河出書房新社から発売中の『「はだしのゲン」を読む』に、「「核時代の想像力」と子どもの「民話」―― 『はだしのゲン』への助太刀レポート」を寄稿いたしました。大江健三郎の『はだしのゲン』論を導きの糸としながら、松江市教育委員会の『ゲン』閉架をめぐる騒動や、「想像力」の“脱政治化”を論じるというものです。加えてウェブ上では『はだしのゲン』が“洗脳”であるといったデマゴギーが蔓延していますが、はたして本当にそうなのか、改めて検証しています。
『『はだしのゲン』を読む』という論集は全体を通読してこそ面白いものなのではないかと思います。じつに彩り豊か、さまざまな論点が暗に照応していて、多角的な読みに導かれ、刺激的です。昨今の排外主義的な状況に対するまたとないカウンターになっていて、痛快極まりない。私は東琢磨、相澤虎之助、酒井隆史+HAPAX、森元斎、マニュエル・ヤン、友常勉、磯前順一ら各氏の論考にとりわけ啓発されました。ゲンの長兄は筑豊の炭坑に出稼ぎに行き、「黒い雨にうたれて」の主人公は東アジア反日武装戦線の似せ絵でもある、などなど、指摘されることによって、初めて気づいた事柄も多々ありました。
●誤植のお詫び
p170に誤植がありました。下記の通り訂正させていただきます。
読者の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
p170 エピグラフ2行目
(誤)死なえ
(正)死なめ
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 単行本
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