「季刊メタポゾン」10号に記事を書きました

 編集をつとめる大西赤人さんの告知が出ました。そう遠くないうちに、季刊「メタポゾン」の10号が出ます。
 「メタポゾン」とはこういう雑誌。近々10号の紹介が追加されると思いますが、いまどき珍しい芯が通った文芸誌です。
 執筆陣も豪華。予約入れておくのが吉でしょう。   
 以下、大西赤人さんがTwitterで紹介していた情報のまとめです。

 『季刊メタポゾン』第十号(暮秋号)は、ようやく校了しました。今回も予定より発行が大変遅れてしまい、本当に申しわけありません。まず、巻頭を飾る鼎談『憲法は、人と生きるルール』は、気鋭のお二人――荻上チキさん(評論家・編集者)、木村草太さん(憲法学者)――を迎え、大西を交えての鼎談。
 『北のつぶやき JOH's eye & tweet』に代わる佐々木譲さんの新連載『わたしのお気に入り』は、「ヨーロッパの古地図」。二〇〇七年に第八回日本SF新人賞を受賞した樺山三英さんの小説『セヴンティ』は、某大手文芸誌に掲載が予定されていながら、寸前に中止となった問題作です。
 川勝徳重さんの漫画『妻の遺骨』(原作・藤枝静男)は実に渋い作品。でも、川勝さんは一九九二年生まれ、大学在学中の若さです。解題は岡和田晃さん。SF評論家チームの連作評論は、忍澤勉さんの『新しい核の時代とタルコフスキーの視線』、岡和田さんの「伊藤計劃以後と加速化する陰謀論」の二編。
 戦後の文学と政治への関わりを語る大西巨人聞き書き『夏冬の草』は、第二回。再び、数葉の珍しい写真が入ります。切通理作さんの『デジタルとアナログの間』は「プロの映画人がいなくなる?」。清水徹郎さんの『シェイクスピア講義ノートから』は、「戦場のユリシーズタブレットハムレットの本」
 長谷川集平さんの連載エッセイ『集平のツイ』は「キュビズムの町」、同じく小説『ベガーズバンケット』は、書き下ろしの「スイーツわら」。“わら”とは(笑)のこと。森枝卓士さんの『喰らうて思う』は、「開高健マティーニを」。加藤喬さんの『モントレー風便り』は、「ジェリーに、愛をこめて」
 ドイツに年内滞在、現地の無声映画祭などで活躍している片岡一郎さんの『活動弁士 キネマを語る』は、「オペラの怪人」と 「吸血鬼ノスフェラトゥ」。渡辺考さんの『ああ わがテレビ』は、「弱き立場に寄り添って――ドキュメンタリスト小倉一郎」。大西一穂の育児日記『うぐいすの糞』は第二回。
 中谷剛さんの『アウシュヴィッツの異邦人』は、「六八年目の夏」。出河雅彦さんの医療ルポ『「薬害」HIV感染を問い直す』は、ますます深まる第十回。谷口源太郎さんの『スポーツ・ウォッチング』は、東京五輪招致の背景を厳しい眼で採り上げます。そして、大西の短編小説は、『終《つい》の笑み』。
 暮秋にふさわしい色合いながら大胆な表紙は、いつも通りに常盤雅幸さん。その他、各編のイラストを稲葉彩乃さん、佐々木淑子さん、田中雅子さん、木村晴美さんが華やかに手がけています。それでは、いましばらくお待ち下さい。
https://twitter.com/MetaPoson/

 樺山三英さんは、こんなふうに自作を紹介なさっています。

「季刊メタポゾン」第十号に、短編「セヴンティ」を掲載いただくことになりました。一年ほど前に書いたものですが、いろいろあって、ようやく日の目を見ることに。大江健三郎×ウヨ×原発という、やや剣呑な内容です。小品ですが、一読いただけたらさいわいです。https://twitter.com/kabayama3A/status/396234250556411904

 続いて、忍澤勉さんの紹介ツィート。

季刊「メタポゾン」10号がいよいよ近日発売の予定。私も「新しい核の時代とタルコフスキーの視線」という文章を書かせていただいてます。御贔屓のほど、よろしくお願いします。
https://twitter.com/oshikun/status/395930393825640449

 私、岡和田晃も、「メタポゾン」10号、いくつかの原稿について、とりまとめの協力をしました。
 まず、忍澤勉さんの「新しい核の時代とタルコフスキーの視線」は、「SFマガジン」に連載された『ソラリス』論を追っていた読者であれば、なくてもタルコフスキーを、「3・11以後」を考えるためには必読の力作です。
 続いて、池袋東武で初の個展を成功させた川勝徳重さんの劇画「妻の遺骨」。氏は夏目房之介の弟子でもあります。丹念な取材に基づく徹底して反時代的な作風は驚倒もの。92年生まれ! 私小説藤枝静男に関心がある方、つげ義春つげ忠男安部慎一水木しげる等の愛好者は必見。私は解説も担当。
 『ゴースト・オブ・ユートピア』で日本SF大賞候補になった樺山三英さんの最新作「セヴンティ」は、大江健三郎の「セヴンティーン」を本歌取りし、ネット時代の「政治と文学」の主題へ正面から切り込んだ傑作です。社会性にこだわり、また大西巨人絡みの原稿が載る「メタポゾン」にふさわしい作品。
 私は「「伊藤計劃以後」と加速化する陰謀論」という批評を掲載いただきました。『ポストヒューマニティーズ』の「「伊藤計劃以後」と「継承」の問題」では宮内悠介を中心的に扱いましたが、その問題意識を引き継ぎながら、仁木稔の最新短篇「ミーチャ・べリャーエフの子狐たち」と「はじまりと終わりの世界樹」を取り上げ、“「想像力」の脱政治化”を論じています。
 それでは、いましばしお待ちください。