『トンネルズ&トロールズ』のシナリオ『ベア・ダンジョン』をダンジョンマスターとしてプレイする。


▼これは社会思想社の現代教養文庫から発行されていた有名なRPGシナリオで、原作者のケン・セント・アンドレをはじめとしたフライング・バッファロー社の連中が、三年のテストプレイ機会を経て完成させたキラー・ダンジョンである。


▼無論、ひどいダンジョンシナリオなど世に掃いて捨てるほどあるが、このひどさはルール的なこだわりではなく、壮大なアトラクションが独特の発想というかユーモアを核にして据えられているところに特徴がある。ルールシステムの穴を突くようなプレイングが通用しないような造りになっているのですよ。


▼スタート地点をまっすぐ行くと、いきなり大岩が転がってくる(『レイダース』!)。近くに潜んでいたオーク10体の不意打ちを受け、いきなりパーティが全滅。警戒したパーティは、開いた部屋にモンスターがいたら時間稼ぎのために弱った仲間を放り込んで逃げるなど、苦心する。


▼一度は迷宮の奥で「銅貨を金貨に変換する機械」を見つけて「これで金持ちになれる。もう冒険は終りだ!」と悦び勇んで地上を目指すも、いざ外に出たら機械は雲散霧消してしまったりした。


▼うまく機能したのはプレイヤーの1人に仲間として登場するモンスターをプレイさせたこと。どのモンスターが当るのかはルールブックからランダムで選んだのだが、結果的に強いモンスター(トロールなど)になっても、飛び出してきた蛇の噛み付き一発でお亡くなりになってしまったり、まったくバランスが変化しなかったことが驚きだ。やはり肝心なのは機転か。


▼傑作だったのはヒドラを引いたときで、10体のクロスボウを持ったオークと6体のヴァンパイアに追いかけられていたパーティを救うべく颯爽と登場し、一撃で敵を全滅させたのも束の間、ヴァンパイアが嵌めていた指輪を装着してしまい、神のごときヒドラは瞬時にして吸血鬼に変ってしまったのだ! そして、2時間半ごとに人一人ぶんの血を吸わなければ、吸血鬼は消滅してしまう。だが、よりにもよって彼が必要なのは「人間の」血であって、デミヒューマンしかいないパーティを襲っても益はない。そんなわけでいきなりヒドラは離脱し、血を求めて外の世界へと飛び立っていった…。


▼こんなんばっかりだったが、結果的に地下1階は8割がたクリアできた。それと、一人だけずっと生き残り、無事レベル2(必要冒険点1000)にまで成長させることができたキャラクターがいた。2レベルになるまでがかくも過酷だとはと、「冒険」の厳しさを再確認した。