クトゥルフの呼び声『エイリアンVSプレデターVS久遠に伏したる遊星からの物体X』をプレイする。


アメリカ・コロラド州の奥地にある謎の湖。その傍らには「恐竜ロッジ」(湖より発掘された恐竜の化石標本が展示されていることが名称の由来であるらしい)と呼ばれる曰く付きの建物が存在するが、それを、こともあろうに「ドリームウェブ研究所」という謎の機械を使った実験を行っている集団が買い取ってしまった。


▼刑事をしているアレックスは、たまたま研究所で家政婦のバイトをしていた従妹が麻薬中毒に陥ってしまったことから、一連の事件に首を突っ込むこととなってしまった。周囲の暇人ども(フランクとジョージ)を借り出して研究所の調査に向うものの、予め図書館で調査した限りでは、研究所にしきりに攻撃をしかけている集団がいる、ということくらいしかわからない。エコテロリストらしき様子の彼らと接触を試みてはみるものの、「侵入者」と勘違いされて命からがら逃げ出す羽目になってしまった。


▼一行はとりあえずフランクをドリームウェブの被検体希望のボランティアとして研究所内に送り出すとともに、アレックスは従妹の遺留品を回収するという名目で「恐竜ロッジ」へと潜り込ませ、「ドリームウェブ研究所」が何を企んでいるのかを探り出すことにした(「恐竜ロッジ」と「ドリームウェブ研究所」は別の建物である)。


▼しかしアレックスはおそらく実験の後遺症で頭のおかしくなった元パンクロッカーと愉快な交流ができたほかは、目ぼしい証拠らしいものは得られなかった。そしてフランクの方は、「ドリームマシン」の実験台に横たえられて無数の電極を頭に繋げられ、禍々しい宇宙的なまでに邪悪な存在のヴィジョンを見せられて、精神が常軌を逸してしまった(犯罪精神異常)状態に陥ってしまったのだった。


▼アレックスは従妹の荷物を持って、ジョージの運転する車に乗り込み、一時街へ引き上げることにした。けれども実験の余韻が残っているフランクが、ボランティアの身分を利用して「恐竜ロッジ」に宿泊し、手がかりとなる証拠を見つけるつもりだと主張したため、フランクの二人は万が一のときのためにフランクに携帯電話を持たせた。


▼「恐竜ロッジ」でのやや怪しげな夕食を終えたあと、フランクは「研究所」の様子を探るため、無謀にも単身「研究所」内に忍び込んだ。研究所の奥の部屋では、所長の一番弟子がなにやら怪しげな研究に没頭している。それを尻目にフランクは、「ドリームマシン」がどのような効果をもたらすものであるのかを調べようと、機械室に潜入する。と、背後から足音が近付いてきた。咄嗟の動物的反応で物陰に隠れ、なんとか追手をやり過ごすことができたのも束の間、今度は無数のポルターガイスト現象が機械室内で巻き起こった。とどめには、機械室内のFAXが勝手に動き出し、「大事な話があるから今すぐ恐竜ロッジの近くの樅の木の下まで来てくれ」という旨の、所長からのメッセージまで送られてくる始末。


▼そしてこともあろうにフランクは、のこのこと約束の場所まで出かけていってしまう。案の定そこで待ち受けていたのは、夕食前から怪しげな素振りを見せていた「恐竜ロッジ」の料理長だった。彼は怪しげなブードゥー魔術を使い、秘密に近付いたフランクの生命力を奪い取ろうとする。


▼一台の車が猛スピードで「研究所」内に侵入してきた。機械室を出たときにフランクはアレックスとジョージに緊急コールを入れておき、それを受けた二人がようやく「研究所」に到着したのだ。車内の二人はフランクを拾って「研究所」から逃げ出そうとするが、ブードゥー魔術のあまりの恐ろしさに混乱したジョージは、アレックスとフランクをその場に置き去りにして、一人車を駆って逃げ出してしまう。


▼だが、街に出る前にジョージは、先日のテロリスト集団に包囲されてしまった。どうやら彼らは、「研究所」の実験が、「エイリアンとプレデター遊星からの物体Xを地球に呼び出す」目的で行われている邪悪なものであると結論付け、今日こそは実力行使によって「人類を守るため」、「研究所」を破壊することで陰謀を阻止しようとしていたということらしい。仲間を見捨てて逃げ出したとも言い出せないジョージは、そのままテロリスト連とともに、「研究所」殲滅のミッションに参加させられてしまう。


▼さて、残された二人は、料理長・ロマンスグレーの謎の紳士・研究所の所長の三者が代わる代わる放ってくる、精神のバトルで押し負ければ見事に乾涸びてミイラになってしまう忌まわしき黒魔術の攻勢を潜りぬけ、どうすればこの絶望的なまでに危うい状況を打開できるのかを探ろうとしてきた。アレックスによれば手がかりは「恐竜ロッジ」にあるに違いないのだが、現時点で近付くのは難しい。とりあえず「研究所」の敷地内から脱出しようと全速力で走り続けた二人は、ジョージとテロリスト連と鉢合わせしてしまった。


▼「俺たちが来たからにはもう大丈夫だ」テロリストのリーダーは、二人を「研究所」が行っていた人体実験から逃げ出してきた被験者たちだと判断し、力強く安全を保障した。そして彼らは、ライフルとプラスチック爆弾を構え、「遊星からの物体X」の招来を阻止するべく、突撃していった。なぜかジョージもそれに加わっている。


▼テロリストたち(+ジョージ)が不意に現れたクサリヘビのような巨大な生き物と銃撃戦を繰り広げている間に、フランクは再度「研究所」内に忍び込んだ。だが、そこで発見されたものは、所長の一番弟子の死体だけだった。彼の残した手記を観るに、弟子の研究は「ドリームマシン」とは直接関係が無く、所長に奪われた研究上の業績に代わるだけの新しい研究を完成させるべく、頑張っていただけだ、ということがわかったのだった。


▼一方のアレックスも、今一度事態を打開するための手がかりを求めて「恐竜ロッジ」の方に向ったのだったが、かつて湖畔に暮していた邪悪な魚人間の末裔である料理長と因縁の対決を行い辛くも勝利を収めたほかは、特に何も手がかりを得ることができなかった。


▼クサリヘビのような狩人に仲間たちが殺られていくことに畏れを為してまたもや逃げ出したジョージと、形勢を立て直すためにそれぞれが持ち場から離れたアレックスとフランク。三人は合流し、車のもとへと戻ろうとする。


▼と、その時、テロリストたちの別働隊が仕掛けたプラスチック爆弾が盛大に爆発した。その威力は思いのほか激しく、爆風で「研究所」も、「恐竜ロッジ」も、その傍らに立っていた「鐘楼」も、全てが吹き飛んで瓦礫の山と化してしまった。冷戦時に想定された核戦争を思わせる情景に、為す術も無く立ち尽くす三人。


▼絶望感に浸る彼らの前に立ち現れたものは、タコに似た頭部、類人的な外観に蝙蝠のような羽を付けた巨大な存在のヴィジョンであった。それを見のあたりにした瞬間。フランクは激しい既視感に襲われた。「ドリームマシン」の実験で見た光景とそっくりだったのだ。アレックス、ジョージの二人も、立ち上がり世界を破壊していく「大いなる貪り食うもの」の情景を眼にして、精神が完膚無きまでに破壊されてしまった。しかしながら実体化した宇宙的恐怖のヴィジョンも、なぜだかはわからないが、だんだんと薄れ、消え去っていってしまったのだ。


ジョージはぼんやりと湖のほとりまで歩いていった。


▼何もかも失ってしまったが、とりあえず最悪の事態だけは避けられたようだ。


▼が、彼の眼に映る湖水の先には、幾重にも連なった動く死体の群れが、窺えた……。



●フランク・シュタイナー/狂気を内在化する天賦の才が、今回、めでたくも開花した。献身的に話を導こうとしつつ、裏で皆の度肝を抜くような陰謀を画策し、それが、結果的にシナリオの流れを完全に変えてしまうまでの成功を見せた。まさに、裏主人公の名を冠するに相応しい鬼才である。また、三下と為政者を無条件でキャラ立てができる存在としてオーヴァーアクションでロールプレイするのは、旧きよきマスタリングメソッドにおいては基本のテクニックであるので、あまり気にしないでおいていただきたい。


●アレックス・ジェファーソン/仮にフランクが話を掻き乱すことしか考えていなかったとすれば、こちらは話を正しい方向へ導きミッションを無事に達成させることのみを考えていた。実に献身的なお方であり、その行動が実らなかったのは残念と言うほかない。堅実なセオリーに基づいた情報収集や、あくまでも効率の最大化を念頭に置いた行動方針の選択は、大器としての片鱗を窺わせた。

ジョージ・ガーフィールド/あまりディレッタントという職業(?)がどのようなものか把握しきれていなかったような印象を受けたが、話を進行させていくうちに、その徹底的なまでに後ろ向きなキャラを演じるロールプレイそのものが、実はある種の太宰的なディレッタンティズムをそのまま体現していた、ということに気が付かされた。老獪なお方であり、その策士ぶりは今後、さらなる発展を遂げていくことには疑いの余地がない。また、データ面での密かなこだわりはさすがカードゲーマー、と言ったところだろうか。

■シナリオは『クトゥルフ・ナウ』より。ややB級入ったSF映画風の味付けが施された、正統派スタイルの探索型シナリオ。緻密に下調べや構成が為されているシナリオを、それなりに経験のある人間が、ある程度のリアリズムを踏まえたうえでマスタリングすることは、グループの全体的な技量向上のためには必要不可欠だろうと考えたため、既成シナリオながら使用してみた。だが、リアリズムを追求すると、時として厳しい事態が巻き起こってしまう。初めはまあわりと上手く進むかな、と思っていたが、途中からとある事情によって、話の流れが結果的に力押しの方向へと一気になだれ込んでしまった。経験から言うと力押しは力押しでプレイヤーとしても楽しいものであるのだけれども、このシナリオを選択した本来の目的から言えば、もう少し情報収集によってシナリオの展開が開けていく醍醐味みたいなものを、若い人たちに見せてあげたかった。リアリズムと柔軟なマスタリングの両立は永遠の課題である。