「SFマガジン」で「現代SF作家論シリーズ」が開始しました
伊藤計劃さんの「Heavenscape」が掲載されている「SFマガジン」2010年2月号から、「現代SF作家論シリーズ」が開幕し、巽孝之さんの「SF的無意識、ジャンル的自意識――現代SF作家論シリーズの開幕にあたって――」というまえがき、ならびに鹿野司さんのグレッグ・イーガン論「あなたの思う猫はわたしの思う猫とは違うよ」が掲載されております。
巽孝之さんの論考では、SF評論をめぐる最新の動向がスケッチされています。
特に「ハラウェイ以降の文化研究を消化した」ガヤトリ・スピヴァクの『ある学問の死』を「SF的無意識」としての「現代SFの再定義」と読み替えたうえでの示唆は刺激的です。以下、引用してみましょう。
かつてのわたしは、電脳空間以後のテクノロジーが文学的レトリックや政治的イデオロギーとも連携する効果にのみ注目して「SFが見えないジャンルとなった」「世界全体がSF化した」と発言していたと思う。しかし現在ではまったく逆に、SF的思考がそれこそネット社会のすみずみに浸透した結果、SFはニ一世紀人における文字通りの無意識を枠組み、折にふれて現在世界の深淵から一挙に姿を現す「名づけがたき怪物」(安部公房)のエネルギーを回復したのではないかと考える。
そして巽孝之さんはこのSF的な「名づけがたき怪物」の延長線上の仕事に、SF評論賞受賞者たちの仕事(「東京SF大全」や『サブカルチャー戦争』)を置いて下さっており、受賞者の末席に位置するものとしては、非常に発奮させられるものがありました。簡単ですが、この場を借りて御礼申し上げます。
なお、奇しくも同じSFマガジン2月号の「SFマガジンレーダー」に、『サブカルチャー戦争』が書影付きで紹介いただいておりました。
現代SFと批評の共振は、アクチュアリティをいや増していくことでしょう。そしてそのことは、私の関わっているSFの隣接ジャンルとしての(いや、SFそのものでもある)RPG界においても共通する事態なのではないかと思います。
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