『クトゥルーの御代』の補講など

 SF大会関連ではひとつ、『クトゥルーの御代』について特筆しておきましょう。
 80人分のレジュメがすぐになくなるくらいの盛況でした。パネリストの皆さま、特に司会の朱鷺田祐介さん、ありがとうございました。
 そして話したことが来場者の方に伝わり、嬉しく思いました。「小説、ラヴクラフトの研究、会話型RPGとバランスよく紹介をしていた」とのお言葉を来場者の方からいただくことができました。
 私は、『D&D』第4版のウォーロックと彼方の領域、遡って『AD&D 1st』の『Fiend Folio』、『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオ集『SECRETS OF KENYA』、『Age of Cthulhu 3: Shadows of Leningrad』などを紹介させていただきました。
 余裕があれば『D&D』のシナリオ「The Last Breaths of Ashenport」(チェンバースの『黄の印』が下敷き)などについても語りたかったのですが……。

http://rpg.drivethrustuff.com/product_info.php?products_id=80735&src=newsletter

 また一方、村上春樹に始まり、文学者としてのラヴクラフトについてもできる限り熱く語ってみたつもりです。
 従来ラヴクラフトと無関係だと思われていたであろう、ルイ・ヴァックスやジャン・リカルドゥーの論文の紹介ができたことも嬉しく思います(なおラヴクラフト村上春樹については、都甲幸治さんから基調な助言をいただきました)。詳しくは
http://speculativejapan.net/?p=148をご覧下さい。
 加えて、パネルを聞きに来て下さった井上雅彦さんからは終了後、以下のようなコメントをいただきました。

 TOKON10の『クトゥルーの御代』では、拙作「抜粋された学級文集への注解」(『憑依』所収)を紹介していただきありがとうございました。この作品は、ネクロノミコンなどのわかりやすいタームをわざと出さなかったので、〈神話作品〉と考えていただいて、うれしかったです。
 昭和史をラヴクラフト的に再構築する作品はいつか書きたいと思ってきました。伝えられる史実には、リアルに『黄の印』(チェンバース)のテイストを髣髴させる事件などもありますし。
 これは、SFマガジンの特集前に書きあげたものでしたが、特集でも、歴史改変を試みたクトゥルー作品が紹介されていて(テイストはだいぶ違いましたが)、妙なシンクロニシティーを感じたものです。
 

 さて、今回《異形コレクション》最新刊『Fの肖像 ――フランケンシュタインの幻想たち』でも、参加作家の〈神話〉作品が載っておりますので、ご報告まで。
 小林泰三さんの「ショグゴス」です。
 タイトルから想像できるように、〈古きもの〉神話の作例ですが、これはロボットSFの収穫としても、評価されるべき作品だと思います。

 「異形コレクション」の『憑依』はこちらですね。

憑依―異形コレクション (光文社文庫)

憑依―異形コレクション (光文社文庫)

 『Fの肖像』はこちら。 なお、応援に駆けつけて下さる手筈となっていた増田まもるさんは、当日パネルのスケジュールが変更されたためにご自分が出演されるパネルと時間が重複し、来られなくなってしまったのですが、現在翻訳中のアーカム・ハウスから刊行されたドナルド・ワンドレイの原書(しかもドナルド・A・ウォルハイム所蔵!)を見せて下さりました。こちらブログへの掲載許可をいただきましたので、写真を紹介させていただきます。
 ばーん!

 ドナルド・A・ウォルハイムのサイン(蔵書印?)が確かにありますね。

 朱鷺田さんからはパネル終了後、結婚祝いに「黄金の蜂蜜酒」をいただきました。妻と美味しくいただきました。というか妻の喜びようったら。
 
 持っているのは妻でございます。