『Role&Roll Extra Lead&Read vol.1』のレイアウトについて


 また、『Role&Roll Extra Lead&Read vol.1』に掲載されたリプレイ「Secret Struggles in Sharn」ですが、「注釈が多い」という意見と、「注釈が最後にまとめられているのは読みづらい」という意見を、複数の方からいただきました。せっかくですので、あくまで版元ではなく「著者」の立場から、レイアウトについて説明をさせて下さい。


 まず、注釈についてですが、実は、注釈は意図的に多めなものとしています。

 と申しますのも、リプレイ「Secret Struggle in Sharn」は、『Role&Roll』系ではほとんど紹介がなされていない(毎号の「Brand New Games」には新作サプリメントや小説などの概要が掲載されていますが)『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というシステムを扱い、かつ最新ワールド「エベロン」を使用したという都合上、(仮に、多少情報量が増えはしましても)予備知識がゼロの方でも、丹念に読んでいただけさえすれば、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というシステムや「エベロン」というワールドがどういった特性であるのかをつかめるように、心を砕くべきだと考えたからです。
 「もし自分がユーザーだったらどうしてほしいか」長年、RPG雑誌を読んできた「読者としての経験から」、あえて細かなところまで、注釈をつける決断をしたのでした。


 ですから、もしよろしければ、ふだんリプレイを読まれるときよりも、心なしか読書スピードを落としてあげて下さい。そうして、注釈を行きつ戻りつしながら、じっくりとリプレイに接してみて下さい。
 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』という、豊穣できめ細やかなルールシステム。加えて、「エベロン」というどこか懐かしく、それでいて圧倒的に斬新な世界観。両方のうまみを、心ゆくまで堪能できるようにとの意図で、リプレイ(や注釈)を仕上げているからです。


 とりわけ、ベースとなるストーリーはシンプルなものながら、そこからの「引き出し」を広いものとするべく努めました。それゆえ、じっくりと読んでさえいただければ、必ずや、読者の方にも得るものはあるはずです。


 なお、注釈が最後のページにまとめられてしまった事情に関しましては、よくわかりません(レイアウトの問題にはタッチしていないので)。
 考えられる原因としては、文字サイズの変更や配置などの難しさもあるでしょう。
 あるいは、雑誌の総ページ数に関わってくる問題のため、そうなってしまったのかもしれないと思います。
 ムック形式の書籍は、ページ数が増えるとダイレクトに価格設定に響いてしまうことが多いようです。その点の事情、どうぞご理解下さい(例えば、版元は違いますが「エベロン」のサプリメントでも、『エベロン・プレイヤーズガイド』のような160ページ程度のサプリメントだと約6000円、『シャーン:塔の街』のような190ページに達するサプリメントだと、7000円程度に値段があがります。)。


 ただ、巻末に注釈がついていることによる、ちょっとしたメリットもあります。それは、「注釈を確認する作業」を繰り返すことで、自然に「(読み飛ばしてしまうことなしに)本文をじっくりと理解する」きっかけができる、というものです。


 例えば、私は古典的な文学作品が好きでよく読むのですが、「同じタイトルが〈ちくま文庫〉と〈岩波文庫〉の両方で出ている」なんてことが、たまにあります。
 〈ちくま文庫〉は、基本的に、本文と並行する形で、欄外に注釈が添えられており、対する〈岩波文庫〉は、巻末に注釈がまとめられている形なんですね(例外はあります)。
 どちらが読みやすいかと言われれば、もちろん〈ちくま文庫〉なのですが、本文を細かく検討したいときには、あえて〈岩波文庫〉の方を読んだりもします。つまり、腰を据えて本を読もうと思ったときには、〈岩波文庫〉の方が便利に感じられることもあったりするのです(もちろん、個人的な感覚ですが)。
 もちろん、〈岩波文庫〉と『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のリプレイは違いますが、「伝統があり、じっくり接すれば接するほど、うまみが増してくる」という点では、共通のものがあります。
 ですから、どうぞ「Secret Struggles in Sharn」も、腰を据えてじっくりと読んであげて下さい。


Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.1

Role&Roll EXTRA Lead&Read Vol.1