『小松左京マガジン』第37号に、「二一世紀の実存」を寄稿させていただきました。


 小松左京氏が主宰されている季刊誌「小松左京マガジン」(発行:イオ/発売:角川春樹事務所)第37号が発売されました。大手の書店にはそろそろ並ぶ頃ではないでしょうか。
 こちらに僭越ながら、エッセイと批評の中間にある文章「二一世紀の実存」を掲載いただいております。
 主として伊藤計劃さんについての文章で、SF評論賞の贈賞式で話したような内容をというご依頼に則して書いたものですが、そこから一歩踏み出してみました(伊藤さんについての記述には、遺族の方の許可をいただいております)。
 原稿用紙換算で、およそ三〇枚ほどの文章になります。目次はこちらになります。http://www.iocorp.co.jp/magazine/no.37.html


 『虐殺器官』論を「S-Fマガジン」に掲載いただいてから、さまざまな方に感想をいただきましたが、その中で、特に四〇代以上の方々から、性別を問わず、『虐殺器官』の読後感について「小松さんの選評とほぼ同意見」といった反応や、「あの終わり方には首肯しかねる」という意見をまま耳にしました。
 特に、ラストについては「自分が書くのだったら『時計じかけのオレンジ』や『未来世紀ブラジル』のようになると思う」という見解を複数の方からお聞きしました。


 私はなるべく世代論はやめたいと思っているのですが、一方でどうしても、自分の世代と親の世代とでは、生きてきた環境も世界観も違うよな、と思わせられるところが多々あるのは事実です。
 そのあたりの断絶を埋めるのが本稿の目的です。


 簡単に言えば、伊藤計劃小松左京の橋渡しを目論んでおります。ヒント:『日本アパッチ族
 あるいは、団塊ジュニア団塊の世代と、受け止めていただいても問題ありません。
 例えば私の母はSFを読まない人ですが、小松左京の『復活の日』は目にしていたようなのです*1。いまでは、まず考えられない。


 また、私の論文が難しい、という声も複数耳にしました。私としては可能な限り平易に書いたつもりではあるのですが、表象理論や現代思想の思考法に馴染みがない方にとって難しいと思われるのは、理解できる話でもあります。そのため、より日常に近い言葉で語り直す必要も感じていた次第でして、機会を与えていただいたことに感謝いたします。


 特に五〇歳以上の方に、ぜひともお手にとっていただければと思っています。
 まだAmazon.co.jpでは購入ができないようですけれども、購入可能な状態になりましたら、ここにリンクを貼りたいと思います。(追記:出たみたいです)

小松左京マガジン 第37巻

小松左京マガジン 第37巻

 すぐに入手希望の方は、イオ(小松左京事務所)へご連絡をいただくのが早いことでしょう。
http://www.iocorp.co.jp/


 それにしてもこの表紙、ステキだなあ、俺のツボに直球でグサリ。


 なお、奇しくも同誌で『日本SF精神史』の長山靖生さんが『日本アパッチ族』を紹介されておりますが、最近「大阪SF大全」として、id:wtnbtさんが『日本アパッチ族』について書かれています。
 私としては、これは同書について書かれた最良の文章のひとつではないかと思っておりますので、併せてご覧下さいませ。
http://blog.tokon10.net/?eid=1033528

日本アパッチ族 (光文社文庫)

日本アパッチ族 (光文社文庫)

*1:復活の日』の目指すところは、おそらくトーマス・マン魔の山』でしょう