせて、適宜課題となるテクストを選定していく。

 

【参考書】
 『骨踊り 向井豊昭小説選』(幻戯書房)。ほか、講義内で指示する。

 

【成績評価の方法と基準】
 演習への参加度(発言、応答、進行)による(100 %)。

 

【学生の意見等からの気づき】
 本年度授業担当者変更によりフィードバックできません。

 

【その他の重要事項】
 質問や教員へのフィードバックについては、学籍番号と本名を表題に記載のうえで、akiraokawada@gmail.com にまでメールすること。テストを兼ねて、初回の講義では、自己紹介文を、上記に送ること。
 なお、講師は2007 年から本名でライター活動を開始し、文芸評論とゲームデザイン(創作)の両方において仕事をなしてきた。「図書新聞」での「〈世界内戦〉下の文芸時評」(2015 年3 月より、月刊)ほか、現場で得られた知見も伝えてきいきたい。

東海大学文芸創作学科2019年春学期シラバス(幻想文学・SF論)

サブカルチャーと文学(水曜4限)

2019年度 春学期 水曜4限

 

授業科目名 サブカルチャーと文学

 

テーマ サブカルチャーから文学を読み替える「文学を介した“反”サブカルチャー論」

 

キーワード サブカルチャー 幻想文学・SF 文芸批評

 

担当教員 岡和田晃

 

【授業要旨または授業概要】

 大学で「サブカルチャー」を勉強すると聞いて、面食らった方もいるのではないでしょうか?

 もともと「サブカルチャー」は社会学の用語ですが、昨今では日本製の“アニメ・漫画・ゲーム”のことを指す場合が多いようです。こうした周縁的と思われてきた分野のインパクトを、もはや大学教育の現場でも、無視できなくなっているということです。

 他方で、これらを「クールジャパン」と一括りにして闇雲に称揚する言説が存在しています。しかし、その文脈においては、従来「文学」とされてきた領域はむろんのこと、狭い日本における商業的な価値観に閉じこもり、海外との(相互的な)影響関係に関する視点が、すっぽりと抜け落ちてしまっています。

 本講座は、そうした「サブカルチャー」観を再生産するものではないことを、まずは強調しておきます。むしろ、かねてから「サブカルチャー」として軽んじられてきた表現を、「文学」と等価に扱い、それどころか、既存の「文学」を読み替える可能性を内包したものとして捉えていくというのが、本講座の趣旨なのです。

 

 資本主義が高度に発達した現在においては、私たちの接する文化は中心を欠いたものとなってしまっており、経済効果のみが作品を語る指標として用いられがちです。

 しかしながら、欲望の無自覚な肯定に終始し、「文学」をはじめとした人文科学の成果を敵視するような悪しき意味での「オタク」を再生産するのでは、わざわざ大学で学ぶ意味がありません。

 本講座は、狭い世界に閉じこもらず、外へ向けての「窓」となる、認識の枠組みと教養の土台づくりを目指します。

 

 ゆえに、正確に言うと本講座は「サブカルチャー論」ではありません。反対に、「文学を媒介とした“反”サブカルチャー論」です。このことは、講義内でも絶えず強調していくので、忘れずにいてほしいと思います。

 

 

 同名の講座が水曜3限・水曜4限で展開されます。水曜4限の講座では、幻想文学とSFの批評について総合的に学びます。ブックガイド的な「レビュー」や、現代思想の「ダシ」にして終わらない幻想文学批評のあり方は可能かを模索していきたいと思います。

 

※より詳しくは、続けて【授業計画】の項目をご参照ください。

 

【学修の到達目標】 

◆授業で育成するスキル

 自ら考える力・文章情報を読み解く力・批評的な思考力

 

◆学習の到達目標

・日常的に接する文化環境に対しての批判的な視座を持ち、そのルーツを探り新たな表現を産むために必要な(最低限の)知識と好奇心を涵養します。

・文学を中心にしつつ、哲学・歴史学・美学といった人文科学についての基本的な知識をも習得します。

・カルチュラルスタディーズ、ジェンダーポストコロニアル理論といった、現代批評理論の基礎を習得します。

・ヌーヴェルクリティーク以降の文芸評論の基礎を習得します・

・批評の基礎を学ぶことで、学術的な視座の批評や創作へ応の応用を目指します。

 

【授業計画】

 

 

◆スケジュール

<注意:水曜4限では、幻想文学・SFの講読と批評を中心に学習します。水曜3限と4限では、授業内容が異なります>

 

 映像資料の分析も交えますが、基本的には小説・批評を講読していきます。

 いま、創作や批評を試みるにあたって、もっともネックになるのが、絶対的な読書量の不足です。ただ、やみくもに数をこなせばよいというわけではありません。プロの作家や書評家でも、作品の読み込み、全体的なパースペクティヴの提示、状況への批判の三つを兼ね備えている人は少ないのが現実です。

 しかしながら、複雑化する現実を、既存のリアリズムでは捉えきれなくなっている現状は確かに存在します。幻想文学やSFの講座は英語圏では普通に存在しますが、日本では限られた大学でしか講じられていません。それゆえ、これらの方法を身に着けていれば、並み居る(広義の)作家志望者たちから、一歩抜きん出ることが可能になるでしょう。

 そこで講座では、実際に幻想文学論、SF評論、文芸評論、ロールプレイングゲーム創作の現場における最新の知見を、随時紹介する予定です。

 本気でプロの物書きになりたい人は、大いに歓迎します。前期履修者の継続出席、他学部・他学科からの聴講も歓迎しますが、途中で離脱するケースが多いので、いちどやると決めたら、最後まで受講することを推奨します。さもなければ、身につきません。

 しばしば誤解されるのであらかじめお断りしておきますが、「サブカルチャー」だからといって「ラク」というわけではありません!

 

※2018年前期の内容を、参考までに以下に示します。受講生の関心や状況に応じ、随時変更を加えていきます。教室での指示を聞き逃さないようにして下さい。

 講義では、担当テクストを輪読し、解釈に必要なキーポイントとして、文学史現代思想に関するトピックを解説していきました。

 2019年前期(春学期)は、ローズマリー・ジャクスンや今泉文子等の幻想文学批評の検討を中心にする予定なので、2018年とは扱う内容が大きく異なります。ご注意ください。

 

1:オリエンテーション~Huluのドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』から

【キーポイント】反知性主義ジェンダーバックラッシュに伴い、SFがどう「政治的」な問題意識を作中へ組みこんでいるのかを考察

2:SFの起源とSFの定義

【キーポイント】ユートピアの両義性について、『宇宙戦争』、『フランケンシュタイン』、『ガリヴァー旅行記』、『ユートピア』にまで遡行して考察

3:小川項(=川上弘美)「累累」、アラン・ロブ=グリエ「帰り道」の講読

【キーポイント】テマティスムの基礎、ヌーロヴォー・ロマンの基礎、文学における「顔」の問題

4:フランツ・カフカ「掟の門」、イアン・ワトスン「超低速時間移行機」の講読

【キーポイント】「掟」と「律法」、父と子の表象、ハードSFの定義、シンギュラリティ

5:ロバート・シェクリィ「危険の報酬」を講読、レニ・リーフェンシュタール監督「民族の祭典」を鑑賞

【キーポイント】リアリティショーとファシズム、政治の美学化、管理社会と監視社会、パノプティコン

6:笙野頼子「冬眠」、渡邊利道「エヌ氏」の講読

【キーポイント】私小説と思弁小説、デカルト方法序説』、機械論的人間観、決定論と可能世界論、基本的人権レイシズム

7:アイラ・レヴィンブラジルから来た少年』(ラジオドラマ版)の鑑賞、アーシュラ・K・ル=グウィン「帝国よりも大きくゆるやかに」の講読

【キーポイント】ヴェトナム戦争と「チャウシェスクの子どもたち」、「世界大戦」から「世界内戦」へ、母性と死、ディスコミュニケーションという出発点

8: 谷崎由依野戦病院」の講読

【キーポイント】「世界内戦」とジェンダー

9:批評の書き方(1)~山内士朗『ギリギリ合格への論文マニュアル』、笠井美希『デュラスのいた風景』の講読

【キーポイント】「パクリ」とオマージュの違い、800字程度の書評の構成と工夫

10:ゲスト講師による特別講義~蔵原大先生(東京電機大学非常勤講師)による、H・G・ウェルズ宇宙戦争』についての講義

11:批評の書き方(2)

【キーポイント】「ネタバレ」の可否について、構成・タイトルの付け方の問題

12:『D・G・ロセッティ作品集』(岩波文庫)の講読

【キーポイント】オーブリー・ビアズリーなど世紀末文化との連関、ウィリアム・モリスとD・G・ロセッティ、イコノロジーの基礎

13:川端康成「片腕」の講読、現代詩入門(白石かずこ「死んだジョン・コルトレーンに捧ぐ」)

【キーポイント】鈴木牧之『北越雪譜』の書き換え、「美しい日本の私」と「あいまいな日本の私」、ページターナー球体関節人形優生学新自由主義(に対する抵抗)

14:夏目漱石夢十夜」、『漾虚集』の講読

【キーポイント】イギリス世紀末文学、ドイツ・ロマン主義との関わり。江藤淳以降の批評からの解釈

 

◆予習・復習

 

 毎回、前回の講義で課題に指定されてきたテクストを読んできて下さい。

 また、書く力を鍛錬するため、毎回、メールを介して書く課題が与えられます。

 授業で与えられたテクストだけではなく、積極的に自分でテクストを探して読み込んでいく姿勢が求められます。

 当然、新刊で書店にて入手できるものだけではなく、図書館や古書店を活用した調査も必須です。

 

【履修上の注意点】 

 講義の際には、相当分量の論文や小説を読み進めていくことになります。関連して文献も紹介しますが、少々難解かもしれない理論も含まれます。講義へのフィードバックを毎回記入してもらい、それを講義内容へ反映させていきます。その他、双方向的な講義になりますので、積極的な協力・参加が求められます。

 

【成績評価の基準および方法】

 

 評価のポイントは、以下の4点です。

 

1)取り扱った作家・作品の内在的特性が理解できているか(約20%)

2)作品の周辺に存在する文脈が理解できているか(約20%)

3)テクストへ積極的に取り組み、読解・創作ができているか(約40%)

4)批評的であることの意義が理解できているか(約20%)

 

 毎回、フィードバックシートへの記入を行ってもらい、それを小テストの代わりとします。それとは別に、期末レポートを課します。なお、レポート執筆の際にWikipediaを参考資料に用いることを禁止します。代返等・コピペ等の不正行為に関しては厳正に対処します。各種文章がしっかり書けていることは、評価の前提条件とします。

 上記の学習目標が達せられているかどうかを、フィードバックを含む出席点(40点)、レポート(60点)、のウエイトで評価して総合的に判定します。具体例として、その合計が90点以上をS評価、80点以上90点未満をS評価、70点以上80点未満をB評価、60点以上70点未満をC評価とします。

 ただし、出席回数が7割未満の場合、この限りではありません。

 

 なお、2018年度前期(春学期)および後期(秋学期)のレポートは、書評SNS「シミルボン」を活用し、「文学」と「SF」の間にあるようなスリップストリーム作品について、6000字程度の批評を執筆するというものでした。

 最優秀作を、以下に公開しています。参考までにご覧ください。

https://shimirubon.jp/columns/1690934

 

【教科書・参考書】

区分  書 名  著者名  発行元  定価

 

教科書 岡和田晃 『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷 SF・幻想文学・ゲーム論集』 アトリエサード/書苑新社 2970円

 

参考書 岡和田晃 『反ヘイト・反新自由主義の批評精神 いま読まれるべき〈文学〉とは何か』、寿郎社

参考書 ローズマリー・ジャクスン『幻想と怪奇の英文学Ⅲ 転覆の文学編』、春風社

参考書 今泉文子『幻想文学空間 世紀転換期のベルリン・ウィーン・プラハ』、ありな書房

参考書 クラーク・アシュトン・スミス『魔術師の帝国』シリーズ、アトリエサード

参考書 「ナイトランド・クォータリー」、アトリエサード

※その他、随時、講義内で教示していきます。

 

【その他の教材】

 

 必要に応じ、講義内で指示ないし配布を行います。

 

【担当教員への連絡方法】

 

 eメールでアポイントを取って下さい。akiraokawada@gmail.com

 初回の授業終了時に、自己紹介を上記アドレスへ送ってください。