大審問官スターリン


 新版『カラマーゾフの兄弟』の翻訳でブレイクする前の亀山郁夫の著作『大審問官スターリン』を読む。
 確信犯的なタイトルがステキですね。
 スターリン体制下で、「芸術」なるものがいかに蹂躙されてきたかを、ケースごとに分けてドキュメンタリータッチで描く。
 この手の著作にありがちな、ともすれば「あちゃー」な芸術への神格化が見られず……。


 それでいて、面白かった!


 ロバート・ダーントンの『壁の上の最後のダンス』を読んだ際にも思ったが、社会主義体制においての人文主義的な芸術というものは、ともすれば資本主義の下においてよりも遥かに豊かで、かつロマンティックな位置づけにある。
 それゆえ必然的に「社会」と「芸術」の結びつきも強いものとなるのだが、そうしたあたりの力学的(?)な問題について考えさせられた。下手な美学書よりも美学してしまっているのだ。

大審問官スターリン

大審問官スターリン